2017年2月6日月曜日

IFRSで今問われる、表示すべき利益とは?

こんにちは。イージフの野口です。最近のIASB会議で、新しく着手されることになったプロジェクトに、基本財務諸表があります。主な改訂対象は、IAS1号「財務諸表の表示」、IAS7号「キャッシュ・フロー計算書」などですが、今回のプロジェクトでは損益計算書とキャッシュ・フロー計算書に主な焦点が当たることになりそうです。

当ブログでも何度か紹介してきましたが、近年のIFRSはかつてより損益計算書を重視する立場を取っています。IASB外の国際会議などの場においても、投資家などの財務諸表利用者の意見は損益計算書、特に利益がどのように表示されるかということに対して、改善を求める意見が出されています。このプロジェクトでは、そのような財務諸表利用者からの意見を把握した上で、よりよい財務諸表の表示を検討することになります。

今挙げられている検討事項には、損益計算書やキャッシュ・フロー計算書において、複数の選択肢が認められている表示方法を統一するといったものが多くあります。このような複数の選択肢が認められてきた背景には、理論上どちらかに統一する決め手がなかったという理由が大きかったと思います。複数の選択肢が財務諸表の作成者側の負担を軽減しているのでもなく、このような規定は整理されることになると思います。

それだけでなく、議論を呼びそうな問題もあります。

純損益の他にEBITや営業利益などの段階利益を損益計算書上に表示する検討を行うことになっています。

現行基準では、有用である場合、独自に段階利益を表示することになっており、実際に企業が独自に営業利益などを開示されている場合が多くあります。それを統一的に企業間で比較可能な形で表示してほしいというのが財務諸表利用者からの要望です。

EBITについては議論の余地が比較的少ないのですが、営業利益の場合は、何をもって営業利益とするか、新たに議論が必要であると考えられています。日本基準ではもともと営業利益を表示しているのですが、IASBでは、日本基準でいうところの営業利益と少し違う利益を想定しているようです。企業のビジネスから獲得されたもので、非経常的な項目を含まない利益、というような経常利益に近いイメージかもしれません。

また、この問題は損益計算書だけに留まらず、営業利益の「営業」を、キャッシュ・フロー計算書のえ「営業活動」とも整合させ、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の関係性を明確にしようという検討も行われる予定です。

このプロジェクトでは、投資家等からの要望に応えることが目的であり、むやみにプロジェクトの範囲を広げるべきではない、という方針が確認されています。どこまで抜本的な改訂につながっていくかは、まだわかりませんが、どのような利益が表示されるべきか、議論は興味深いものになるのではないかと思います。


イージフ 野口

2017年1月9日月曜日

保険契約、新基準は公表までわからない?

こんにちは。イージフの野口です。2017年も当ブログをよろしくお願いします。

このブログは開設して8年目になりました。この3年間は、IASBの審議状況を解説する「IASB現地レポート」(「旬刊経理情報」(中央経済社)にて月1回連載中)では書ききれなかったことや、IASB会議を見ていて自分が感じたことを中心に書かせていただいています。

IASB会議を見続けて気付いたことがあります。新しい基準書が出る直前、すでに審議は実質的に「完了」した後に起きることは、意外に大事ではないか、ということです。

新しい基準書に抜本的に改訂するとなると、通常、長い審議期間が必要となります。保険契約については2001年の時点でIASBのアジェンダに上がっており、2004年から今の形態でのプロジェクトが始まっています。2016年1月にようやく実質的に審議が「完了」し、基準書の作成に着手されることとなりました。審議が完了した後も、通常のことなのですが、IASB会議で取り上げられています。多くは、基準書作成のための文言の選択といった細かい点や適用時期などであることが多いのですが、重要な問題が議題になることもあります。しかし、基準書公表のタイミングも近づいているので、意外とあっさりと変更が加えられるパターンが多いと思います。

2016年11月に保険契約が取り上げられた時は、まさにそのような感じでした。

この時の会議では、興味深い議題が2点ありました。1点目は新基準適用時の移行措置で、当初IASBでの合意案では、新基準の適用は、原則完全遡及アプローチ、それが困難な場合は、簡素化されたアプローチに従うこととなっていました。ところが、2016年11月の会議では、修正遡及アプローチと公正価値アプローチの2つの移行措置を許容することになりました。これらの許容されるアプローチは、完全遡及アプローチにできるだけ近い結果を得ることが目的であり、その目的を達成するために、手続きの選択肢が広げられています。

この決定により、新基準適用時に、各企業が状況に応じて柔軟に対応できるようになったと思います。そもそも、このような決定を行った背景には、IASBが新基準について外部に意見聴取を行ったところ、原則である完全遡及アプローチを実際に適用できる保険契約は、全体の10%に満たないのではないか、という意見があったそうです。このような外部の意見が変更の主な理由となっています。

2点目は、保険契約を集約するレベルについての変更です。新しい保険契約基準は、保険契約ごとに会計処理をおこなうことが前提となっていますが、実務に配慮して、ポートフォリオ単位で会計処理を行うことが認められています。しかし、当初の合意案では、契約の集約の仕方がわかりにくい上に、ポートフォリオの数が膨大になってしまうという懸念が、外部から出てきました。そこで、最終的に、当初の合意案にあった集約の要件を一部削除するなど、簡素化を行うことになりました。

当初の合意案を決定するに至る審議を見ていた私にとっては、最後の最後にこんなに簡単に覆ってしまうものなのか、と思ってしまいますが、決定を下している側からすれば、最初に審議を尽くして全員が肝となる考え方を共有できているから、このような変更に対して議論する余地があまり残っていない、ということなのかもしれません。

会議での合意内容も、基準が公表されるまでは変更される可能性を残していますが、このような直前の変更を見ていると、新基準書を適用する時に肝となる考え方はどこにあるのか、ということがかえって明らかになってくるように思います。

以前、IASBの方が、「IFRSはもっと原則主義であっていいのではないか。各国の違いを考えると、今のIFRSもまだ細かすぎるのかもしれない。」とおっしゃっていたのが、とても印象に残っています。今回紹介した決定事項は基準設定者から見ると、「細かすぎる」ことなのかもしれません。原則主義の会計基準をどのように理解するか、まだまだ今年も追求していきたいと思います。


イージフ 野口



2016年12月12日月曜日

重要性の判断方法を明確にする、重要性プロセスとは

こんにちは。イージフの野口です。IFRSを適用する日本企業が注意すべきこととして、膨大な情報開示への対処がよく挙げられます。確かに、IFRSは日本基準よりも注記等の情報量が多い特徴があります。

しかし、これは必ずしもいいこととは考えられていません。重要でない情報が大量に開示される一方で、本当に重要な情報が見落とされてしまったり、開示から漏れてしまったりしているのではないか、という懸念は根強くあります。企業にとっても、情報開示コストが過大になってしまいます。

そういう「ムダ」な情報開示をなくそうとしているのが、現在のIASBの姿勢です。IASBではコミュニケーションの質の向上を今後5年間で目指すという決定していますが、情報が多ければいいのではなく、情報量を削減する方向でも質の向上を達成しようとしています。

利害関係者が必要とする情報を開示するには、重要性の判断が適切になされることが大切です。しかし、実際のところ、重要性の判断は難しいものです。あくまで、企業の判断なのですが、判断にばらつきが大きいことが指摘されていますし、量的重要性と質的重要性の両方を検討しなければならない、とされていても、現実には量的重要性一辺倒で判断してしまいがちです。

そのような問題に対処するため、財務諸表作成における重要性の適用について実務記述書が作成されることとなり、すでに公開草案が公表されています。現在公開草案のフィードバックをIASB会議で検討しています。

その検討の中で、重要性を判断する手続きを重要性プロセスとして説明することが新たに提案され、合意されています。

重要性プロセスは以下の4ステップからなります。

  1. 重要性の判断が必要な情報の特定
  2. 当該情報が重要であるか否かの評価
  3. 財務諸表内で当該情報を開示するドラフトの作成
  4. ドラフトの情報開示が適切であるかの評価

特に興味深いのはステップ2に関する説明で、実務記述書内では、情報が重要であるかという判断の手続きがより具体的に記載されます。その手続きでは、従来通り、量的側面と質的側面からの判断が必要になります。質的側面の判断がおろそかになってしまうのは、質的重要性の内容が明確でないから、という反省のもと、質的重要性について詳しくその内容が説明されることになりました。

質的重要性は、企業固有のものと外的要因によるものの2種類があるということが明示されます。

企業固有の質的重要性とは、法令違反(その可能性のある場合も含める)、非定型的な取引や事象、想定を超える変動や趨勢の変化を指します。一方、外的な質的重要性とは、その名前の通り企業の外部環境の影響を受けるもので、地理的条件や業界、より大きな経済環境等の要因があります。

実務記述書は基準書ではありませんので、必ず従わなくてはならないものではありませんし、新しいことを提示しようとしているわけでもありません。しかし、適用が難しい重要性の判断について、具体的な説明がなされているので、是非一度読んでみるといいのではないかと思います。

(ちなみに、実務記述書の公表時期はまだ決まっていません。概念フレームワークの改訂等他のプロジェクトとの関係を検討する必要があるためなのですが、2017年中には公表されるのではないかと思います。)

イージフ 野口

2016年11月7日月曜日

会計方針の変更、実務のばらつきが問題に

こんにちは。イージフの野口です。今回は最近のIASB会議の中で、IAS8号に関する議論を紹介しようと思います。

IAS8号の適用については実務上のばらつきが生じているというIFRICからの指摘が発端となり、IAS8号の改訂が検討されることになったのですが、当初はもっと簡単な扱いで対応されることが想定されていましたが、個別のプロジェクトとして扱われています。

実務上でもよく問題となると思いますが、会計方針と会計上の見積りのどちらに該当するのかという判断が現行基準の定義では判断が難しいのです。今回は主に定義に焦点を当てて審議が行われています。

会計処理を変更する時、会計方針に該当するか、会計上の見積りに該当するかによって、対応は大きく変わります。会計方針に該当する場合、変更はより難しくなります。変更した会計方針を遡及適用することも必要です。

IFRICからの報告では、棚卸資産の評価方法や公正価値評価の手法などにおいて、どちらに該当するか、企業によって判断に違いが生じているということでした。

そこで、会計方針と会計上の見積りの変更について定義が変更されることになりました。

・会計方針の定義(案)
企業が財務諸表を作成表示するにあたって採用する特定の原則及び実務。

・会計上の見積りの変更の定義(案)
資産または負債に関する会計方針を適用する際に使用する判断または仮定の変更を引き起こす新しい情報(または他の新しい展開)から生じる、資産または負債の帳簿価額の調整。

区分をより明確にするための改訂ですが、文言はより簡潔になった印象です。この定義では、会計上の見積りは会計方針を適用するための手段という位置づけを明らかにしようとしており、現行基準から無駄な言葉が削除されています。

さらに、今回の改訂では、棚卸資産の評価方法は会計方針であることを明記する予定です。個別の問題について言及することには反対意見もありましたが、実務上の混乱を回避するために、必要と判断されました。このような具体的な内容は、ある程度時間が過ぎ、実務でも定着していけば、不必要になり削除されるかもしれません。IFRSは原則主義の会計基準として作られていますが、必ず原則主義が貫かれているかというとそういうわけではありません。その時々のニーズに対する柔軟な姿勢を感じられます。

その他、実務上注目したい議論に、会計上の見積りについて変更が可能となる条件を設けるべきかどうかという検討がありました。会計方針の変更には変更のための条件があります。さらにIFRS13号「公正価値測定」では、公正価値の評価技法の変更については条件が提示されています。公正価値の評価技法は会計上の見積りに含まれます。IFRS13号との整合性を重視して、会計上の見積りの変更についても条件が必要ではないかという意見がありました。

IASB会議の決定では、会計上の見積りの変更については、条件を特に定めないこととなりました。会計方針の変更よりも、会計上の見積りの変更は頻繁に行われることが想定されるため、実務上の煩雑さを軽減することが優先されました。

これらの決定に基づき、IAS8号の公開草案は2017年前半に公表される予定です。


イージフ 野口




2016年10月3日月曜日

IFRSの新保険契約基準が意味するものとは

こんにちは。イージフの野口です。保険契約について、ついに2016年中に基準書が公表されることとなりました。これまで幾度となく、基準書公表の時期が延期されてきていましたが、今度こそ公表となるようです。

新保険契約基準公表の前に、ここで新基準の考え方をおさらいします。どのような考え方に基づいて作られたのかということを知っておくと、基準書の理解もしやすいと思います。

新基準は、保健契約の経済的実態を財務諸表上に反映することが目的に作られています。

ここで重要な考え方はIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」です。これは収益認識全般の会計処理を定めており、収益は顧客との契約から生じる義務の「履行」に伴って認識するという原則を定めています。この原則を、保健契約にも整合した形で適用しようとしているのが、新保険契約基準です。

新基準では、保険契約の収益認識についてビルディング・ブロック・アプローチという会計処理が、原則処理として導入されます。

ビルディング・ブロック・アプローチは保険契約の「履行」に基づいて保険負債の現在価値を測定するという考え方です。簡単にいうと、保険契約に関する将来のキャッシュ・イン・フローとキャッシュ・アウト・フローの純額から、貨幣の時間価値、リスク上の調整を考慮した残額を、未稼得の利益として測定します。この未稼得の利益は、契約上のサービス・マージンといい、正の値の場合は、保険契約の履行に基づいた収益認識を行うため、カバー期間にわたり規則的な方法で認識することになります。

保険負債の現在の価値を表すため公正価値を参照しますが、実態をゆがめる大きな価値の変動が財務諸表上に直接影響することを避けるため、見積りによる計算を行う部分も多い会計処理です。

この原則処理以外に、直接連動の有配当契約については変動手数料アプローチが適用されるなど、いくつかの例外処理も認められますが、それらは基本的にビルディング・ブロック・アプローチを一部修正する形で適用されます。

新基準のもとでは、現在の価値を表すために毎期計算を見直す必要がある、というのが、一番実務上のインパクトが大きいと思います。また、財務諸表上の変動性は直接影響しないように配慮されていますが、変動性が従来の日本基準より高まることになります。

新基準は最低限3年の準備期間を設けることが合意されているので、発効は2020年頃になる見通しです。IFRSの新基準公表により、その他の法規制も改訂されていく可能性があり、今後数年のうちに、保険業界をめぐる環境は大きく変化することになると思います。


イージフ 野口

2016年9月12日月曜日

新概念フレームワーク、認識基準をめぐって二転三転

こんにちは。イージフの野口です。概念フレームワークの改訂について、最近当ブログでも取り上げることが多くなっています。注目すべき改訂内容がたくさんあるのですが、今回は、概念フレームワークの中で扱われている、認識に関するIASBの審議を紹介したいと思います。

何を財務諸表上認識するのか、オンバランスしなければならない財務諸表項目について、これまで誤解されることが多かったと言われています。現行の概念フレームワークでは、構成要素の定義を満たす対象物の認識要件を以下のように定めています。

  • 経済的便益の流入または流出の可能性が高いこと(蓋然性規準)
  • 信頼性をもって測定できる原価または価値を有していること

特に1つ目の蓋然性規準は誤解されやすかったと思います。経済的便益の流入または流失の可能性が高い、という閾値をもって、財務諸表項目は計上されるかどうかを判断すると捉えられますが、デリバティブ資産もしくは負債など、実際には閾値を満たしていない財務諸表項目を認識する場合があります。また基準書によっては「可能性が高い」という表現以外の言い回し(「発生しない可能性よりも発生する可能性の方が高い」など)になっていることもあり、混乱を招いていると批判されていました。

この蓋然性規準をどのように扱うか、改訂の動向に注目が集まっていましたが、2016年7月のIASB会議で、資産または負債、および収益、費用または持分の変動に関して、以下の2点を認識の要件とすることが決定されました。


  • 目的適合性があること
  • 忠実な表現であること

蓋然性規準は削除されています。蓋然性規準は誤解を招きやすい上に、概念フレームワークにふさわしい形で記載することは非常に困難と判断されたからです。しかし、一方で蓋然性規準がなくなった新要件はあいまい過ぎるという批判に対処するため、経済的便益の流入または流失の可能性が低い項目は、通常、認識されないという説明が盛り込まれることになります。


いろいろな変更が加わり、わかりにくくなってしまったのですが、ここで注意しておきたいのは、新概念フレームワークで蓋然性規準がなくなっても、蓋然性が低い項目を新たに認識することにはならないということです。当然と言えば当然のことなのですが、改めて注意しておきたいところです。


この新しい2要件は、2015年公表の公開草案からさらに変更された箇所があります。公開草案では、情報を提供するコストを上回る便益をもたらす、という3点目の要件が含まれていました。しかし、この時の会議で削除する合意がなされています。


認識において、コストの制約を考慮する必要がないことを意味しているわけではありません。コストの制約は、認識という局面だけでなく、財務報告全般に関わることとして、概念フレームワーク内に記載されます。


認識においても、もちろん、コストの制約を考慮することが必要となります。この考え方はこれまでと変わりありません。


概念フレームワークの改訂では、多くの文言が修正されることになります。今回紹介した認識の要件もこれまでとは様変わりします。しかしそれは、これまで、実際に行われてきている認識の方法を変えるものではありません。今実際に使われているIFRSに合わせるための改訂であるということをここでもう一度確認したいと思います。



イージフ 野口






2016年8月8日月曜日

新概念フレームワークで包括利益はどうなる?

こんにちは。イージフの野口です。以前の記事「IFRSの包括利益がよくわからない方へ」を読んでくださった方に、今度改訂される概念フレームワークで純損益や包括利益がどのように規定されるか、ご紹介しようと思い、IASB会議2016年6月の審議を取り上げたいと思います。

今回の概念フレームワークの改訂は、抜本的な見直しを行っています。これまでも解説してきたように、今のIFRSは実はB/S重視というよりもP/L重視寄りになっている、という立場の移行を概念フレームワークに反映することが検討されてきました。かつてIASBは純損益を廃止する目標に掲げていたのですから、この転換は大きなものです。


本来であれば、純損益や包括利益といった利益概念を明確にする定義を設定することが理想でしたが、長い審議期間をかけても、多くの賛同が得られる「明確な定義」を設定することはできませんでした。審議も、もどかしい印象がありましたが、この問題ばかりに時間を費やすことはできないので、議論は時間切れでした。利益概念については、概略的な記述がなされることになります。


そこで、別の記載を概念フレームワークに盛り込むことになりました。P/Lを企業の当期の財務業績に係る主要な情報源とする、という記載です。これはP/L、そして純損益を重視する立場を明確にするための記載であって、IASBからそのことを明言しようという姿勢を表しています。何気なく読んでしまいそうな内容ですが、大きな意味があるのです。

また、包括利益は何なのか、という問いに対しても、新概念フレームワークは明確な答えを提示しません。しかし、そこにはまた、1つの仕掛けが用意されています。

6月のIASB会議の決定で、

原則として、すべての収益費用項目が純損益に含まれ、
原則として、その他の包括利益項目はリサイクルされる
(公開草案では「反証可能な推定」として定めることが提案されていましたが変更されました)
こととなりました。

P/Lと純損益を重視するのであれば、その他の包括利益項目はリサイクルされることが必須ですし、B/Sと包括利益重視であれば、純損益自体必要なくなりますし、その他の包括利益項目はリサイクル不要です。


今回の記載は、原則、その他の包括利益項目はリサイクルするけれど、例外も稀にあり得る、という体裁になっています。P/L重視の立場に移行したとはいえ、完全にP/L重視だけで押し通すつもりもない、という微妙なさじ加減が表れているように思います。


その他の包括利益項目はリサイクルするという考え方自体は、もともとある日本の会計基準の考え方に近いと思います。昔は、その他の包括利益項目のリサイクルにこだわっているのは日本だけではないか、と言われていましたが、今はそれが主流となりました。1周回って、IFRSが日本基準に近くなったかのようにも感じられて、面白いところです。新概念フレームワークの利益の考え方は、日本の感覚で理解できるように思います。



イージフ 野口由美子