2009年12月22日火曜日

2010年の国際会計基準はどうなるか

国際会計基準の適用にあたってよく耳にする言葉で
ムービングターゲット、という言葉があります。



国際会計基準自体が改訂され、動き続けるものなので
それを目指して基準を合わせていくのは難しい、ということです。



今年は国際会計基準の改訂がいろいろありました。
主なものとして、
関連当事者の開示(IAS24)
金融商品会計(IAS39からIFRS9へのリプレイス)
IFRSの初度適用の免除措置の追加(IFRS1)
中小企業向け国際会計基準(IFRS for SMEs)
がありました。



その他にも金融商品に関連した改訂がありました。



2008年と2009年はかなりの数の改訂がありました。
2007年は借入費用のみ、
2006年はセグメントのみ、
という状況と比べると
最近の改訂がいかに多いか、ということがよく分かります。



そして、この2年ほどの改訂では金融商品関係の改訂が
非常に多いのが特徴です。
これは金融危機の影響を受けています。



来年以降はどうでしょうか。



2010年に改訂が予定されているプロジェクトには、
連結
認識の中止
金融商品会計(減損、ヘッジ会計)
廃止事業
などがあります。
まだまだ金融商品関係が優先された計画になっています。



2011年になると
金融商品関係だけでなく、
退職給付
リース
収益認識
などの改訂が予定されています。
特に退職給付やリースについては
かなり議論が分かれているところです。
例えばリースでは、ほとんどのリース取引について
資産を計上することが検討されています。
どのような改訂になるか今後の動向が注目したいと思います。



そこで、2011年が過ぎれば国際会計基準の改訂は
落ち着くのかというと
そうはならないと考えられます。



現在の経済環境は変化が速くなっています。
経済環境が変われば、会計基準も変わらざるを得ないと思います。
例えば、リース取引自体がない時代であれば、
リースの会計基準も必要なかったわけですし、
現在のように
あまりにもオフバランス処理されているリースが
盛んに行なわれるようになると、
これでいいのか、実態に即した処理になっているのか、と
問題提起されるわけです。
また、会計基準の設定には、実務上の要請や、政治上の駆け引き(あまり好ましくありませんが)もあります。



国際会計基準はまだまだムービングターゲットであり続けるでしょう。
しかし、逆に改訂のプロジェクトが発足していない基準書は
動かないのです。
ムービングターゲットであるのは、
国際会計基準の一部だということも知っておくべきです。



2009年12月16日水曜日

勉強会のご案内 IFRS対応講座入門編『IFRSであなたの会社はどうなるのか』

今日は勉強会のご案内です。



Insight NOWでIFRSの勉強会を開催します。



Insight NOWの勉強会は非常に面白い試みです。
通常のセミナーなどは一方的な講義が中心ですが、
この勉強会は
参加者が自分の会社のIFRSとの差異を分析したり、
ディスカッションを通じて
IFRSを深めたり、実務対応の問題を考えたりします。



実際、ただIFRSの基準書の内容を知るというだけでは
なかなか自社の課題は見えてきません。
また、基準書を知るといっても
個別論点ばかり追ってしまって全体的な理解が足りないこともあるようです。



そこでこの勉強会では
IFRSの根本にある考え方を理解する、
自社の問題に引きつけて考えてみる、
ということを参加者の皆さんと一緒にやってみようと思っています。



1月14日(木)から週1のスケジュールで全4回です。
ご興味のある方はInsightNOWのサイトからお申し込みください。
https://www.insightnow.jp/communities/id/52



2009年12月14日月曜日

すべてを時価評価する公正価値オプションとは:IFRS第9号金融商品

国際会計基準では
有価証券やデリバティブなどすべての金融商品を時価評価し
変動を当期の損益に計上する公正価値オプションが選択肢として
認められています。



これは日本の金融商品会計にない規定です。



ただし、
国際会計基準でもやみくもに何にでも公正価値オプションを認めているというわけではありません。
特定の場合のみに選択することができます。
現行のIAS第39号では
以下の3つの場合に公正価値オプションが認められています。
(1)会計上のミスマッチが生じている場合
(2)会社が公正価値で管理を行なっている場合
(3)組込みデリバティブである場合



(1)の会計上のミスマッチとは公正価値評価を行わないと不都合が
生じる状態のことです。



例としてはリスクをヘッジするつもりで行なっている取引で
ヘッジ会計を適用していない場合があります。
本来はヘッジ会計をしたいところなのですが、
ヘッジ会計には取引の事前、事後に
いろいろな手続を行なうことが必要で、非常に面倒です。
そのような手続を行なわなくても公正価値オプションを選択して、
ヘッジ会計と同様の効果を得ることができるということです。



この例だと、公正価値オプションは非常に便利に感じられますが、
選択には注意しなくてはならないことがあります。
公正価値オプションは一度選択したらやめられないということです。
ヘッジ会計の場合は会社の意図により途中でやめることができます。



(2)は会社の意図を重視している規定です。現行のIAS第39号では
金融商品を保有する会社の目的、意図が重視されていました。



この(2)は、新しく公表されたIFRS第9号ではなくなっています。
保有目的を重視するのではなく、
金融商品の性質、会社のビジネスモデルを重視する立場に
変更されたからです
(詳しくは、前々回の記事をご参照ください)。



(3)は組込みデリバティブについて
区分処理に対する選択肢として、全体を公正価値で評価することを
認めるものです。



この(3)もIFRS第9号ではなくなっています。
なぜかというと、
IFRS第9号で区分処理は要求されなくなったからです。



つまり、
現行の基準では3つの場合に
公正価値オプションが認められていましたが、
新しい基準では「会計上のミスマッチ」の場合に
公正価値オプションを使えるということになります。



ここで1つ疑問に思うのは
公正価値オプションがあるのなら、
ヘッジ会計はいらないのではないか、ということです。
ヘッジ会計の指定を行なうために文書や管理体制を整備し、
ヘッジの有効性を定期的に評価するのは非常に面倒です。
それなら公正価値オプションで済ませてしまいたいということに
ならないでしょうか。



ヘッジ会計は現在審議中で改訂されることになっています。
来年早々にも公開草案が出る予定なので、
こちらの動向にも注目していきたいと思います。



2009年12月7日月曜日

株式の売却益は当期利益ではない?:IFRS第9号金融商品

国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第9号では、金融資産の分類と測定について新しいルールを定めています。



前回の記事で紹介しましたが、
有価証券やデリバティブなどの金融資産は、
償却原価で測定するものと公正価値で測定するものの2つに
分類して評価を行います。



この分類方法に従うと
株式はすべて公正価値で測定するものに分類されることになるので、
毎期末に株式を時価評価してその変動額は当期の損益となります。



ここで、日本で問題になったのが
いわゆる持ち合い株式です。
現在の日本基準で持ち合い株式は
「その他有価証券」という分類を用いて時価の変動額を
損益に計上せず純資産に直接計上する方法がとられています。



持ち合い株式の時価の変動を当期の損益に影響を与えることがなかったのですが、
今回のIFRS第9号が日本で適用されれば、
持ち合い株式で毎期の損益が大きく変動してしまうことになります。
日本にとっては受け入れられないものでした。
日本では経営者の意思決定とは関係なく損益が変動することに抵抗があるのだと思います。



そこで「日本版改訂」ということで、
企業が指定した株式に限って
時価の変動を当期利益ではなく「その他包括利益」に計上するという選択肢が追加されました。



企業はこの選択を自由に行なうことができます。
しかし、一度指定してしまうとやめることはできません。
またその株式の配当は当期の利益となりますが、
売却してもその損益を当期損益に計上することはできません。
売却損益も「その他包括利益」に計上します。



その他包括利益に計上していたものを
あるタイミングで純利益に計上することをリサイクリングといいます。
現行の日本基準での考え方では持ち合い株式も
経営者の意思決定により売却すればそこでその株式に対する投資の成果が確定し、



確定した損益として当期利益に反映することになります。





IASBの審議を見ていると
そもそもこのような発想をする国がないようです。
損益というものはすべていつかは確定したものとして当期利益に反映されるべき、ということではなく、
当期損益も含めた包括利益という大枠を中心に捉えている



ということになると思います。



この日本版改訂を重要視しているのは日本だけのようです。



2009年12月1日火曜日

金融商品会計の新基準書:IFRS第9号の公表

2009年11月になって国際会計基準審議会(IASB)は
新しい基準書を公表しました。
IFRS 9 Financial Instrumentsです。
金融商品会計の中でも最も改訂が早く取り組まれていた、
金融資産の分類と測定について大幅に取り扱いが変わりました。



金融資産の分類と測定というのは
債権や有価証券、デリバティブなどをどのような金額で評価し計上するか、
という問題です。金融機関に限らずすべての企業に関係してくる重要な話です。



この新しい基準書で最も特徴的な点は、
金融資産の保有目的による分類を廃止したということです。



従来の国際会計基準や現行の日本基準では
保有目的によって金融資産を分類して
分類毎にその目的にあった評価を行うことになっています。
例えば、トレーディング目的で保有しているものはその時価の変動が
投資の成果として分かるように、
時価で評価して評価差額は当期の損益に計上します。
また、満期まで保有して利息を受け取る目的であれば、
時価で評価はせずに償却原価といって実効金利で割り引いた金額で計上します。



改訂後の分類方法ではそのような保有目的による分類を行ないません。
目的ではなく
①企業のビジネスモデル、と
②金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特徴
の要件によって、
償却原価で測定するものと公正価値で測定するものの2つに分類します。



①の企業のビジネスモデルの要件とは
企業がその金融資産を保有し、契約上の元本と利息を回収するための管理を行なっているか、ということです。
保有目的では経営者の意図が重要でしたが、
ここでは事実関係、に焦点が当てられることになります。
また、この判定は企業レベルで行なうものでもなく、金融商品単位に検討するわけでもありません。



どのような単位で検討するかは企業の判断に任されています。
例えば、ポートフォリオ単位で管理を行なっているのであればポートフォリオ単位で判断することになると思います。



②の要件は金融資産そのものがどのようにキャッシュ・フローを生み出すかを検討することになります。
金融資産を保有することによって、契約上、特定の日に元本と利息を回収することができるのであれば、この要件を満たすことになります。



これらの2つの要件を満たしたものが償却原価で測定されることになります。



例えば、通常の貸付金などは従来の基準と同じように償却原価で測定されることになります。
また株式やデリバティブなどはキャッシュ・フローが分かりませんので公正価値で測定することになります。



今回の改訂で金融資産の分類と測定は非常に簡素化されました。
しかし、すべてがこの分類だけで処理できるわけではありません。
それぞれの測定方法について任意で選択できる会計処理も用意されています。



その選択肢については次回ご紹介したいと思います。



2009年11月18日水曜日

IFRS金融商品会計セミナーのお知らせ

今回は
金融財務研究会主催のセミナーのお知らせです。



IFRSについてのセミナーや書籍などはたくさんありますが、
金融商品会計を扱ったものは非常に少ない状況です。
金融商品会計に関する基準書があまりにも難解になっていることや、
現在急ピッチで改訂作業が進められているという事情があるからです。



しかし、
金融商品会計で扱われる内容は
債権や債務の計上や有価証券の評価、ヘッジ会計など
多くの企業に関係してくるもので
「手付かず」の状態で放っておいておけるような小さなトピックではありません。



このセミナーでは現行の国際会計基準の金融商品会計についての基本的な考え方から
最新の改訂内容、審議動向もご紹介します。



ご関心のある方は是非ご参加ください。



セミナーの詳細、申し込みは
金融財務研究会のHPからお願いいたします。
http://www.kinyu.co.jp/seminar.html



2009年11月2日月曜日

日本が目指す国際会計基準へのソフトランディング

国際会計基準が日本でも適用される見通しになったということで、

国際会計基準の勉強を始められたり

実際の適用に向けた準備に着手されたり

いろいろな対応を検討されている方が多くなりました。




実際に国際会計基準が日本企業に適用されることとなれば

周到な準備をしていかないとかなりの混乱が起きそうです。




この混乱を避けるという意味でも重要なのが

現在もすでに進行している

会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)の

コンバージェンスプロジェクトです。




ASBJでは国際会計基準と差異がある日本の会計基準を改訂し、

今までなかったものについては新しい会計基準を開発し、

国際会計基準との差異の解消に努めています。




そして今後さらに

コンバージェンスプロジェクトは加速して進められることが

想定されています。




コンバージェンスプロジェクトの流れにのって

日本の企業が新しい会計基準を適用していけば、

国際会計基準を適用する段階には

ほとんどの差異がなくなっているためスムーズに移行できる、

ソフトランディング、

というのが理想だと思います。




しかし、ここで注意しなくてはならないのが、

コンバージェンスで入ってきている日本の会計基準は

国際会計基準の日本語訳ではないということです。




新しい会計基準を適用するときに

会計処理の選択の仕方によって

国際会計基準では認められていない会計処理を適用することも

できてしまいます。




例えば、

リース取引の会計基準はコンバージェンスプロジェクトの一環で改訂されましたが、

少額や短期の重要性の低いリース取引や

改訂前からある所有権移転外ファイナンス・リース取引を

賃貸借処理することが認められています。

このような処理は国際会計基準にはありません。




日本基準の改訂で一度処理を変えて、

国際会計基準の適用でまた変更が必要になる

ということにもなりかねません。

日本の会計基準の改訂に対応する段階から

国際会計基準の知識は必須になるでしょう。




また、リースの例で言えば、

国際会計基準でリース取引についての基準書が改訂されることになっていて、

現状とは全く違った処理が採用される可能性もあります。

そうなればまた日本の基準は改訂されるかもしれません。




国際会計基準の改訂が進めば進むほど、

日本のコンバージェンスプロジェクトもそれを

追いかけなくてはならなくなります。

つまり、コンバージェンスがどのタイミングでどれだけ進展するか、

ということは日本の状況だけで決まるものではないので

国際会計基準の適用までにコンバージェンスの対応が

どれくらい進むかというのもよく分からないのが実情だと思います。




日本のソフトランディングもそんなに簡単なことではなさそうです。










2009年10月26日月曜日

国際会計基準の日本版改訂:持ち合い株式で利益を出せるか

2009年10月に開催されたIASBの理事会では

現在ピッチで進められているIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂について議論が行なわれました。




その議題のひとつに

「日本版改訂」と呼ばれる改訂案がありました。




いわゆる持ち合い株式をどのように扱うかという議論で、

持ち合い株式というもの自体がほとんどない国々では

あまり問題にならないのですが、

日本には今も持ち合い株式を多く保有している企業は多く、

その取扱いが変わってしまうと

企業業績に大きなインパクトを与えることになります。




日本だけが非常に気にしている問題なので

「日本版改訂」と呼ばれているようです。




日本の会計基準でも現在の国際会計基準でも

株式などはその保有目的により分類されて

それぞれについて取扱いが違います。




現在の日本の会計基準では持ち合い株式は

「その他有価証券」という分類にして、

毎期末時価で評価し、評価差額は損益とせずに、

純資産の部に計上します。

持ち合い株式というのは時価変動のリスクにさらされているので、

その変動を表示することが必要ですが、

売買することを目的に持っているわけではないので

変動額を企業の業績として損益に計上するべきではないと

考えられているからです。




そして売却したときに取得価額と売却価格の差額を損益として

計上することになります。

投資により株式保有してきた採算を確定させるためです。




現状の国際会計基準でも同じような取扱いが定められています。




ところが、現在の国際会計基準の改訂案では

株式などの取扱いは簡素化され、

原則としては時価評価することに一本化されます。

そして、時価評価の差額は損益として計上します。




持ち合い株式も時価評価し、毎期損益が計上されることとなるので、持ち合い株式の変動が大きいと業績に

大きな影響を与えることになります。




そのことを懸念して、日本版改訂では

企業が選択すれば、評価差額を損益ではなく

「その他の包括利益」に計上することができるというオプションを

設けることが提案されました。

これで今までと同じように評価損益が業績にインパクトを

与えることは回避されます。




その代わりにこの提案には厳しい部分もあり、

配当や売却損益も「その他の包括利益」に計上しなければならない、

ということが提案されていました。




持ち合い株式として評価損益を毎期計上することをしないのであれば、

配当を受けた時や売却時も損益を計上しないということです。

当期の業績の中に長期にわたる投資についての損益を

含めることはおかしい、という考えで、

また売却時点を選べるので利益操作にもつながるということが

懸念されているからです。




売却時には損益を計上したい、またはすべきだ、というのが

日本の意見としてあったと思いますが、

IASBの審議で出た結論は

配当は損益に計上するが、売却損益の計上は認めないというものでした。




ここには日本の利益に対する考え方と

国際会計基準の純利益、その他の包括利益、包括利益という概念に

大きな隔たりがあるように思います。




利益とは何か、

根本的な問題を改めて考え直さなくてはならないところに

きているのだと思います。



2009年10月23日金曜日

(株)イージフ主催IFRSセミナーのお知らせ

今回はセミナーのお知らせです。



11月20日(金)に株式会社イージフ主催で
「IFRS適用への準備事項」の無料セミナーを開催します。



このセミナーでは
武田公認会計士事務所 所長、

株式会社スリー・シー・コンサルティング コンサルティング事業部 部長の
武田雄治さんが講演してくださいます。
IFRS適用の影響について、システムなどを含めて
幅広くお話ししていただける予定です。



イージフからは私が
IFRS適用の準備にあたり、最初に着手すべき会計処理の調査や計画の立案について
講演させていただきます。



実践的な内容になると思いますので、IFRSの実務上の問題について
ご興味のある方は是非ご参加ください。



申し込みはこちらのイージフのHPよりお願いいたします。

http://aegif.jp/event/seminar091120.html



2009年10月19日月曜日

国際会計基準審議会(IASB)議長から日本へのメッセージ

2009年10月14日、「IFRSで日本の企業経営は大きく変わる」というテーマで

国際会計基準(IFRS)シンポジウムが経団連会館で開催されました。




このシンポジウムにはデイビッド・トゥイーディーIASB議長が講演を行いました。

IASB議長というのは非常に多忙で

��この日も午前と午後に日本で講演をした後に、

ロンドンにとんぼ返りで日本時間で午前3時からのIASB会議に出席するという

スケジュールだったそうです)

日本で講演を聴けるというのはそうあることではありません。




今回の講演で議長は

「IFRS:単一のグローバル会計基準を目指して」というテーマで

IASBが何を目指し、現在どのような状況にあるのか、

そして、IFRS適用の方向性を決定した日本に対するメッセージを述べていました。




その中で興味深かったのは、

日本のIFRS適用にあたってIASBは全面的にサポートをする、

ということを強調していた点です。




IFRSを適用するには解釈を巡って混乱が生じたり、今までの考え方と異なるため戸惑うことがたくさん出てきます。

IASBとしては日本の適用準備に対応する専任のメンバーを用意し、

適用にあたっての様々な問題を解消できるようにサポートするということでした。

また、日本で問題になったことを解決するために

IFRS自体を改訂、新基準書を作成する可能性もあるということを

示唆しました。




議長がわざわざ日本に来て全面的なサポートをするということを

表明したことにどのような意味があったのでしょうか。




IASBとしてはやはりIFRSがグローバルな基準として機能していくには

アメリカと日本の適用が必須なのです。

現状ではどうしてもEUの影響力が大きいということがあります。

IASBとしては他の大国が参加することで、

バランスを取りたいということがあるようです。




また、単一の会計基準として機能するには、

各国で細則を設けたり、一部の基準書を適用しなかったり、という

勝手をやってほしくないということがあります。

日本では細則主義の日本基準に慣れてきているせいもあって、

どうしてもIFRSの実務指針みたいなものが欲しくなってしまいます。

そのような動きはIASBとしては阻止したいのです。

日本版IFRSや、ヨーロッパ版IFRSが次々とできてしまったら

国際会計基準を適用する意味がなくなってしまいます。




日本では実際の適用の準備にあたって、

会計士協会や経団連などが連携し日本固有の問題について議論を行ない、

IASB専任メンバーに相談し、

必要に応じてIASB側に解釈指針等の作成を要求するということを

行なっていくようです。

本来は日本独自に適用指針を用意した方が楽なのでしょうが、

正攻法の手段をとるしかなさそうです。




そして、もう一点、議長は興味深いことを指摘していました。

今までIFRSを導入した国ではどこでも

当初想定しなかったような問題に直面するということです。

予想もしなかったような問題は必ず起きると断言していました。

やはり早い段階からの準備が一番重要なのだそうです。




これは各企業だけの問題ではありません。

IFRSは日本全体が積極的に取り組まなければならない課題なのです。



2009年10月7日水曜日

旬刊経理情報(中央経済社)記事掲載のお知らせ

旬刊経理情報という雑誌に記事を書かせていただきました。



10月10日号の
「IFRS適用前に準備するポイントはここだ!関連会社の内部統制はこうする」という
ポイント解説の記事です。



IFRSの適用にあたっては関連会社の取扱いも変わっていきます。
現状ですと、関連会社についてはあまり親会社で把握していない場合もあると思います。
そこで今から行なうべき対応について、内部統制の観点も絡めて説明しています。



内部統制2年目以降の検討や、関連会社への対応にあたって
参考にしていただければ幸いです。



2009年10月5日月曜日

国際会計基準の紆余曲折:金融商品の評価が変わる

国際会計基準の基準書はたくさんありますが、その中で複雑で難解過ぎると悪評高いのがIAS39号「金融商品:認識及び測定」です。






IAS39号は1998年に公表されましたが、

前身となるIAS25号ができてから12年の歳月をかけて作られています。

この間にいろいろな例外処理や選択肢が作られ裁量の余地を残したり、

一方でそれらの規定が利益操作に利用されないよう要件を決め禁止事項を定めて厳格な処理を求めたり、と

項目がどんどん増えて今の複雑な基準書ができたわけです。




それに比べると今回の全面改訂はかなり急ピッチで進められています。

改訂の論点は現在以下の3つにしぼられています。




��1)金融商品の分類と測定

��2)金融商品の減損

��3)ヘッジ会計




今回は金融商品の分類と測定について、

最近の審議状況を見てみたいと思います。




現在の金融商品会計では金融商品を保有目的等から分類を行ない、

それによって評価方法が異なります。




売買して売却益を得るために持っている有価証券等の金融資産は、売買目的保有資産に分類します。



企業は値上がり益を獲得することが目的なので



時価の変動が企業の業績に反映されるべきと考えられます。

したがって、毎期金融資産を時価評価して評価損益を計上します。




一方、企業が保有する有価証券等の中には必ずしも売買することを目的に持っているとは言えないものもあります。





日本企業が多数保有している持ち合い株式等はこれに該当すると考えられます。

このような金融資産は売却可能保有資産に分類します。

これらの金融資産は時価の変動によるリスクにさらされているので、時価で評価します。





しかし、そもそも売ることを目的にしていないので、時価評価による評価損益を計上しません。






その他に、債券等は満期まで持って利息を受け取ろうという意図で保有することもあります。

これは満期保有投資に分類します。

満期まで持っているので時価の変動は関係ありません。

償却原価といって利息を除いた部分を金融資産として計上し、利息を利益として計上していきます。




このように、企業の意図によって会計処理が変わってしまいます。

企業が自ら保有目的を変えたと言って、



都合良く会計処理を変えてしまうことを認めるわけにはいきません。

そこで国際会計基準では分類に要件をつけて



安易に分類を変更することを禁止しています。




ところが、IASBは2008年10月に突如、



金融資産の再分類を認める改訂を出しています。




売買目的保有金融資産を他の分類に変更することが認められたのです。

世界的な金融危機の影響を受けて金融資産の多額の評価損が



企業業績を圧迫しかねないため、これを回避しようとする意図です。

この改訂は国際会計基準を設定する正規の手続を踏んでいません。

国際会計基準が公平で妥当な基準であるべきですが、



このような改訂はその根幹にかかわるような危険なやり方だったと思います。




この時の反省も踏まえ、

現在のIASBの審議ではこの金融商品の分類を簡素化することを検討しています。

現在の案では2分類になり、公正価値で評価するものと償却原価で評価するものに分けます。




端的に言うと貸付という金融取引の性格がなければ、公正価値で評価されることになるようです。




内容はかなり簡素化されることになりそうですが、今までよりも公正価値で評価する金融商品が増えることになると思います。

実務では、時価が簡単に分かるようなものなら問題ないのですが、



分からないものについては対応が難しい場合がありそうです。




2009年9月28日月曜日

変わり続ける国際会計基準に対応する

IASBでは国際会計基準のプロジェクトが多数進行しています。
IASBで2011年までのスケジュールが公表されていますが、公表が予定されている基準書だけでもかなりの数になります。



新しい会計基準が公表されるまでには正規の手続があります。
国際会計基準の作成に誰もが意見を言う機会が与えられ、
「民主的」な手続を踏むことになっています。
国際会計基準が特定の団体や国の意向に偏ることなく、
多くの国々に受け入れられる会計基準として機能するために重要なものです。
具体的な手続は以下のようなものになっています。



(1)計画が策定され、プロジェクトが発足。
(2)リサーチが行なわれ、討議のためのたたき台を公表。
   討議文書で複数の案を公表し、
   企業や会計士等に意見を求めます。
(3)意見をもとに公開草案を作成、公表。
   公開草案に対しても広く意見を求めます。
   反対意見が多いと、確定基準書を公開草案の内容から
   変える場合もあります。
(4)確定基準書の公表。 



このように広く意見を求め、様々な角度から審議が行なわれていくので、基準書の作成はそれなりに時間がかかります。



日本企業は早くて2015年に国際会計基準の適用が必要となりますが、その準備を進めるにあたって国際会計基準の審議状況は注意しなくてはなりません。
現在の国際会計基準が2015年までに変わってしまうことあるからです。



今年中に公開草案が出る基準書については公開草案でおおよその改訂内容が分かるので、対応は無理なく行なえると思います。
しかし、来年以降に公開草案が出るようなあまり審議が進んでいないものについては注意が必要になるでしょう。
注意すべき分野は主に以下のものがあります。



<金融商品会計>
いくつものプロジェクトが進行しています。
金融危機等の影響から改訂作業が急ピッチで進められています。
金融資産の分類や評価、ヘッジ会計等については多くの日本企業が影響あると思います。
負債の測定における信用リスクのプロジェクトは特に社債等を発行している企業は注意が必要です。
負債と資本の区分も審議中で新株予約権付社債等の会計処理に影響を与える可能性があります。



<退職給付会計>
まだプロジェクトのスケジュールも定まっていませんが、今後4年以内に大幅な改訂がなされる予定です。
数理計算上の差異が即時認識されることなど、
暫定的に合意されている項目だけでもインパクトの大きい改訂となることが想像できます。



<リース会計>
公開草案の公表は2010年の予定です。
リース取引をオフバランスできる場合がほとんどなくなる可能性があるようです。



その他にも収益認識についての基準書も2010年に公開草案が公表される予定です。
売上取引を分解して収益認識するような難解なモデルが検討されているようです。
しかし、物品やサービスの受渡しと顧客が債務を認識するタイミングがあまりずれることのない通常の取引であれば、影響は少ないのではないかと考えられます。



今後の改訂の動向は追ってまたご紹介したいと思います。



2009年9月14日月曜日

企業業績への大きなリスク:国際会計基準の年金会計

企業から従業員に支払われるお金というとまず最初に頭に浮かぶのは月々の給与ですが、
給与以外で企業が従業員に対する給付も企業にとってかなりの負担となります。
例えば、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)は従業員への医療費負担が経営破綻の引き金になったと言われています。
従業員が退職してから死亡するまでの医療費はかなりの額になりますが、GMでは企業が負担する額(約320億ドルあったとも言われています)を予め費用計上していなかったということです。



従業員への退職後の給付をどのように費用計上し、財務諸表に反映させていくかということは非常に重要な問題です。



現在国際会計基準審議会(IASB)では年金等の退職後給付について審議を進めており、会計処理が大幅に変わることになりそうです。



現在の年金会計では、
将来から長期にわたって支払うことになる年金債務や年金資産を計算で見積もって、見積額をベースに処理をします。
見積りと実際の額の差異については
毎年多少の差異は誤差として放っておきます。
誤差の幅をコリドー(回廊)と言います。
毎年多少差が出ても長期にわたってみればその変動もプラスマイナスゼロになるだろうという考えを前提としているのです。



しかし、その多少の差異、つまりコリドーを出てしまった分については
何年か年数をかけて少しずつ償却して認識することになります。
つまり、年金の資産や債務に変動があってもその差異は長期にわたって償却するので
企業の業績に与える影響はある程度抑えられていました。



ところが、現在IASBではこの考え方をやめようとしています。
コリドーや償却をやめて、差異のすべてを即時認識することが暫定的に合意されたのです。
そうなると、例えば金融危機で年金資産の価値が大幅に減ってしまった場合、その目減り分が損失として計上されることになります。
これはかなりのインパクトで企業業績が年金の運用次第で大幅に変わってしまう状況が予想されます。



ただ、まだ審議の途中なので決まっていないことも多くあります。
その1つに、計上方法があります。
当期損益に反映させるべきか、その他の包括利益とするべきか、というところで議論が分かれています。
これは企業の収益をどのように見せるべきかという根本的な問題にもつながります。



国際会計基準の改正は日本の会計基準にも影響を与えます。
日本企業もIASBの審議に注目していく必要があるでしょう。
今後の動きについてはまたご紹介していきたいと思います。



2009年9月7日月曜日

国際会計基準を巡る攻防:G20の提言を受けて

日米欧と新興国等20の国と地域が参加する財務相・中央銀行総裁会議(G20)では今年の4月にIASBに対して、国際会計基準の改訂が促進されるよう提言しました。




世界的な金融危機により、財務報告の透明性、説明責任の重要性が増して、国際会計基準の役割はより大切になっています。

その一方で、これも金融危機の影響なのですが、不利な影響を受けることを嫌って国際会計基準に対する反対圧力も強くなり、国際会計基準の改訂がはかどっていない状況です。

規定の重要部分を骨抜きにしたり、政治家が自国の自治権を主張したり、という欧米を中心とする国々の要求が通ってしまっているようです。




特に、金融商品会計に関連する議論ではアメリカなど各国の意見がまとまらない状況です。

主な争点の1つが有価証券等の時価会計です。




現在、有価証券等は




有価証券を売買して値上がり益を得ることを目的とするのか、

満期まで持ち続けて利息を得ることが目的なのか、

株式等を持つことによって経営を支配することが目的なのか、




といった具合に保有する企業の目的によって評価の仕方が変わってきます。

そして、保有目的によっては時価評価しなくてもよいことになります。




この保有目的別の処理も改訂の検討課題になっています。

これまでは時価会計をより幅広く適用する方向で議論が進んできましたが、

今回の金融危機では金融商品の時価評価の結果多額の評価損を計上したために信用危機に拍車をかけたと考える政治家も多く、反対圧力が強く議論が難航しています。




そこでこの国際会計基準の改訂議論の停滞を打破するためにG20から提言が出され、議論を後押しすることになったのです。

とはいえ、各国がG20での合意を受けて動くかは微妙で、

ここでもやはりアメリカの動きが注目されます。

アメリカは国際会計基準の導入を決定したものの、まだ導入時期については明言を避けています。

国際会計基準とは距離を置いていますが、一方、IASBに対する資金の拠出は一番多く、状況を複雑化させているということもあるようです。




そこで日本の対応は、というと

国際会計基準への影響力はほとんどない、

自国への国際会計基準の導入もアメリカのやり方を追随する、

という状態です。

日本国内だけでなく、世界の状況に目を向けないと

企業会計の将来は分からなくなってきていると思います。



2009年8月31日月曜日

最終仕入原価法は選択肢か:国際会計基準の棚卸資産

棚卸資産の評価に関しては、採用する方法によっては金額が大きく変わってしまったり、在庫管理の業務を大幅に変更しなくてはならなくなったり、企業への影響が大きいトピックです。




日本の会計基準では棚卸資産の評価について改正を行なって、国際会計基準との差異を解消しようとしています。

例えば、従来は原価法と低価法の両方が認められていました。

原価法は基本的に評価損等を計上する必要がなかったのですが、

現在は原価法を適用していても収益性の低下が認められれば評価損を計上しなくてはなりません。

国際会計基準では低価法となっています。




また、評価方法も先入先出法や総平均法などいくつか選択肢が認められていますが、後入先出法の選択ができなくなります。これは国際会計基準で後入先出法は認められていないことに対応するものです。

その他にも国際会計基準では売価還元法や標準原価の使用について要件が定められていて、求められている評価方法との差異が重要でなければ簡便法として採用できることになっています。




このように国際会計基準では棚卸資産の評価についてはあまり選択肢を多く認めない考え方にたっています。選択肢としてあっても日本の会計基準のように企業
の裁量で自由に選ぶというよりは、要件が定められていてクリアできる場合にのみ選択できるような厳しいものになっています。




それでは中小企業向け国際会計基準ではどのような取り扱いになっているのでしょうか。




基本的には簡便的な処理を認める考え方なので、

まず、先に触れました売価還元法や標準原価の使用について自由に選択できます。

その他に最終仕入原価法も採用することができます。




最終仕入原価法というと、日本では税法で認められていることもあり中小企業では採用されている場合も多い評価方法です。

ただ、最後に仕入れた原価が期中に仕入れた原価より高い場合、棚卸資産が水増しされることにつながるため会計上合理的でないとされています。そのようなことから、最終仕入原価法は税法上はともかく、会計上は採用しづらい方法になっています。




中小企業向け国際会計基準では、棚卸資産の評価について選択肢が広がることになるので、日本での国際会計基準対応にあたっては大いに参考にできるのではないかと考えられます。



2009年8月22日土曜日

ブランド(のれん)は時が経てば減るか:国際会計基準の無形資産

無形固定資産というとソフトウェアや商標権等の権利、のれん等があります。



無形というだけあって、目に見えないものなので、「物」として存在する他の資産より扱いはやっかいです。現在の日本の会計では無形固定資産の計上や償却等は税法の規定に従って処理している場合がほとんどだと思います。



国際会計基準では無形固定資産についてより実態に即した、という観点で違う処理を求めています。
特徴的な処理を見てみましょう。



①耐用年数のない無形固定資産がある
国際会計基準では無形資産を耐用年数が分かるものと分からないものに分けます。国際会計基準でのれんの償却を行なわないことは有名な論点ですが、これものれんの耐用年数がわからないので耐用年数のない無形固定資産と考えているからです。



②耐用年数や償却方法などを毎期見直さなくてはならない
これは有形固定資産でも同じことが要求されていますが、無形固定資産の処理が実態に即しているか毎期見直さなくてはなりません。日本基準よりも処理の合理性について説明が必要になります。



③開発費も無形固定資産として計上する場合がある
日本基準では研究開発費を原則費用処理としていますが、
国際会計基準では一定の要件を満たした開発費を資産計上します。



これらの取り扱いについて、中小企業向け国際会計基準はどのように定めているでしょうか。



①耐用年数のない無形固定資産はない
耐用年数を合理的に見積もるのは非常に面倒な作業です。そこで中小企業に対しては耐用年数が分からない無形固定資産は耐用年数を10年と推定して償却することを認めています。従って、のれんも10年で償却することができます。



②耐用年数や償却方法などを毎期見直さなくてもよい
減価償却の会計処理を毎期見直すのは非常に面倒な作業になると思います。
中小企業向け国際会計基準では、経済的実態が変化したという兆候がある時に見直すことが要求されているので、変化がなければこの煩雑な作業を省略することができます。



③開発費はすべて費用計上できる
開発費についてもいちいち要件を検討するのは大変な負担です。そこで資産計上の要件検討をしないで一律に費用処理することが認められています。



個人的にはのれんは時間とともに減価しないが減損の検討が必要、という国際会計基準の取り扱いが、中小企業向け国際会計基準ではのれんの償却を行うことになる違いが興味深いです。



このように国際会計基準では無形固定資産の会計処理は複雑になりますが、各企業がどのように対応していくか方針を立てなくてはなりません。
国際会計基準と中小企業向け国際会計基準の両方を参照して企業がグループとしてどのような実務を行なっていくか、検討していく必要があるでしょう。



2009年8月8日土曜日

国際会計基準対応の固定資産管理に悩む前に

国際会計基準では資産の評価を適切に行うことを重要視しているため、固定資産の取り扱いではいろいろと面倒な処理が規定されています。

そういうこともあって、国際会計基準を適用しているヨーロッパ等では固定資産台帳を2つ、3つ持って管理しているという話もあります。




今回は国際会計基準の固定資産についての処理について3点、中小企業向け国際会計基準との違いを比較しながらご紹介したいと思います。




①再評価モデル




再評価モデルというのは、固定資産を購入した金額から減価償却をした額で評価するのではなく、期末の公正価値(時価)で評価するというものです。

日本の会計基準にはそもそもこのような処理はありませんが、

国際会計基準では再評価モデルを選択することができます(このような処理が強制されているわけではありません)。




中小企業向け国際会計基準では、

再評価モデル自体選択することができません。

毎期時価を調べるというのは非常に面倒なのでそもそも選択肢として認める必要もないだろう、というところでしょうか。




②耐用年数、残存価額、減価償却方法の見直し




国際会計基準では毎期末に固定資産の減価償却が適切か、耐用年数、残存価額、償却方法を見直さなくてはなりません。陳腐化が進んでいるとか、使用状況が変わったとか、変化があればそれに合わせて減価償却も変えていかなくてはなりません。




中小企業向け会計基準では、

そこまで厳密な見直しは必要なく、価格の変化や技術革新など変化の兆候があった時にのみ見直しをすれば良いということになっています。




③借入費用の資産計上




国際会計基準では特定の固定資産の購入するために借入を行なった場合、その借入の支払利息等は固定資産と一緒に資産計上しなければなりません。




中小企業向け国際会計基準では、

このような処理は必要なく、支払利息は発生した時の費用として計上することになります。この処理の方がシンプルです。




国際会計基準では固定資産の減価償却等の処理を税法と同じやり方で済ますことができなくなる可能性が高いと思います。

国際会計基準、中小企業向け国際会計基準、それぞれの内容を理解して戦略的な固定資産管理を行なっていく必要があるのではないでしょうか。



2009年7月31日金曜日

中小企業向け国際会計基準は日本の会計基準に似ている!?

7月にIASB(国際会計基準審議会)からIFRS for SMEs(中小企業向け国際会計基準)が公表されました。これは国際会計基準から複雑な処理を減らして簡略化したもので、中小企業でも適用できるように配慮されています。



今回は中小企業向け国際会計基準の中から、無形資産の取り扱いについて特徴的な点を3つご紹介したいと思います。



①研究開発費は全額費用処理



国際会計基準では研究開発費のうち、要件を満たしたものは無形資産として計上することが必要です。
しかし、この要件の検討は手間がかかるので、中小企業向け国際会計基準ではその手間を省き、費用処理に統一しています。
ちなみに日本の会計基準では研究開発費は原則費用処理されています。



②すべての無形資産を償却する



国際会計基準では無形資産を償却期間があるものとないものに分け、償却期間があるものについては償却を行います。
この振り分けも煩雑なので、中小企業向け国際会計基準ではすべての無形資産を償却するものとしています。また、償却期間が分からない場合は10年で償却を行います。
日本の基準ではそもそも無形資産を償却期間があるものとないものに分けるという考え方をしません。



③のれんを償却する



②で触れたように、中小企業向け国際会計基準ではすべての無形資産を償却するので、のれんも償却することになります。のれんは国際会計基準では償却しませんが、日本の基準では償却を行います。この差異はよく知られている有名な論点です。



これら3つの取り扱いは国際会計基準を簡便にした処理として規定されていますが、日本の会計基準に似ています。
つまり、日本で国際会計基準が上場会社に適用された場合、その子会社等でこのような日本で従来から行われている処理をそのまま採用できる可能性があります。
日本の会計基準に慣れている私たちにとってとても興味深いところです。





2009年7月25日土曜日

国際会計基準の簡略版がある?:中小企業向け国際会計基準

7月9日にIFRS for SMEs (small and medium-sized
entities)が公表されました。



国際会計基準は非常に複雑な処理や詳細な情報開示が求められます。このような会計基準に対応できるのは大企業で、中小企業にしてみれば、とても対応できるものではないし、そもそもそれだけ厳密な処理をする必要もない、ということで中小企業向けに簡略版IFRSが作られ
たわけです。




経済統合が進められているEU内では非上場の中小企業であっても複数の国にわたって活動している企業はたくさんあります。

現在EU内ではそれぞれの国が独自の会計基準を持っているので、これらを中小企業向け国際会計基準で統一して処理できるというのはメリットがあるでしょう。




また、自国で会計基準の開発が進んでいない新興国では上場企業は国際会計基準で、その他の企業は中小企業向け国際会計基準を適用するという実務が浸透していくのではないかと思います。




では、日本にはすでに日本の会計基準ありますし、影響はないのでしょうか。




日本の企業でも適用の余地がありそうです。

といっても、上場会社については規模の大小にかかわらず、採用することが禁止されているので、上場会社は適用できません。

しかし、

国際会計基準を適用している会社の子会社等で非上場会社の場合は適用できるということになっています。

中小企業向け国際会計基準は国際会計基準で定められている複雑な処理を簡略化したり省略したりしています。基準書のボリュームも250ページ程度と少ない(国際会計基準の基準書すべてと比べれば、ですが)です。負担は軽くなります。




日本企業も国際会計基準の対応を進めることが必要になってきていますが、企業グループの方針をたてる上で検討する価値があるのではないでしょうか。




2009年7月16日木曜日

金融危機が国際会計基準を変える:債権評価の新手法

IASBは6月25日にIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂について意見の募集を行うことを発表しました。



国際会計基準の金融商品会計は複雑すぎるという批判があり改訂の論点が多いのですが、今回は金融商品の損失処理が焦点になっています。



現行の国際会計基準では債権等について回収の見込みに問題があるといえるような客観的な事実が発生した時に回収が見込めない分を損失処理するものとしています。



この回収可能性に問題があるといえるような事実が発生した時、
という基準が、
現実にどのようなタイミングになるのか分かりにくい、とか、
問題があるといえる状況になるまで損失計上を待っているとかえって評価が甘くなる、とか、
批判されているのです。
特に世界的な金融危機が起きて企業の財政状態が急速に悪化したことにより、債権等の評価が今まで以上に重要な論点として検討課題になったようです。



ちなみに日本の会計基準では債権等について似たような規定があります。日本では債権等を債務者の財政状態や、経営成績等に応じて回収可能性を見積もり、回収が見込めない分を損失を計上します。
債務者の財政状態に問題が生じているという状況になったタイミングで損失を計上するという点については現行の国際会計基準と似ています。



それでは、国際会計基準は現在どのような改訂案が出ているのでしょうか。



見積キャッシュフロー法(expected cash flow approach)と呼ばれているもので、将来のキャッシュフローを見積もり、割引計算をすることで現在の価値にするものです。割引計算というのはファイナンスの分野ではおなじみの手法で、国際会計基準では現在の価値を求めるためによく使われています。



将来のキャッシュフロー、いついくら回収できるか、という見積りの中に貸し倒れのリスクを反映させていくので、今までのように一定の事実が発生するまで何もしない、ということにはなりません。



簡単に言ってしまいましたが、貸し倒れのリスクを評価し、計算するのはそれなりに手間のかかる作業になることが予想されます。
どの程度コストがかかるか、実務的に実行可能なものなのか、という点についてIASBは意見を求めています。



日本ではそもそも債権等については額面、受け取る金額で計上しています。割引計算で現在の価値に置き換えるということをしないので、日本の会計基準とはかなり考え方が異なっています。



国際会計基準は経済情勢の影響を受けながら、様々な議論を経て改訂されていきます。経済情勢の動向と共に、会計のあるべき姿というものも変化しているのです。



2009年7月15日水曜日

blog open

こんにちは。イージフの野口といいます。公認会計士として財務会計コンサルティングを担当しています。



以前は仕事でも米国会計基準に接することが多かったのですが、ここ数年は国際会計基準に触れることの方が多くなりました。現場では解釈を巡って四苦八苦していましたが、国際会計基準の重要性が非常に高くなっていることを感じています。



さらに、日本でも国際会計基準の適用される方向性が見えてきました。
世界的には国際会計基準への収斂という流れがありましたが、今まで日本はその流れに対して後ろ向きな印象でした。





日本のコンバージェンスプロジェクト(日本の会計基準と国際会計基準の差異をなくそうとするプロジェクト)でも、日本の会計基準に国際会計基準の内容を合わせるような改正をしつつ、日本の考え方や慣行を配慮した独自性を残しています。



つぎはぎだらけ、いいとこどり、という部分もあったと思います。
しかし、これからは日本には日本のやり方がある、という姿勢は通用しなくなりそうです。



国際会計基準の動向を紹介しながら、国際会計基準とは何か、考えていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。