2009年7月31日金曜日

中小企業向け国際会計基準は日本の会計基準に似ている!?

7月にIASB(国際会計基準審議会)からIFRS for SMEs(中小企業向け国際会計基準)が公表されました。これは国際会計基準から複雑な処理を減らして簡略化したもので、中小企業でも適用できるように配慮されています。



今回は中小企業向け国際会計基準の中から、無形資産の取り扱いについて特徴的な点を3つご紹介したいと思います。



①研究開発費は全額費用処理



国際会計基準では研究開発費のうち、要件を満たしたものは無形資産として計上することが必要です。
しかし、この要件の検討は手間がかかるので、中小企業向け国際会計基準ではその手間を省き、費用処理に統一しています。
ちなみに日本の会計基準では研究開発費は原則費用処理されています。



②すべての無形資産を償却する



国際会計基準では無形資産を償却期間があるものとないものに分け、償却期間があるものについては償却を行います。
この振り分けも煩雑なので、中小企業向け国際会計基準ではすべての無形資産を償却するものとしています。また、償却期間が分からない場合は10年で償却を行います。
日本の基準ではそもそも無形資産を償却期間があるものとないものに分けるという考え方をしません。



③のれんを償却する



②で触れたように、中小企業向け国際会計基準ではすべての無形資産を償却するので、のれんも償却することになります。のれんは国際会計基準では償却しませんが、日本の基準では償却を行います。この差異はよく知られている有名な論点です。



これら3つの取り扱いは国際会計基準を簡便にした処理として規定されていますが、日本の会計基準に似ています。
つまり、日本で国際会計基準が上場会社に適用された場合、その子会社等でこのような日本で従来から行われている処理をそのまま採用できる可能性があります。
日本の会計基準に慣れている私たちにとってとても興味深いところです。





2009年7月25日土曜日

国際会計基準の簡略版がある?:中小企業向け国際会計基準

7月9日にIFRS for SMEs (small and medium-sized
entities)が公表されました。



国際会計基準は非常に複雑な処理や詳細な情報開示が求められます。このような会計基準に対応できるのは大企業で、中小企業にしてみれば、とても対応できるものではないし、そもそもそれだけ厳密な処理をする必要もない、ということで中小企業向けに簡略版IFRSが作られ
たわけです。




経済統合が進められているEU内では非上場の中小企業であっても複数の国にわたって活動している企業はたくさんあります。

現在EU内ではそれぞれの国が独自の会計基準を持っているので、これらを中小企業向け国際会計基準で統一して処理できるというのはメリットがあるでしょう。




また、自国で会計基準の開発が進んでいない新興国では上場企業は国際会計基準で、その他の企業は中小企業向け国際会計基準を適用するという実務が浸透していくのではないかと思います。




では、日本にはすでに日本の会計基準ありますし、影響はないのでしょうか。




日本の企業でも適用の余地がありそうです。

といっても、上場会社については規模の大小にかかわらず、採用することが禁止されているので、上場会社は適用できません。

しかし、

国際会計基準を適用している会社の子会社等で非上場会社の場合は適用できるということになっています。

中小企業向け国際会計基準は国際会計基準で定められている複雑な処理を簡略化したり省略したりしています。基準書のボリュームも250ページ程度と少ない(国際会計基準の基準書すべてと比べれば、ですが)です。負担は軽くなります。




日本企業も国際会計基準の対応を進めることが必要になってきていますが、企業グループの方針をたてる上で検討する価値があるのではないでしょうか。




2009年7月16日木曜日

金融危機が国際会計基準を変える:債権評価の新手法

IASBは6月25日にIAS第39号「金融商品:認識及び測定」の改訂について意見の募集を行うことを発表しました。



国際会計基準の金融商品会計は複雑すぎるという批判があり改訂の論点が多いのですが、今回は金融商品の損失処理が焦点になっています。



現行の国際会計基準では債権等について回収の見込みに問題があるといえるような客観的な事実が発生した時に回収が見込めない分を損失処理するものとしています。



この回収可能性に問題があるといえるような事実が発生した時、
という基準が、
現実にどのようなタイミングになるのか分かりにくい、とか、
問題があるといえる状況になるまで損失計上を待っているとかえって評価が甘くなる、とか、
批判されているのです。
特に世界的な金融危機が起きて企業の財政状態が急速に悪化したことにより、債権等の評価が今まで以上に重要な論点として検討課題になったようです。



ちなみに日本の会計基準では債権等について似たような規定があります。日本では債権等を債務者の財政状態や、経営成績等に応じて回収可能性を見積もり、回収が見込めない分を損失を計上します。
債務者の財政状態に問題が生じているという状況になったタイミングで損失を計上するという点については現行の国際会計基準と似ています。



それでは、国際会計基準は現在どのような改訂案が出ているのでしょうか。



見積キャッシュフロー法(expected cash flow approach)と呼ばれているもので、将来のキャッシュフローを見積もり、割引計算をすることで現在の価値にするものです。割引計算というのはファイナンスの分野ではおなじみの手法で、国際会計基準では現在の価値を求めるためによく使われています。



将来のキャッシュフロー、いついくら回収できるか、という見積りの中に貸し倒れのリスクを反映させていくので、今までのように一定の事実が発生するまで何もしない、ということにはなりません。



簡単に言ってしまいましたが、貸し倒れのリスクを評価し、計算するのはそれなりに手間のかかる作業になることが予想されます。
どの程度コストがかかるか、実務的に実行可能なものなのか、という点についてIASBは意見を求めています。



日本ではそもそも債権等については額面、受け取る金額で計上しています。割引計算で現在の価値に置き換えるということをしないので、日本の会計基準とはかなり考え方が異なっています。



国際会計基準は経済情勢の影響を受けながら、様々な議論を経て改訂されていきます。経済情勢の動向と共に、会計のあるべき姿というものも変化しているのです。



2009年7月15日水曜日

blog open

こんにちは。イージフの野口といいます。公認会計士として財務会計コンサルティングを担当しています。



以前は仕事でも米国会計基準に接することが多かったのですが、ここ数年は国際会計基準に触れることの方が多くなりました。現場では解釈を巡って四苦八苦していましたが、国際会計基準の重要性が非常に高くなっていることを感じています。



さらに、日本でも国際会計基準の適用される方向性が見えてきました。
世界的には国際会計基準への収斂という流れがありましたが、今まで日本はその流れに対して後ろ向きな印象でした。





日本のコンバージェンスプロジェクト(日本の会計基準と国際会計基準の差異をなくそうとするプロジェクト)でも、日本の会計基準に国際会計基準の内容を合わせるような改正をしつつ、日本の考え方や慣行を配慮した独自性を残しています。



つぎはぎだらけ、いいとこどり、という部分もあったと思います。
しかし、これからは日本には日本のやり方がある、という姿勢は通用しなくなりそうです。



国際会計基準の動向を紹介しながら、国際会計基準とは何か、考えていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。