2009年9月28日月曜日

変わり続ける国際会計基準に対応する

IASBでは国際会計基準のプロジェクトが多数進行しています。
IASBで2011年までのスケジュールが公表されていますが、公表が予定されている基準書だけでもかなりの数になります。



新しい会計基準が公表されるまでには正規の手続があります。
国際会計基準の作成に誰もが意見を言う機会が与えられ、
「民主的」な手続を踏むことになっています。
国際会計基準が特定の団体や国の意向に偏ることなく、
多くの国々に受け入れられる会計基準として機能するために重要なものです。
具体的な手続は以下のようなものになっています。



(1)計画が策定され、プロジェクトが発足。
(2)リサーチが行なわれ、討議のためのたたき台を公表。
   討議文書で複数の案を公表し、
   企業や会計士等に意見を求めます。
(3)意見をもとに公開草案を作成、公表。
   公開草案に対しても広く意見を求めます。
   反対意見が多いと、確定基準書を公開草案の内容から
   変える場合もあります。
(4)確定基準書の公表。 



このように広く意見を求め、様々な角度から審議が行なわれていくので、基準書の作成はそれなりに時間がかかります。



日本企業は早くて2015年に国際会計基準の適用が必要となりますが、その準備を進めるにあたって国際会計基準の審議状況は注意しなくてはなりません。
現在の国際会計基準が2015年までに変わってしまうことあるからです。



今年中に公開草案が出る基準書については公開草案でおおよその改訂内容が分かるので、対応は無理なく行なえると思います。
しかし、来年以降に公開草案が出るようなあまり審議が進んでいないものについては注意が必要になるでしょう。
注意すべき分野は主に以下のものがあります。



<金融商品会計>
いくつものプロジェクトが進行しています。
金融危機等の影響から改訂作業が急ピッチで進められています。
金融資産の分類や評価、ヘッジ会計等については多くの日本企業が影響あると思います。
負債の測定における信用リスクのプロジェクトは特に社債等を発行している企業は注意が必要です。
負債と資本の区分も審議中で新株予約権付社債等の会計処理に影響を与える可能性があります。



<退職給付会計>
まだプロジェクトのスケジュールも定まっていませんが、今後4年以内に大幅な改訂がなされる予定です。
数理計算上の差異が即時認識されることなど、
暫定的に合意されている項目だけでもインパクトの大きい改訂となることが想像できます。



<リース会計>
公開草案の公表は2010年の予定です。
リース取引をオフバランスできる場合がほとんどなくなる可能性があるようです。



その他にも収益認識についての基準書も2010年に公開草案が公表される予定です。
売上取引を分解して収益認識するような難解なモデルが検討されているようです。
しかし、物品やサービスの受渡しと顧客が債務を認識するタイミングがあまりずれることのない通常の取引であれば、影響は少ないのではないかと考えられます。



今後の改訂の動向は追ってまたご紹介したいと思います。



2009年9月14日月曜日

企業業績への大きなリスク:国際会計基準の年金会計

企業から従業員に支払われるお金というとまず最初に頭に浮かぶのは月々の給与ですが、
給与以外で企業が従業員に対する給付も企業にとってかなりの負担となります。
例えば、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)は従業員への医療費負担が経営破綻の引き金になったと言われています。
従業員が退職してから死亡するまでの医療費はかなりの額になりますが、GMでは企業が負担する額(約320億ドルあったとも言われています)を予め費用計上していなかったということです。



従業員への退職後の給付をどのように費用計上し、財務諸表に反映させていくかということは非常に重要な問題です。



現在国際会計基準審議会(IASB)では年金等の退職後給付について審議を進めており、会計処理が大幅に変わることになりそうです。



現在の年金会計では、
将来から長期にわたって支払うことになる年金債務や年金資産を計算で見積もって、見積額をベースに処理をします。
見積りと実際の額の差異については
毎年多少の差異は誤差として放っておきます。
誤差の幅をコリドー(回廊)と言います。
毎年多少差が出ても長期にわたってみればその変動もプラスマイナスゼロになるだろうという考えを前提としているのです。



しかし、その多少の差異、つまりコリドーを出てしまった分については
何年か年数をかけて少しずつ償却して認識することになります。
つまり、年金の資産や債務に変動があってもその差異は長期にわたって償却するので
企業の業績に与える影響はある程度抑えられていました。



ところが、現在IASBではこの考え方をやめようとしています。
コリドーや償却をやめて、差異のすべてを即時認識することが暫定的に合意されたのです。
そうなると、例えば金融危機で年金資産の価値が大幅に減ってしまった場合、その目減り分が損失として計上されることになります。
これはかなりのインパクトで企業業績が年金の運用次第で大幅に変わってしまう状況が予想されます。



ただ、まだ審議の途中なので決まっていないことも多くあります。
その1つに、計上方法があります。
当期損益に反映させるべきか、その他の包括利益とするべきか、というところで議論が分かれています。
これは企業の収益をどのように見せるべきかという根本的な問題にもつながります。



国際会計基準の改正は日本の会計基準にも影響を与えます。
日本企業もIASBの審議に注目していく必要があるでしょう。
今後の動きについてはまたご紹介していきたいと思います。



2009年9月7日月曜日

国際会計基準を巡る攻防:G20の提言を受けて

日米欧と新興国等20の国と地域が参加する財務相・中央銀行総裁会議(G20)では今年の4月にIASBに対して、国際会計基準の改訂が促進されるよう提言しました。




世界的な金融危機により、財務報告の透明性、説明責任の重要性が増して、国際会計基準の役割はより大切になっています。

その一方で、これも金融危機の影響なのですが、不利な影響を受けることを嫌って国際会計基準に対する反対圧力も強くなり、国際会計基準の改訂がはかどっていない状況です。

規定の重要部分を骨抜きにしたり、政治家が自国の自治権を主張したり、という欧米を中心とする国々の要求が通ってしまっているようです。




特に、金融商品会計に関連する議論ではアメリカなど各国の意見がまとまらない状況です。

主な争点の1つが有価証券等の時価会計です。




現在、有価証券等は




有価証券を売買して値上がり益を得ることを目的とするのか、

満期まで持ち続けて利息を得ることが目的なのか、

株式等を持つことによって経営を支配することが目的なのか、




といった具合に保有する企業の目的によって評価の仕方が変わってきます。

そして、保有目的によっては時価評価しなくてもよいことになります。




この保有目的別の処理も改訂の検討課題になっています。

これまでは時価会計をより幅広く適用する方向で議論が進んできましたが、

今回の金融危機では金融商品の時価評価の結果多額の評価損を計上したために信用危機に拍車をかけたと考える政治家も多く、反対圧力が強く議論が難航しています。




そこでこの国際会計基準の改訂議論の停滞を打破するためにG20から提言が出され、議論を後押しすることになったのです。

とはいえ、各国がG20での合意を受けて動くかは微妙で、

ここでもやはりアメリカの動きが注目されます。

アメリカは国際会計基準の導入を決定したものの、まだ導入時期については明言を避けています。

国際会計基準とは距離を置いていますが、一方、IASBに対する資金の拠出は一番多く、状況を複雑化させているということもあるようです。




そこで日本の対応は、というと

国際会計基準への影響力はほとんどない、

自国への国際会計基準の導入もアメリカのやり方を追随する、

という状態です。

日本国内だけでなく、世界の状況に目を向けないと

企業会計の将来は分からなくなってきていると思います。