2009年12月22日火曜日

2010年の国際会計基準はどうなるか

国際会計基準の適用にあたってよく耳にする言葉で
ムービングターゲット、という言葉があります。



国際会計基準自体が改訂され、動き続けるものなので
それを目指して基準を合わせていくのは難しい、ということです。



今年は国際会計基準の改訂がいろいろありました。
主なものとして、
関連当事者の開示(IAS24)
金融商品会計(IAS39からIFRS9へのリプレイス)
IFRSの初度適用の免除措置の追加(IFRS1)
中小企業向け国際会計基準(IFRS for SMEs)
がありました。



その他にも金融商品に関連した改訂がありました。



2008年と2009年はかなりの数の改訂がありました。
2007年は借入費用のみ、
2006年はセグメントのみ、
という状況と比べると
最近の改訂がいかに多いか、ということがよく分かります。



そして、この2年ほどの改訂では金融商品関係の改訂が
非常に多いのが特徴です。
これは金融危機の影響を受けています。



来年以降はどうでしょうか。



2010年に改訂が予定されているプロジェクトには、
連結
認識の中止
金融商品会計(減損、ヘッジ会計)
廃止事業
などがあります。
まだまだ金融商品関係が優先された計画になっています。



2011年になると
金融商品関係だけでなく、
退職給付
リース
収益認識
などの改訂が予定されています。
特に退職給付やリースについては
かなり議論が分かれているところです。
例えばリースでは、ほとんどのリース取引について
資産を計上することが検討されています。
どのような改訂になるか今後の動向が注目したいと思います。



そこで、2011年が過ぎれば国際会計基準の改訂は
落ち着くのかというと
そうはならないと考えられます。



現在の経済環境は変化が速くなっています。
経済環境が変われば、会計基準も変わらざるを得ないと思います。
例えば、リース取引自体がない時代であれば、
リースの会計基準も必要なかったわけですし、
現在のように
あまりにもオフバランス処理されているリースが
盛んに行なわれるようになると、
これでいいのか、実態に即した処理になっているのか、と
問題提起されるわけです。
また、会計基準の設定には、実務上の要請や、政治上の駆け引き(あまり好ましくありませんが)もあります。



国際会計基準はまだまだムービングターゲットであり続けるでしょう。
しかし、逆に改訂のプロジェクトが発足していない基準書は
動かないのです。
ムービングターゲットであるのは、
国際会計基準の一部だということも知っておくべきです。



2009年12月16日水曜日

勉強会のご案内 IFRS対応講座入門編『IFRSであなたの会社はどうなるのか』

今日は勉強会のご案内です。



Insight NOWでIFRSの勉強会を開催します。



Insight NOWの勉強会は非常に面白い試みです。
通常のセミナーなどは一方的な講義が中心ですが、
この勉強会は
参加者が自分の会社のIFRSとの差異を分析したり、
ディスカッションを通じて
IFRSを深めたり、実務対応の問題を考えたりします。



実際、ただIFRSの基準書の内容を知るというだけでは
なかなか自社の課題は見えてきません。
また、基準書を知るといっても
個別論点ばかり追ってしまって全体的な理解が足りないこともあるようです。



そこでこの勉強会では
IFRSの根本にある考え方を理解する、
自社の問題に引きつけて考えてみる、
ということを参加者の皆さんと一緒にやってみようと思っています。



1月14日(木)から週1のスケジュールで全4回です。
ご興味のある方はInsightNOWのサイトからお申し込みください。
https://www.insightnow.jp/communities/id/52



2009年12月14日月曜日

すべてを時価評価する公正価値オプションとは:IFRS第9号金融商品

国際会計基準では
有価証券やデリバティブなどすべての金融商品を時価評価し
変動を当期の損益に計上する公正価値オプションが選択肢として
認められています。



これは日本の金融商品会計にない規定です。



ただし、
国際会計基準でもやみくもに何にでも公正価値オプションを認めているというわけではありません。
特定の場合のみに選択することができます。
現行のIAS第39号では
以下の3つの場合に公正価値オプションが認められています。
(1)会計上のミスマッチが生じている場合
(2)会社が公正価値で管理を行なっている場合
(3)組込みデリバティブである場合



(1)の会計上のミスマッチとは公正価値評価を行わないと不都合が
生じる状態のことです。



例としてはリスクをヘッジするつもりで行なっている取引で
ヘッジ会計を適用していない場合があります。
本来はヘッジ会計をしたいところなのですが、
ヘッジ会計には取引の事前、事後に
いろいろな手続を行なうことが必要で、非常に面倒です。
そのような手続を行なわなくても公正価値オプションを選択して、
ヘッジ会計と同様の効果を得ることができるということです。



この例だと、公正価値オプションは非常に便利に感じられますが、
選択には注意しなくてはならないことがあります。
公正価値オプションは一度選択したらやめられないということです。
ヘッジ会計の場合は会社の意図により途中でやめることができます。



(2)は会社の意図を重視している規定です。現行のIAS第39号では
金融商品を保有する会社の目的、意図が重視されていました。



この(2)は、新しく公表されたIFRS第9号ではなくなっています。
保有目的を重視するのではなく、
金融商品の性質、会社のビジネスモデルを重視する立場に
変更されたからです
(詳しくは、前々回の記事をご参照ください)。



(3)は組込みデリバティブについて
区分処理に対する選択肢として、全体を公正価値で評価することを
認めるものです。



この(3)もIFRS第9号ではなくなっています。
なぜかというと、
IFRS第9号で区分処理は要求されなくなったからです。



つまり、
現行の基準では3つの場合に
公正価値オプションが認められていましたが、
新しい基準では「会計上のミスマッチ」の場合に
公正価値オプションを使えるということになります。



ここで1つ疑問に思うのは
公正価値オプションがあるのなら、
ヘッジ会計はいらないのではないか、ということです。
ヘッジ会計の指定を行なうために文書や管理体制を整備し、
ヘッジの有効性を定期的に評価するのは非常に面倒です。
それなら公正価値オプションで済ませてしまいたいということに
ならないでしょうか。



ヘッジ会計は現在審議中で改訂されることになっています。
来年早々にも公開草案が出る予定なので、
こちらの動向にも注目していきたいと思います。



2009年12月7日月曜日

株式の売却益は当期利益ではない?:IFRS第9号金融商品

国際会計基準審議会(IASB)が公表したIFRS第9号では、金融資産の分類と測定について新しいルールを定めています。



前回の記事で紹介しましたが、
有価証券やデリバティブなどの金融資産は、
償却原価で測定するものと公正価値で測定するものの2つに
分類して評価を行います。



この分類方法に従うと
株式はすべて公正価値で測定するものに分類されることになるので、
毎期末に株式を時価評価してその変動額は当期の損益となります。



ここで、日本で問題になったのが
いわゆる持ち合い株式です。
現在の日本基準で持ち合い株式は
「その他有価証券」という分類を用いて時価の変動額を
損益に計上せず純資産に直接計上する方法がとられています。



持ち合い株式の時価の変動を当期の損益に影響を与えることがなかったのですが、
今回のIFRS第9号が日本で適用されれば、
持ち合い株式で毎期の損益が大きく変動してしまうことになります。
日本にとっては受け入れられないものでした。
日本では経営者の意思決定とは関係なく損益が変動することに抵抗があるのだと思います。



そこで「日本版改訂」ということで、
企業が指定した株式に限って
時価の変動を当期利益ではなく「その他包括利益」に計上するという選択肢が追加されました。



企業はこの選択を自由に行なうことができます。
しかし、一度指定してしまうとやめることはできません。
またその株式の配当は当期の利益となりますが、
売却してもその損益を当期損益に計上することはできません。
売却損益も「その他包括利益」に計上します。



その他包括利益に計上していたものを
あるタイミングで純利益に計上することをリサイクリングといいます。
現行の日本基準での考え方では持ち合い株式も
経営者の意思決定により売却すればそこでその株式に対する投資の成果が確定し、



確定した損益として当期利益に反映することになります。





IASBの審議を見ていると
そもそもこのような発想をする国がないようです。
損益というものはすべていつかは確定したものとして当期利益に反映されるべき、ということではなく、
当期損益も含めた包括利益という大枠を中心に捉えている



ということになると思います。



この日本版改訂を重要視しているのは日本だけのようです。



2009年12月1日火曜日

金融商品会計の新基準書:IFRS第9号の公表

2009年11月になって国際会計基準審議会(IASB)は
新しい基準書を公表しました。
IFRS 9 Financial Instrumentsです。
金融商品会計の中でも最も改訂が早く取り組まれていた、
金融資産の分類と測定について大幅に取り扱いが変わりました。



金融資産の分類と測定というのは
債権や有価証券、デリバティブなどをどのような金額で評価し計上するか、
という問題です。金融機関に限らずすべての企業に関係してくる重要な話です。



この新しい基準書で最も特徴的な点は、
金融資産の保有目的による分類を廃止したということです。



従来の国際会計基準や現行の日本基準では
保有目的によって金融資産を分類して
分類毎にその目的にあった評価を行うことになっています。
例えば、トレーディング目的で保有しているものはその時価の変動が
投資の成果として分かるように、
時価で評価して評価差額は当期の損益に計上します。
また、満期まで保有して利息を受け取る目的であれば、
時価で評価はせずに償却原価といって実効金利で割り引いた金額で計上します。



改訂後の分類方法ではそのような保有目的による分類を行ないません。
目的ではなく
①企業のビジネスモデル、と
②金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特徴
の要件によって、
償却原価で測定するものと公正価値で測定するものの2つに分類します。



①の企業のビジネスモデルの要件とは
企業がその金融資産を保有し、契約上の元本と利息を回収するための管理を行なっているか、ということです。
保有目的では経営者の意図が重要でしたが、
ここでは事実関係、に焦点が当てられることになります。
また、この判定は企業レベルで行なうものでもなく、金融商品単位に検討するわけでもありません。



どのような単位で検討するかは企業の判断に任されています。
例えば、ポートフォリオ単位で管理を行なっているのであればポートフォリオ単位で判断することになると思います。



②の要件は金融資産そのものがどのようにキャッシュ・フローを生み出すかを検討することになります。
金融資産を保有することによって、契約上、特定の日に元本と利息を回収することができるのであれば、この要件を満たすことになります。



これらの2つの要件を満たしたものが償却原価で測定されることになります。



例えば、通常の貸付金などは従来の基準と同じように償却原価で測定されることになります。
また株式やデリバティブなどはキャッシュ・フローが分かりませんので公正価値で測定することになります。



今回の改訂で金融資産の分類と測定は非常に簡素化されました。
しかし、すべてがこの分類だけで処理できるわけではありません。
それぞれの測定方法について任意で選択できる会計処理も用意されています。



その選択肢については次回ご紹介したいと思います。