2010年7月31日土曜日

「現場で使えるIFRS導入の実務」(日本実業出版社)刊行のお知らせ

















今日は書籍の紹介です。

この度、弊社ITコンサルタントの石井との共著でIFRSの実務書を刊行しました。

「現場で使えるIFRS導入の実務」というタイトルです。

本書は、経理部門を中心とした「現場の視点」で「経営層」「SIer」「コンサルタント」「担当監査人」「各現業部門」「子・グループ会社の経理部門」という関係者とともに、具体的にどのようにプロジェクトを進めていくか解説しています。

IFRS導入への課題は、会計処理、業務変更、システム対応、内部統制への対応と、非常に範囲が広いのですが、プロジェクトにまつわるすべての工程を時系列に沿って説明しています。

IFRSが適用されるまでに、いつ何をしなければならないのか、読者の方々に具体的イメージを持っていただくことが狙いです。

IFRSは日本の会計基準に慣れている私たちにとって理解しづらい会計基準です。そのようなこともあり、これまでのIFRS関連書籍は基準書そのものの解説に焦点を当てているものが多かったと思います。

本書はその基準を適用していく上でより実践的な課題とその対処法を取り上げています。IFRSの知識がなくても理解できるように平易な解説を心がけました。各企業の実務担当者の方々がIFRSに取り組む際に、本書が足がかりになればと思います。

本日7月30日の日本経済新聞朝刊2面に書籍の広告を出していただきました。

Amazonでは取り扱いが始まっており、一般書店でも並び始めているということです。是非ご覧いただければと思います。

よろしくお願いします。

「現場で使えるIFRS導入の実務」目次

序章 IFRS導入以前に、最低限知っておくべき基礎知識

第1章 IFRS導入の影響と導入工程を把握する

第2章 調査・計画段階① 0か月目  プロジェクトチームの立ち上け

第3章 調査・計画段階② 1か月目  各差異分析の立案と実施

第4章 調査・計画段階③ 4か月目 方針とスケジュールの作成

第5章 計画実行段階① 7か月目 会計方針の決定と文書化

第6章 計画実行段階② 10か月目  新業務の定義、システムの改修、規程の改訂

第7章 計画実行段階③ 7~30か月目  トライアル実施と開始貸借対照表の作成

第8章 IFRS体制構築後の運用監視段階

第9章 各業務・システム設計におけるポイント①

    ~販売業務、購買・生産業務、資産管理業務

第10章 各業務・システム設計におけるポイント②

     ~財務管理業務、人事管理業務、決算業務



2010年7月26日月曜日

IFRSの収益認識:新アプローチで製品保証の処理が変わる

��010年6月に国際会計基準審議会(IASB)より公表された収益認識についての公開草案は、収益の処理について包括的な基準を定めることを目標としています。そこでは新しいアプローチが提案され、個々の会計処理にさまざまな影響を与えられると考えられています。新しいアプローチについてはこちらの記事を参考にしてください。

今回は新しいアプローチによると製品保証はどのように扱うのか、考えてみたいと思います。
よく製品を購入したときに一定期間の製品保証がサービスとして受けられたり、別途オプションとして保証を受けられたりすることがあります。家電製品を買った時のことを考えていただけると分かりやすいかもしれません。従来の国際会計基準の考え方では製品保証により将来提供する保証サービスを引当金として計上することになっていました。しかし、新しいアプローチでは製品保証を引当金とする考え方はしません。

今回の公開草案では、製品保証を2つのタイプに分けます。
①企業が顧客に製品を引き渡す前にすでにあった不具合が引き渡してから見つかった場合
②顧客に引き渡した後に顧客が製品を使用したことにより不具合が発生した場合
①の場合では、そもそもきちんとした製品が顧客に引き渡されていなかったことになるので、製品の引渡し、という当初企業が果たすべき義務が果たされていなかったと考えます。
②の場合は、①と違って製品の引渡しという義務自体は履行されています。しかし、引渡し後の不具合に対応するという別の義務を企業が負っていると考えることになります。

このように2つのパターンに整理されましたが、どちらの場合も共通することがあります。製品を引き渡した時に企業が負っている義務の一部が履行されていないということです。新しい収益認識のアプローチでは企業の顧客に対する履行義務が果たされた時に収益を認識します。そこで、どちらのパターンであっても、製品保証については収益を認識せず、保証サービスの提供に伴って認識することになります。

公開草案の例をもとにもう少し具体的に説明します。
製品を引き渡した時には販売価格全部を売上として計上しません。例えば、1,000円の製品を1,000個販売し、その製品には90日間の保証期間がついているとします。
従来ならば1,000x1,000=1,000,000円
が売上になります。
しかし、新しいアプローチでは過去の実績から1%が保証サービスにより交換することになる部分を見積もります。たとえば、保証サービスにより返品されるのが1%と見積もられた場合、1,000個のうちの1%である10個分の
1,000x10=10,000円
は売上として計上しません。
1,000,000-10,000=990,000円
が販売時の売上になります。この売上に計上されていない10個分は企業の棚卸資産として計上し続けます。実際の保証期間が終了したときに売上となります。

このように個々の取引を照らして考えてみると、新しい収益認識のアプローチはさまざまな影響があります。他の影響についても引き続き考えていきたいと思います。

2010年7月12日月曜日

IFRSの新しい収益認識アプローチ

��010年6月に国際会計基準の収益認識について公開草案が公表されました。
これまではIAS第18号「収益」やIAS第11号「工事契約」といった基準書によって売上の処理が定められていましたが、新しい公開草案に置き換わることになります。

日本での国際会計基準適用を考える上で「売上を計上するタイミングが変わる可能性がある」というトピックは重要な問題としてよく挙げられているので、ご存知の方が多いと思います。
日本の会計基準では売上の計上は特に明文化された基準がなくそれまでの慣行に従って決めていることが多いのですが、国際会計基準では計上の要件が定められているため、この要件に照らすと従来の日本の慣行が認められなくなるのではないか、ということが問題とされていたのです。

今回公表された国際会計基準の公開草案では、この要件についても従来のものから変更されています。

従来のIAS第18号では重要なリスクと経済的便益が買い手に移転しているかを重要視していました。つまり、物の占有や所有権の移転などによって収益を認識することになるのが一般的ということになります。そこで物品の販売では出荷時ではなくて先方の検収時に収益を認識すべき場合があると指摘されています。しかし、ただ単純に所有権の移転時に収益認識をしなければならない、というわけではありません。あくまでも取引の実態を総合的に考えて判断することが必要となるので一律に出荷基準が否定されているわけではないのです。

今回の公開草案ではリスクと便益ではなく、支配の移転を重視します。新しいアプローチでは以下の手順で収益を認識します。

1.顧客との契約を識別する
2.顧客への履行義務を独立して識別する
3.取引価格を決定する
4.取引価格を各履行義務に配分する
5.各履行義務を果たした時点に配分された取引価格を収益認識する

1.契約の識別では文書での契約だけでなく口頭や黙示の契約も含めて考えることになりますが、多くの場合は1つの契約書をもって識別することになると思います。

しかし、2.履行義務の識別では1つの契約から複数の履行義務を分けることになる場合もあります。例えば、物品の販売で、顧客に引き渡した後に発生した故障についての製品保証を行なう場合がありますが、これは製品の引渡しとは別の独立した履行義務となります。

3.取引価格の決定では、実際に販売により回収できる金額が取引価格となります。多くの場合が契約上の販売価格となる場合が多いと考えられますが、貨幣の時間価値や顧客の信用リスクにより調整が必要となることがあります。

このように新しいアプローチでは履行義務を別個に把握することが特徴となっています。個々の履行義務が果たされ、物やサービスが実際に顧客の支配となったタイミングで、実際に受け取ることができる金額を収益として認識することになります。

結局のところ、現実の取引に照らして新しいアプローチによりどれだけ収益の認識方法が変わるか、というのが気になるところです。なかなかアプローチを説明しただけでは判断が難しいと感じられる方が多いと思いますが、多くの取引については現行のIAS第18号における処理と大きく変わらないのではないかという印象を受けます。

しかしながら、一部の取引については影響が出る場合があると考えられます。どのような影響が考えられるかは次回取り上げていく予定です。