2010年8月27日金曜日

「現場で使えるIFRS導入の実務」Amazon国際会計カテゴリ1位獲得

7月末に日本実業出版社から刊行いたしました「現場で使えるIFRS導入の実務」がついにAmazonの国際会計カテゴリで1位を獲得しました。


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ありがとうございます。

企業の経理部門、システム部門などの担当者の方、監査法人の方やコンサルティング会社の方などいろいろな方に読んでいただけているようです。

実際にこの本の対象となっている読者の方に手に取っていただけて非常にうれしく思います。正直なところ、この本は実務書なので、IFRS関連書籍の中でも気軽に読めるムックや、やさしい入門書などより敷居が高いと思っていました。このような実務書になるとそれほど買っていただけないのではないか、という気持ちもありました(著者としては売れてほしいのですが)。

しかし、入門書の次に読むような本書にこれだけ反響があるということは、それだけ多くの人にとってIFRS導入への関心が非常に高いということだと思います。

IFRSについて否定的な見方をする方も多くいらっしゃいますが、本当の問題点というのは実際に企業での適用が進まないと見えてこないと思います。IFRSにはもっと大きな問題があるかもしれません。世界の中で見たら日本の動きは少し遅れ気味ではないでしょうか。本書が多くの企業でIFRS導入に向けて動き出すことを後押しできればと思います。

まだ本書をご覧になっていない方、書店でも扱っていますので是非手に取ってみてください。

Amazonのリンクはこちらからです。

よろしくお願いします。



2010年8月23日月曜日

IFRS 工事進行基準廃止による新たな課題

国際会計基準審議会(IASB)が2010年6月に公表した新しい収益認識に関する公開草案では、あらゆる取引について統一した収益認識のアプローチを提案しています。現行のIFRSではIAS第18号が収益認識の一般的な基準書となっていますが、その他にもIAS第11号では工事契約について別の収益認識の基準が定められています。現行の規定では、通常の物品の販売などはIAS第18号により物品が相手先に移転した時に収益を認識しますし、建設業などではIAS第11号により工事進行基準による収益認識を行なってきました。

今回の改訂ではこれらの基準書が統一されるので、IAS第11号は廃止され、それにより工事進行基準も廃止することが提案されています。そもそもIFRSでは原則主義を基本としている以上、例外事項はできるだけ排除することが望ましいと考えられています。例外事項をたくさん設けてしまっては結局細則主義と同じことになってしまうからです。収益認識についても工事契約だけ特別扱いして別の規定を作ることは不必要なことであるというのがIASBの意見です。

では、工事進行基準を廃止するのなら、工事契約についてはすべて工事完成基準を適用しなければならないのか、非常に活発な議論がこれまで行なわれてきました。新しい収益認識のアプローチでは、履行義務を識別しその義務が果たされ支配が移転する時点に注目して収益を認識します(このアプローチの考え方についてはこちらの記事を参考にしてください)。工事契約にあてはめると、工事が完成して建物を顧客に引き渡したときに支配が移転すると考え、やはり工事完成基準を適用するのではないか、とも考えられますが、IASBによるとこれは必ずしもそうではない、と明言しています。

取引の実態を検討してみると、工事契約は「支配が継続的に移転」しているといえる場合があり、そのような継続的な移転においては例えば工事の完成度合い、インプットの投入度合い、時間の経過などを基準とした収益認識をすることになるということなのです。つまり、工事進行基準に限りなく近い方法で収益認識を行なうことになります。

このような方法で収益認識を行なうにはどのような条件をクリアしておくことが必要なのか、主に以下のようなポイントがあります。
・法的な権利を顧客が有しているか 
・顧客が追加コストを負担するか
・顧客が建物を物理的に所有しているか

法的な権利関係については、たとえば顧客の所有地で工事を行なっている場合はその上に建つ建物も一体として顧客のものと考えらています(この考え方は、イギリスのなどの法概念に基づいているようです)。
物理的な所有については、たとえ法的な所有権を有していなくても顧客の土地上の建物であれば、物理的な所有をしていると考えられることになります。

新しいアプローチは非常に概念的で実務上の適用が難しいのですが、工事進行基準からの変更はとても重要な問題ですので、慎重な検討が必要です。
ちなみに今回の記事はKPMGの解説を参考にしています。より詳細な内容に興味のある方はこの解説もご覧ください。

2010年8月7日土曜日

「現場で使えるIFRS導入の実務」好評いただいています

7月末に刊行いたしました「現場で使えるIFRS導入の実務」(日本実業出版社)はおかげさまで好評いただいています。ありがとうございます。

書店を回ってみたのですが、丸善本店では2ヵ所に平積みにしていただいていました。紀伊國屋書店南口店でも平積みしていただいています(写真は紀伊國屋書店南口店です)。




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Amazonでも好評発売中です。レビューありがとうございます。

日本経済新聞の7月30日の2面に広告も出していただきました。


日経広告

ブログでは
■財務アナリストの雑感■ シーズン3
■CFOのための最新情報■ 
の著名なブロガーの方が取り上げてくださいました。ありがとうございます。
どちらのブログも以前から読ませていただいていたので、本当にうれしいです。

今書店ではIFRS関連本が非常にたくさん出ています。自分が本を出すことになるまで書店を見て回ることgがなかったので、この状況には正直驚きました。


私がIFRSに取り組むようになった当初は海外大手会計事務所が出している解説本の翻訳くらいしかなかったように思います。どうやってIFRSの勉強をしてきたのかと聞かれることがあるのですが、私の場合は、IFRSの基準書そのものやIASBのホームページで公表されている文書が基本で、それに海外の大手会計事務所のニュースレターくらいしか参考となるものがありませんでした。そこから得られた情報を日本企業の問題として考えていくわけですが、やはり判断が必要とされる基準書なので自分一人の考えでは心もとないことがあります。そういったときに、書籍はまとまった形で考え方を知ることができるので役立てられると思います。

「現場で使えるIFRS導入の実務」については、IFRS導入のプロジェクトいかに進めるべきか、ということに焦点を当てているので、IFRSについてのあらゆる問題に回答できているわけではありません。もう少し踏み込んでほしいところ、などもご意見いただいています。しかし、今はたくさんの書籍が出ているのでいろいろな本を見て参考にするのがいいのではないかと思います。
私の本がIFRSに関する議論を深めるきっかけとなれば幸いです。
ご興味がある方は是非手に取ってみてください。よろしくお願いします。


2010年8月2日月曜日

ソフトウェアビジネスとIFRSの収益認識

2010年6月に国際会計基準審議会(IASB)が公表した国際会計基準(IFRS)の新しい収益認識基準についての公開草案では、企業がいつ、いくらの売上を計上するのか、統一的な基準を定めています。この公開草案ではあらゆる取引に共通するアプローチを提供しています。(アプローチについてはこちらの記事を参考にしてください。)ただし、この統一されたアプローチは原則を定めているに過ぎません。実際の企業活動はさまざまで、個々の取引についてどのように適用すればいいのか判断に迷うところです。


今回はソフトウェアについて考えてみたいと思います。ソフトウェア、コンテンツといった形がないものについての会計処理は伝統的な会計の考え方をそのままあてはめるのが難しく、近年の会計ではこのような無形のものをどのように扱うのかが重要な問題と考えられています。

新しいIFRSのアプローチに従うとソフトウェアのライセンスが排他的であるかどうかがポイントとなります。
例えば、ソフトウェアの経済的耐用年数全期間にわたって排他的な権利を顧客に与える場合、これは知的財産の販売と考えます。顧客に権利を付与した時点に売上を計上することになります。
現実にはこのような場合よりも経済的耐用年数よりも短い期間の使用許諾の方が多いと思います。この場合は、その権利が排他的か否かによって処理が変わってきます。排他的な権利である場合は、履行義務は時間の経過とともに果たされていくと考えるので、時間の経過に伴って売上を計上します。
排他的でない権利である場合は、履行義務は使用許諾の付与のみに関連すると考えます。顧客が使用許諾が得られた時点で売上を計上することになります。

ちなみに、日本の会計基準では「研究開発費等に係る会計基準」の中にソフトウェアについての会計処理が定められています。また売上の処理については、「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」が参照されることが多いと思います。
現行の日本基準では、使用許諾が排他的であるか否かという判定が求められていません。この判定により売上の計上基準が変わる可能性があります。

IFRSを実際に適用していくにあたっては判断に迷うところがたくさんあるのですが、ソフトウェアライセンスなどの知的財産権についてはIFRSの適用が難しい分野の1つだと思います。