2010年10月19日火曜日

IFRSセミナーのお知らせ(10月〜12月開催)

今回はセミナーのお知らせです。10月から12月にかけてセミナーで講演させていただきます。一般に参加募集を行なっているものから順番にご紹介します。


 



  • 第4回CGSAセミナー2010


中央大学国際会計研究科主催のIFRSセミナーです。「IFRSの導入に向けての事業会社の取り組み」と題して、すでに企業の第一線でIFRSに取り組んでおられる実務家の方にこれまでの経験や課題などをお話いただけます。アガットコンサルティングの武田さんとともに、コンサルタントととして、それらの課題の解決策に迫っていきたいと思います。


私も今から非常に楽しみにしているセミナーです。


日  時:2010年12月4日(土)
時  間:13:30~15:00
場  所:中央大学市ケ谷田町キャンパス
参加費:無料
定  員:70名 (先着順)


お申し込みは中央大学HPよりお願いいたします。


 



  • IFRSと監査法人の視点、コンサルタントの視点


こちらはアビタスで開催されるセミナーです。IFRS対応には監査人やコンサルタントとの協力関係が不可欠です。今回はそれぞれの視点から見るIFRS対応の課題を解説します。新日本有限責任監査法人のシニアパートナー大和氏をお招きし、IFRSに対する監査法人の視点を解説していただきます。コンサルタントの視点については、私が担当させていただきます。新しい収益認識基準を取り上げて原則主義の適用ポイントを実例を挙げて考えていこうと思っています。


日  時:2010年11月17日(水)
時  間:14:00~16:30
場  所:アビタス八重洲校
参加費:5,000円(IFRSコンソーシアム会員は無料)
定  員:80名 (先着順)


お申し込みはIFRSコンソーシアムHPよりお願いいたします。


 



  • 与信管理・販売管理におけるIFRSの影響


IFRSの影響というといろいろな切り口ですでに語られてきていますが、与信管理や販売管理については基準書改訂が控えているので、何が起きるのかきちんと把握できていない方がおおくいらっしゃいます。このセミナーでは最新のIFRSの動向を踏まえ、与信管理や販売管理の担当者が知っておくべきIFRSを解説します。経理担当でない方の参加も歓迎しています。難しい用語を使わないように平易な解説を心がけますので、ご期待ください。


日  時:2010年10月28日(木)
時  間:13:30~15:00
場  所:TKP大手町カンファレンスセンター EAST カンファレンス6
※このセミナーはリスクモンスター会員限定のセミナーとなっており、一般募集は行なっておりません。


お申し込みはリスクモンスターHPよりお願いいたします。


 


IFRSのセミナーはかなりの数が開催されていますが、私のセミナーではできるだけ実例などを交えながら現場で使える情報を発信していきたいと考えています。参加者の皆様からの質問も大歓迎です。充実したセミナーにしたいと思います。よろしくお願いします。



2010年10月18日月曜日

日本企業が知っておくべき中国のIFRS事情

いろいろな企業の方とお話してもっともよく聞くIFRS対応の懸念点というのは、連結グループ会社での対応をどのように進めるかという問題です。海外に盛んに進出している企業はもちろんのことですが、主に国内でビジネスを展開している企業であっても中国などアジア地域に子会社を保有しているケースはよくあります。しかし、現地の会計がどのようになっているかは把握しきれていないことが多いようです。今回はこの近くて遠い中国の会社の場合を取り上げてみたいと思います。

まず、海外のグループ会社のIFRS対応上重要な課題は主に以下の2点にあります。中国固有の事情を含めて順に解説していきます。

・会計方針の統一
会計方針の統一についてはIFRSベースで親会社と合わせることになりますので、現地での会計処理をきちんと指導しなくてはなりません。中国では2007年に公表された新企業会計準則によってIFRSとのコンバージェンスが進んでいます。その点では日本よりも対応は進んでいるといえます。したがって、現地の会計基準で記帳している中国のグループ会社はほとんどIFRSに従った会計処理ができていると考えている方も多いと思います。

しかし、新企業会計準則は上場会社など一部の企業が強制適用となっており、それ以外の企業は旧企業会計準則を適用できます。日系の中国企業は必ずしも新企業会計準則を適用しているとは限りませんので注意が必要です。

日本の親会社は現地の企業が新基準と旧基準のどちらを採用しているのか、実際にどのような会計処理を行なっているのかを把握しなければなりません。

・決算期の統一
IFRSでは原則としてグループ会社の決算期は親会社と統一しなくてはなりません。ただし、実務上不可能である場合は、3ヶ月までの決算期のずれが認められています。
日本企業は3月決算が多いのですが、中国では決算期は12月と法律上決まっているため中国の本決算は変更することができません。そこで中国のグループ会社については何らかの対応が必要となってきます。

多くの場合、仮決算を行なうことが必要となり、3月にもう一度決算を行なうことになります。グループ会社側で人員体制を整備することができればいいのですが、必ずしも現地企業には十分な人材が揃っているとは限りません。これまでは12月から3月の期間を利用して中国のグループ会社は決算に余裕を持つことができたわけですが、仮決算ではそのような余裕はなくなります。決算の早期化も視野に入れた対応が必要となってきます。

現地で対応が難しい場合は、親会社で連結処理上の修正を行なうといった方法もあります。この場合でも修正の基礎資料は現地から提出してもらう必要があるのでやはり現地での負担が生じることになります。

その他にも、このまま3ヶ月のずれを維持することも1つの方法ではあります。しかし、これは実務上不可能な場合に限られるので、まずは原則的な方法を検討しておく必要があるでしょう。1つ注意しておきたいのは「実務上不可能な場合」というのは企業固有の事情を検討することになるので、他社事例で中国の会社が仮決算ができているからといって自社においても同じ対応をしなくてはならないというわけではないということです。決算期の異なる企業が一律にすべて仮決算を行なうことになるとは限らないのです。

また、3ヶ月のずれを放置しておくとその期間に発生した重要な変動の調整や、連結処理の親子会社間取引の差異分析などの手続が面倒になります。そのような点も考慮した上でどのような対応が一番効率的か考えるべきです。

海外のグループ会社に対する管理が十分にできていないと感じている企業は意外と多いという印象を受けます。早い段階から密接にコミュニケーションを取ることが円滑な対応につながると思います。




2010年10月12日火曜日

IFRSで激変する利益と日本の平準化した利益

近年のIFRSの改訂は様々な分野に及んでいます。これらの改訂により企業の業績の見え方は大きく変わってきています。特に利益の見え方は大きく変化しています。

日本の会計では利益というと営業利益、経常利益、当期利益と段階別に表示します。営業利益というのは会社のビジネスによる利益であり、売上から売上原価や人件費や減価償却費などを差し引いて計算します。経常利益はそれに本業のビジネス以外の損益を加えます。支払利息や受取配当金など財務上の損益がここで考慮されます。さらに、臨時、例外的な特別損益を加えたものが当期利益です。臨時、例外的な損益というと、固定資産の売却やリストラ費用など毎期継続して発生しない項目が含まれます。このような利益の表示方法は日本独特のもので、IFRSや米国基準にはないものです。

一般的に、企業で、損失はできるだけ下の項目(特別損失として当期利益にのみ含める)に区分して営業利益や経常利益を平準化するという傾向があります。

また日本基準ではこれらの利益計算に含まれない項目もあります。代表例がその他有価証券の評価差額です。その他有価証券というのは株式など有価証券の会計上の分類の1つで持ち合い株式が主にあてはまります。そのような株式はたとえ時価が上がったり下がったりしても、売るつもりもないのに持っているだけで利益や損失を計上するのはおかしい、と日本基準では考えます。そこでこれらの投資を時価評価したときの評価差額は損益として計上しません。

このように企業は利益を平準化するのが望ましいとこれまで考えてきていましたし、日本の会計基準自体も利益を平準化する考え方で規定が定められています。

そもそも例に挙げたその他有価証券の会計処理もIFRSや米国基準を参考に決められたものなので、従来はIFRSでも利益を平準化することが重要視されていました。しかし、近年はこのような考え方は採用されていないのです。以下にその例を挙げます。

①有価証券の評価差額
IFRSでも日本基準と同じような考え方のもと有価証券の時価の変動部分を利益計算から除外していました。しかし、新しい金融商品会計では原則時価評価する有価証券などの変動額はすべて損益とする改訂がなされました(その他包括利益に計上することもできます)。

②退職給付
退職給付は従来の未認識項目がその他の包括利益として利益計算に含まれることになりました。これまでは数理計算上の差異のうち、一部を毎期償却するという処理が行なわれていましたが、退職給付債務の変動がそのまま利益に影響することになります。

これらの例によく表れていますが、IFRSでは企業のビジネスがうまくいっているのかということより、株式市場などマーケットの状況で企業の利益は大きくぶれることになります。企業にとってはコントロールが難しい要因で利益が大きく動くことになるので必ずしも望ましいとは言えないかもしれません。しかし、現在財務諸表の利用者(投資家)から求められている情報とはそういう要因もそのまま含んでいる利益なのです。マーケットのリスクにさらされているなら、それをそのまま伝えてほしい、当期にあった事態をそのまま示してほしい、ということなのです。

IFRSにより利益は大きく変わります。実態を反映する会計基準とは何なのか、改めて考えなくてはならないと思います。



2010年10月4日月曜日

概念フレームワークに見るIFRSの感覚と日本の感覚の違い

IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)は共同で財務諸表の概念フレームワークの改訂を進めています。段階的に改訂を進めていく予定になっており、2010年9月に最初のフェーズが完了しました。これで、財務諸表の概念フレームワークの中でも、一般的に利用される財務諸表の目的、と有用な財務情報の質的特性が新しいものに置き換わりました。

財務諸表の概念フレームワークというのは、他のIFRSの基準書とは違って、企業がどのような会計処理をしなければならないとか、どういう情報を開示しなければならないとか、ルールを定めているわけではありません。あくまでガイドです。しかし、IFRSの各基準書はこの概念フレームワークに沿って個々の規定を定めているわけで、概念フレームワークがIFRS全体の思考を支えてるのです。

IFRSを考えるとき、どうしても基準書に定められている個々の基準書の内容に注目してしまいがちですが、概念フレームワークが何を定めているのかということは、IFRSの本質を知る上で重要です。IFRSが日本の会計基準と全く違う思考のもとに成り立っていることを考えるとおろそかにはできないところです。

今回は、その新しい概念フレームワークの中に、IFRSについての議論で見落とされがちなポイントがありますので紹介します。それは重要性、という考え方です。日本の会計でも企業会計原則の中で重要性の原則が出てきます。重要性の乏しいものについては本来の厳密な処理をしなくても簡便的な方法でよい、ということです。特に私たちにとっても新しいものではありません。

概念フレームワークの中では、その情報が省略されたり間違って報告されたりした場合、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えるかどうかという観点で重要性を規定しています。また、重要性というのはその情報の質的、量的側面から企業が個別に判断するものとしています。したがって、このような企業個別の事情については基準書の中で考慮することはないし、画一的な重要性の基準値を設けるようなこともない、ということになります。

IFRSに基づいた会計処理を考えるとき、なぜか「出荷基準は認められない」「減価償却の定率法は認められない」「子会社の決算期は絶対親会社と統一しなければならない」と画一的に語られてしまうことが多いように思います。確かに、基準書には原理原則しか書いていないのでそれをそのままあてはめれば、そのような議論になってしまいがちだと思います。しかし、そのような基準書の原則は個別の企業の事情を敢えて考慮しない、それは各自が判断すべき、という概念フレームワークに基づいてのものなのです。このような画一的な議論ばかりでは判断を誤ってしまいかねません。

IFRSについて、概念フレームワークなどIFRSの大枠の考え方に触れることで、個別論点はもっと柔軟に考えることができると思います。このようなIFRSの考え方を身につけることが一番重要なことです。