2011年12月20日火曜日

IFRS概念フレームワークのおさえるべきポイント

イージフの野口です。
IFRSを考えるにあたって、概念フレームワークを一度おさえておきたいと考える方は多いと思います。概念フレームワークというものは直接適用されるものではありませんが、すべての基準書がこのフレームワークに則って作られることになるわけですから、その考え方をきちんと理解しておくことが、基準書を適用する時にも本来であれば必要であるわけです。しかし、直接適用されるものではないため、常日頃から参照するような位置づけではなかなか読めません。存在自体を忘れて個々の基準書の記載内容だけ追いかけて考えてしまいがちなので、一度だけでもきちんと見ておくべきだと思います。



今回は2010年9月に改訂された財務諸表の目的、有用な財務諸表の質的特性に着目します。



財務諸表の目的
概念フレームワークによると、そもそも財務諸表の目的は、既存の、潜在的な投資家、貸付者、及びその他の債権者による報告企業の価値の見積りに役立つ情報を提供することです。改訂前では投資家保護が全面に打ち出されていましたが、現在は債権者も強調されています。債権者であっても、投資家と同様に、企業の将来のキャッシュ・フローの見通しに関する情報を必要としている点では同じであり、これまでのフレームワークのスタンスが大きく変更された、というわけではないと思います。また、企業の将来の見通しに役立つ情報提供が目的なのであって、企業の価値を示すわけではない、ということを明言しています。IFRSの資産負債アプローチを強調するあまり、純資産=企業の価値というイメージが強いかもしれませんが、IFRS自体は純資産が企業の価値そのもの、という考え方をしているわけではないのです。

有用な財務情報の質的特性
概念フレームワークでは、有用な財務情報の質的特性を基本的な質的特性と補強的な質的特性の2つに分けています。
基本的な質的特性とは、関連性、忠実な表現、の2つです。関連性というのは、財務諸表利用者の意思決定に違いをもたらすことを言います。意思決定に関係がない情報というものははじめから扱う必要がないのです。関連性は重要性の問題でもあります。利用者の意思決定に影響を与えない情報は重要性もありません。しかし、この重要性というのは企業の固有の関連性の問題ということになります。重要であるか否かは、その項目の性質や規模などによって異なるからです。重要性は画一的定量的な基準では定めることはできないとされています。



また、忠実な表現というのは、完全性、中立性、誤謬がないことを意味しています。ここで、誤謬がないということは完全に正確であることではないとしています。たとえば、価値の見積りを行なった場合、それが完全に正確であるかどうかは分かりません。絶対に正しいことは証明しようがありませんが、その見積りのプロセスや性質、限界が適切に説明されていれば、それは忠実な表現となりうるとしています。
基本的な質的特性を備えていなければ有用な財務情報となりません。一方、この基本的な質的特性を補強する特性があることも概念フレームワークでは説明されています。



補強的な質的特性は、比較可能性、検証可能性、適時性、理解可能性の4つです。この中で、特に比較可能性については、一貫性と画一性との違いについて説明されています。一貫性というものは比較可能性を達成する上で役立つものであり、一貫性自体が補強的な質的特性ではありません。したがって、同じ項目について同じ方法を用いること自体が重要ではないのです。また、画一性については、似ていないものを似ているようにみせることにつながるとして、比較可能性を補強するものではないとしています。



概念フレームワークでは、これらの質的特性と同時にコスト制約についても触れています。情報の提供にはコストがかかります。概念フレームワークでは、このコストが情報を報告することの便益により正当化されることが重要であるとしています。何でも情報提供すればいいというわけではないのです。また、基準書内では、このコストと便益については財務報告一般に関連して考慮しているのみであり、統べての企業において同じ報告に関する規定が必ずしも正当化されないとしています。企業の規模の違いや資本の調達方法、利用者のニーズの違い等により異なることが適切な場合があるのです。



このようにみてみると、概念フレームワークには、基準書の適用について判断を行なう際のヒントがあるように思います。特に、質的特性としての関連性、コスト制約などは実務においても忘れてはならない視点ではないでしょうか。


野口由美子



2011年12月5日月曜日

FRSと業績管理

イージフの野口です。
IFRSは日本では連結財務諸表のみに適用されることが予定されています。したがって、個別財務諸表では日本基準となります。
個別と連結で会計基準が違う状況でどのように業績管理を行なっていくか。IFRS適用にあたっては避けられない問題になります。

外部報告としては連結の数値が重要視されるのですから、外部報告と業績管理をリンクさせていくにはIFRSベースでの業績管理を行なっていく必要があります。外部に公表される財務数値と違うものを業績管理に使っていると、社内の管理資料をもとにプラスになる意思決定を行なっても、IFRSベースになるとマイナスの影響をもたらすという結果になるかもしれません。しかし、その一方で、IFRSでは公正価値による測定を重視するために、市場の動向による利益変動が非常に大きく、また、従来の日本基準での利益概念と異なる考え方をとっているため、業績管理には向いていないのではないか、と考えられる場合もあります。

基本的に業績管理に使われる管理会計は各社によって、さまざまな方法があるため、一概にIFRSではこうすべき、という方法があるわけではありません。IFRSのもとでどうするのがよいのか、各社が答えを見つけることになります。

海外ではどうなのか。ICAEWの調査(EU implementation of IFRS and the Fair Value Directive)EUでは、IFRS適用後にIFRSベースで業績管理を行なうようになった企業が69%に及んだと報告されています。しかし、そのように業績管理を変更した企業のうち、IFRSベースでの内部の業績管理は有効か、という質問に対しては48%が有効であるとしているものの、一方で31%が有効でないと答えています。IFRSが社内の管理にそもそも適していないのか、まだ管理手法が確立されていないのか、いろいろな意見が想定されますが、IFRSのもとでの業績管理は先行している海外企業でも試行錯誤しているのではないかと思います。

しかし、IFRSを適用する企業のメリットは、グループ全体の業績管理がより高度化できるところにあると思います。一般的に適用のメリットとしては、海外での資金調達が容易になることや、比較可能性の向上なども挙げられますが、本来、一番のメリットは業績管理にあるのではないでしょうか。

IFRS適用にはコストがかかり、そのコストに見合ったものを社内に残そうとするのであれば、やはり業績管理の高度化を目指すしかないと思います。先ほど紹介したICAEWの調査というのは2007年に公表されたもので少し古いのですが、より最近では、EUの企業でも、2005年の強制適用には間に合わなかったものの、IFRSベースでの業績管理の高度化や業務の効率化を目指して、グループ全体での業務改革を進めているという話を聞きます。具体的には、大幅なシステムの刷新等によりグループでIFRSベースの業績管理を行なうというものです。このような業績管理の高度化を達成した企業においては、IFRS適用のメリットを実感しやすいのですが、逆に単なる制度対応で終わった企業では、特にメリットを感じることができないのではないかと思います。

IFRSの理念としては、財務諸表は投資家に必要な情報を提供するためにあり、そこで報告される数値というものは、企業が投資家の利益になるように行動するため企業内部でも利用されるものであるはずです。現在の実務ではまだその方法は確立されているものではないのですが、すべての上場企業が取り組まなくてはならない課題だと思います。


 


野口由美子



2011年11月21日月曜日

「現場で使えるIFRS導入の実務」への質問

イージフの野口です。


「現場で使えるIFRS導入の実務」を読んでくださった方から質問をいただくことがあり、できる限り答えさせていただいています。今回はその中の1つをこのブログでも取り上げてご紹介したいと思います。


質問


IFRSにおける加重平均法とグループ会社の会計方針との関係について


棚卸資産の評価に親会社は移動平均法を、子会社は月次平均法を、また別の子会社は四半期平均法を採用しているものとします。それぞれの会社が違う平均法の計算を採用している場合であっても、会計方針を統一していると言えるのでしょうか。


IFRSでは、all inventories having a similar nature and useにthe same cost formulaを使用するものとする
となっています。weighted average cost formulaには、on a periodic basis, or as each additional shipment is receivedによる計算が含まれています。したがって、連結グループ内で、違う平均法を採用しようとも、全ての棚卸資産についてthe same cost formulaを使用していると言ってよいと思うのです。なぜならば、IFRS上において、cost formulaにはFIFOかweighted averageを使用することとなっており、親会社が移動平均法、子会社社が月次平均法や四半期平均法を採用しようとも加重平均法(weighted average cost formula)を採用しているためです。
しかしながら、depending upon the circumstances of the entityに着目すると、the entityがグループ全体
のことを言っているならば、on a periodic basis, or as each additional shipment is receivedによる計算はどちらかに統一しなければならないと読むような気もします。”or”と書いてあり、”and/or”にはなっていないためです。
細かいことを言えば、移動平均法、月次平均法、四半期平均法では、大きく期末棚卸資産の評価金額が異なる場合があり、IFRSはそれも認めてしまうのか疑問に思うわけです。


回答


これはIFRSにはっきり書いていないですし、実は悩ましい問題です。


IFRSは、そういうはっきりしない部分が多いと思います。

ご質問の中にあるように原文にあたって、その意義から判断するしかないと思います。

回答としましては、正しくもあり、覆される可能性もある、というところです。


実際には監査法人がどう考えるか、ということになってしまうと思います。 

平均法が月次でも四半期ごとでも加重平均法であるのだから同じである、ということもできますし、

すでにご指摘にあるように評価結果が変わってしまうなどの影響があるので月次なら月次に統一しなければならないとも考えられます。

実務的には、この辺りの重要性を監査法人がどう考えるか、ということになってくると思います。

海外では棚卸資産の計算がかなり大雑把な場合もあって、そこまで統一していないケースもあるようです。

逆にシステムからマニュアルからすべてグループで同じものになっているので、統一されているということもあります。

一口にIFRS適用といっても実務はかなり幅があるというのが現実だと思います。

実務では、IFRSをいかに解釈して会社の実態にあてはめたのかを説明できることが重要なのです。

本の中ではあまり詳しく触れられませんでしたが、大切な問題だと思います。質問をくださった方にこの場を借りて感謝いたします。

野口

 



2011年10月31日月曜日

IFRSにおける固定資産の減価償却の傾向

イージフの野口です。
IFRSについてよく質問で聞かれるトピックは固定資産です。特に減価償却については、製造業を中心に大きな影響がある可能性もあることから気になる方が多いようです。

国内もしくは業界の傾向等が聞かれることが多く、例えば定額法が主流になるといったような、多くの企業が同じ処理を適用することになることを想定しているのだと思います。ある程度、同じ業種の企業間では会計処理の傾向が似てきて一定の傾向が出てくることがありますが、それほど画一的にはならないと思います。

確かにEUの企業を見てみると、減価償却については定額法を採用している場合が多いように感じます。しかし、そういう一定の傾向があったとしても、それをそのまま採用するわけではなく、実際に固定資産の減価がどのように起きているのか、検討することが必要なのです。同じ業種の企業であっても、固定資産の使用計画や環境が同じとは限りません。そのような実態を踏まえて各社でルールを取り決めておくことが必要なのです。実際にEUでの話を聞くと、他社事例より、各社がどのように捉えるかということを重視するということでした。

日本の会計基準は細則主義であるので、実際の適用においてある程度画一的であると考えられますが、最近導入された会計基準については適用に各社でばらつきがあるという指摘も聞きます。例えば、資産除去債務に関する会計基準は比較的最近適用になりましたが、金額的な影響にかなり差があったようです。これは、実際に資産除去債務として企業が負担する義務の大小というだけでなく、資産除去債務を合理的に見積もれるか、見積もれないとするかの判断に違いがあったのではないかという指摘もあります。判断の違いにより会計処理が変わってくる、という状況はすでに、日本基準の範疇でも起きています。

最初に紹介した、日本国内の減価償却の傾向についての質問に対する答えとしては、「特定の傾向はない」といっておきたいのですが、日本では、「できるだけ税法の処理と同じにしたい」という意識が強く働いて、定率法等、税法基準と同じ処理が多くなる可能性はあると思います。固定資産の減価償却方法の決定は、重要な事項なので、慎重な検討は不可欠なのですが、これまでの日本基準においても、経済的実態と大きな乖離がないものとして認められてきたわけですから、一律に否定されるものでもないと考えられます。実際に、今後増えてくるであろうIFRS任意適用会社の中には、定率法の適用といった税法基準を踏襲した処理を採用している事例も出てくるのではないかと思います。

どのように考えたらいいか、いろいろ同業他社の傾向など参考にしたいところですが、あくまでそのような情報は参考に過ぎないということなのです。最終的には各社で判断するというところが、IFRSの難しいところであり、また、柔軟なところでもあると思います。


 


野口由美子



2011年10月18日火曜日

流れには逆らえない‐IFRSの時代

イージフの松岡です。


前回に引き続きIFRSの識者のインタビュー記事を紹介したいと思います。


今回は、IFRS財団の評議員を務めている島崎憲明氏です。IFRS導入のアプローチについて以下のように述べられています。


 



“「強制適用=何でも受け入れる」ということではありません。そのようなことはどの国もやっていません。EU(欧州連合)はIFRSをアドプションしましたが、IFRS第9号はいまだにエンドースしていません。強制適用してもフリーハンドなのです。個々の基準については使い勝手がいいように直してほしいと交渉をすればいいのです。しかも日本はそのような交渉ができる立場を確かなものにしつつあります。”


 



大臣発言以前は、日本でのIFRS適用について0か1かという思い込みがありました。IFRSがアドプションされ日本基準にとってかわりIFRSが強制適用される、と理解されていました。


しかし、島崎氏の発言にもある通り強制適用といってもIFRSのすべてをそのまま受け入れる必要はないのです。どの基準を承認して適用させるかは、各国に任されているのです。国際的に単一の基準に統一するというIFRSの目的には反しますが、各国が主権を維持できることもIFRSが多くの国で受け入れられることとなった要因のひとつでしょう。


 


さらに重要なのは、日本がIFRSの改定について意見を言える立場にあるということです。日本はIFRS財団やIASB等の主要ポストを持ち、IASB初の海外サテライトオフィスが東京に設置されるなど、IFRSに対する影響力は決して小さくありません。他のアジア諸国がこの地位を狙っています。


日本は、これまで築き上げてきた立場を無駄にせず真の国益は何かを考えて行動しなければなりません。IFRSが世界標準になるというのは時代の流れなのですから。


 


松岡 佑三


 


IFRS財団 島崎氏「2012年中にIFRSにコミットを」



2011年10月5日水曜日

IFRS反対派の論拠に反論

イージフの松岡です。


今回は日本の会計基準の国際化に尽力されてきた山田氏の記事を紹介したいと思います。元IASB理事の山田辰巳氏は、IFRS反対派が主張する2つの論点について反論しています。




「そもそも会計制度は、国における歴史、経済文化、風土を踏まえた企業の在り方と深いかかわりがある。」


という主張に対して、山田氏は日本のビジネス慣習とのミスマッチを指摘する声は多いが、IFRSが考えている取引形態と違う取引形態が(国内に)あるというケースはまれであると反論しています。



仮に、日本とアメリカではまったくビジネスのやり方が異なるというのであれば、会計制度も文化の違いがあって然るべきですが、そういう時代ではないでしょう。


アメリカ発祥の新しいビジネスモデルもすぐに日本に持ち込まれるし、逆もまた然りです。日本企業もグローバル市場に打って出ないことには成長ができない時代となったことを認識すべきです。



「IFRSは金融業に適切で、製造業には向かない」


という主張に対して、山田氏はIFRSが製造業に向いていないという話は世界で聞いたことがないとし、有形固定資産や無形資産を公正価値で測定するという議論は、これまでIASBで1度も行われていないと反論しています。




IASB理事を10年間務めた人の言葉だけに重みがあります。世界で聞いたことがないと言われればぐうの音も出ませんね。IFRSは製造業に向かないという意見は、一見もっともらしく聞こえますが、実態は空虚だということですね。



松岡 佑三

「IFRSは製造業に向かない」を元IASB理事が検証



2011年9月27日火曜日

業種別IFRSの解説-コンテンツ産業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回はコンテンツ産業を取り上げます。

コンテンツ産業といっても、出版、音楽、映像、ゲームなどいろいろな情報内容を扱う業態があります。ここでは映画を取り上げ、IFRS導入の課題を考えてみたいと思います。

コンテンツ産業は、これまでの日本基準での取り扱いがあまり明確となっていない分野で、主に税法の基準に従った処理が行なわれている場合が多いようです。
映画というコンテンツの場合、映画の製作は1つのプロジェクトとして一定期間内に収益を上げなくてはならないビジネスですが、映画作品としてはその期間を越えて収益が発生します。そして、映画は著作権でもあります。このような特徴からいかに収益や費用を認識すべきかということが問題になります。

費用認識
費用認識をどのように行なうかということは、映画製作をどのような形態で行なっているのか契約を検討する必要があります。

配給会社などが映画を買い取る場合等は、収益認識の基準書に照らして考えることになります。製作中の映画の支配が配給会社に継続的に移転していると考えられる場合、製作の進行に応じた費用の認識が必要となります。

一方、社内で映画製作を行ない配給まで行なうような形態の場合は、映画製作のコストは無形資産として認識すべきかが問題となります。この場合、製作費用が将来の収益獲得が可能であれば無形資産となります。多様な費用が無形資産となり得ると考えられます。

借入費用
映画製作には膨大なコストがかかることもあり、借入費用の資産化が必要となるケースがあると考えられます。借入費用については、日本基準では特に規定はありませんが、IFRSでは適格資産の取得にかかる借入費用を資産計上する必要があります。

適格資産とは、その資産が想定する販売、使用が可能な状態になるまで相当の期間を要する資産のことで、映画製作を無形資産計上する場合、適格資産に該当する場合が多いと考えられます。

無形資産の償却、減損
映画製作費を無形資産計上した場合、償却や減損の手続を経て費用となります。
償却については、法律上の権利期間だけでなく、将来にわたって経済的な便益の発生を加味しなければなりません。また、償却方法や償却期間については毎期の見直しが必要となります。

減損については、IFRSでは減損の兆候が幅広く捉えられています。たとえば、以下のような状況が減損の兆候に該当すると考えられます。
・製作スケジュールの大幅な遅れ
・上映館数が予定よりも減少
・制作費の不足が発生
・実績の収益が当初の計画に達成しない
映画製作段階から配給に至るまで収益管理をしっかり行い、それを減損の検討にも整合させるように体制を整えておく必要があると思います。

収益認識
映画の製作形態にはさまざまなものがあります。映画の配給だけを行ない、収入の一定割合を収入とするような形態である場合は、純額の収入を収益認識する場合が多くなると思います。
また、近年は特に映画会社1社だけではなく、複数の企業が関わる形で製作が進められる場合が非常に多くなっています。法的主体も製作委員会(組合)やファンドなどいろいろあります。

どのような支配を行なっているかによってIFRS上の取り扱いが変わってくることになります。たとえば、製作委員会の場合は、特定の企業等が意思決定することができないケースが多いと考えられ、ジョイントベンチャーとして検討する必要があります。ジョイントベンチャーである場合、「共同支配の営業活動」「共同支配の資産」「共同支配企業」の3つの形態に分類して処理することになります。共同支配企業と判定される場合は基本的に持分法の適用が必要となります。

ここでは映画会社を例に挙げて考えてみましたが、コンテンツ産業については従来の日本の会計慣行とIFRSの考え方がかなり違う部分があります。収益や費用の認識等ビジネスに直結した課題も多いので、社内の管理体制と合わせて対応することが必要だと考えられます。


 


野口由美子



2011年9月13日火曜日

業種別IFRSの解説-ソフトウェア業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回はソフトウェア業を取り上げます。

収益認識
ソフトウェア業においても大きな検討課題となるのが、収益認識です。ソフトウェアの取引はさまざまな形態があり、取引形態ごとに慎重な検討が必要となります。

IFRSでは、収益認識について履行義務アプローチという考え方を新たに採用しています。企業が顧客に対して義務を履行した時点に収益認識を行なうという考え方です。そこで、契約としては1つの取引であっても、複数の履行義務が識別された場合、その履行義務が果たされた時点でそれぞれの義務に見合った収益を認識することになります。

たとえば、ハードウェアの販売取引で一定期間の保守サービスが含まれている場合、ハードの引渡しとその後の保守は別々の履行義務と捉えられます。ハードの販売は基本的に顧客に引き渡した時点での収益認識となる場合が多いと考えら得ますが、保守の部分については、その期間に応じて時間基準で収益認識を行なうことになります。

また、受託開発の取引においては、単一のプロジェクトの契約形態が複数のフェーズ等にわかれている場合があります。このような場合は、契約単位で検討するのでは不十分です。契約が別であっても、価格の決定が相互依存している関係であれば(事実上、プロジェクト全体の価格が決まっていたり、利益管理がプロジェクト全体を1つの単位として行なっていたりする場合など)、1つの契約とみなされることになります。

無形資産(開発費)
受託開発のソフトウェアについては先に触れましたが、市場販売目的のソフトウェアの開発費については、IFRSでは一部を資産として計上する必要があります。

日本基準では自社開発の市場販売目的のソフトウェアは、最初に製品化された製品マスターの完成時点までに発生した制作費は研究開発費として費用処理され、その後に発生する政策費用は無形資産として計上されます。

一方、IFRSにおいて計上が必要となる無形資産は、一定の要件を満たす開発費になるわけですが、中でも、技術的に無形資産を完成させることのできる可能性という要件が重要なポイントとなります。技術的に完成できるということが判明するタイミングは、現在の日本基準と同じ製品マスターの完成時点と捉える場合も多いと考えられます。

リース
最近注目されるようになったクラウドに関する取引が、IFRSのリースの考え方に照らしてどのように解釈すべきか問題になることがよくあります。ソフトウェア業においては、クラウドでは顧客のバランスシートにオンバランスになるのか、というところに注目している場合も多いようで、その点について説明します。

IFRSが新しく採用するリースの考え方では、リースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースという分類は行ないません。使用権を資産計上するという考え方をとるため、基本的に従来オペレーティング・リースに分類されていたオフバランスの取引も資産計上する場合がほとんどとなります。

クラウドを活用する場合、ハードウェアやソフトウェアを自ら保有することなく利用することができるため、従来のリースの考え方に従えば、そのサービスを利用する企業側ではオフバランスとなる場合が多いと考えられます。

しかし、新しいリースの考え方によると、オフバランスできる場合は限的的ではないかと考えられます。一言でクラウドと言っても、さまざまな形態があるので、一概に結論付けることはできないのですが、例えば、特定の企業向けに設置されているサーバーやカスタマイズされているソフトウェアを利用するような契約については、資産計上が必要となる可能性が高いと考えられます。逆に、特定の顧客の利用を想定しない一般向けサービスであれば、オフバランスになると考えられます。ちなみに、リースの会計処理は貸し手と借り手が対称となる処理がなされることが基本と考えられていますので、借り手である顧客側で、資産計上される場合は、貸し手側では資産として計上されません。

このように、ソフトウェア業の行なう取引はさまざまな形態のものがあり、また複雑なものも多いため、慎重な検討が必要となる場合が多くなります。契約内容を確認することも重要なのですが、本当に重要なのは形式面ではなく実態面になりますので、営業部門など実際に取引を行なっている部署の関与が不可欠です。


 


野口由美子



2011年8月31日水曜日

日米ともにIFRS導入は停滞気味

イージフの松岡です。
IFRS導入に関する日米の最近の動向を紹介します。



1.日本の状況


企業会計審議会の総会が8月25日に金融庁で開催され、前回(6月30日)に引き続きIFRS導入についての議論がなされました。推進、反対、それぞれの委員が意見を述べたようですが、今後の方向性が定まるまでには至らなかったようです。

事務局の案として『現時点で検討が必要であると考えられる主要な項目』が11項目挙げられました。我が国の開示制度のあり方からはじまり、幅広く総論的なテーマが掲げられています。この中には、今、上場企業の経理部長が最も知りたいと思われるIFRS適用の時期と対象範囲といった項目がありません。


個人的には、日本基準を維持してIFRSを適用しないという選択肢はないと思っています。しかし、安藤会長は勢力を増してきた反対派に配慮してか、「2012年を目処に決めるということでIFRS適用を決めてはいない」と発言しており”適用するか否か”という点から議論をやり直すつもりかもしれません。

藤沼亜起氏(IFRS財団副議長)は、中国が旗振り役となってIASB内に組織した新興経済グループ(EEG)に言及して、「EEGはサテライトオフィスを骨抜きにできる。韓国もIFRS財団の議席を要求している。このような国際的な状況を理解してほしい」と発言したそうです。


まったく同感です。日本が国内に閉じこもって内向きな議論をしている間に、IASBでの日本の地位が地盤沈下してしまうおそれがあります。反対派の委員も述べているとおり日本は人口減少社会となっているのだから、人口が増え経済が発展している国でビジネスをしていかなければ日本企業の継続的な成長は望めません。そうした状況の中でIASBへの影響力を失うような決定は厳に慎まなければなりません。



2.米国の状況


SECは米国のIFRS導入についての公開討論会を7月7日に開催しました。投資家、中小公開企業、規制当局からパネリストが出席し議論をしました。パネリストの多くは、SECが5月に示したコンドースメント・アプローチを支持したそうです。また、SEC委員長のメアリーシャピロも「IFRSを米国に組み込むかどうかの決定は軽く取り扱われるべきではない」と慎重な姿勢を示しています。


今年中にSECの決定がなされる予定ですが、どうやらコンドースメント・アプローチが採用されそうな様相になってきました。

IFRSロードマップはどうなる? 金融庁審議会の議論を追う

SEC Roundtable Ponders IFRS ‘Condorsement’

松岡 佑三



2011年8月22日月曜日

業種別IFRSの解説-建設業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回は建設業を取り上げます。

収益認識
建設業では現在の日本基準のもとでは、原則工事進行基準が採用されています。IFRSでは、収益認識の基準が改訂されるに伴って、工事進行基準の取り扱いがどうなるか注目されていました。新しい収益認識の基準では、支配の移転をもって顧客に対する義務を履行したと考えるので、建設業の場合、顧客に完成した建物を引き渡す時点まで収益認識がはできないのではないか、工事完成基準しか認められないのではないかという議論がありました。

結論としては、工事進行基準そのものは確かに廃止されるのですが、ほぼ工事進行基準に近い収益認識の方法が一般的に採用されることになります。新しい基準では支配の移転が重要な収益認識のポイントとなるのですが、客先のサイトで建物を建設しているような場合、完成途中の建物も顧客の支配にあると考えます。なので、継続的に支配がしているために、工事のインプットやアウトプットに基づいて収益を認識するものとされています。

JV(ジョイントベンチャー)の処理
建設業の特殊な会計処理としてJVの取り扱いがあります。JVは高層ビル等大規模な工事を複数の企業が共同で行なう場合に一時的に作られる組織体です。日本基準のもとではJVという組織のもとで工事を行なう場合であっても、あたかも単独で工事を行なっているかのように処理します。簡単に言うと、工事の原価や収益のうち出資比率分だけを自社の分として計上していきます。

しかし、IFRSでは、このような処理は認められません。JVも子会社等他の事業体と同様に取り扱い、連結や持分法の範囲に含められるか検討することになります。ここで問題になるのは会社がJVを支配しているか、ということになります。有効な支配を有している場合は子会社となります。実際多くのJVについては、特定の会社の支配ではなく、共同支配が認められる可能性がありますが、この場合は基本的に持分法が適用されると考えられます。
このようにJVについては連結や持分法といった処理が必要になるため、財務数値への影響も大きく、業務上の負担も重いものとなります。

借入費用
借入費用の資産化は日本基準にはありませんが、建設業に影響があると考えられます。IFRSでは、適格資産の取得にかかる借入についての費用は資産の原価に含める必要があります。この適格資産というのは、意図した使用、販売が可能となるまでに相当の期間を必要とする資産のことになります。相当の期間がかかる、ということで、かなり大規模な資産を想定しているわけですが、建設会社は自ら借入を行なって資金を調達し、工事を実施していると考えることができるので、借入費用が工事原価に算入する場合があります。

実際の適用にあたっては、借入と工事を紐付けなくてはなりません。借入時に特定の工事に直接結び付いている場合には簡単ですが、特にそういった関係性がなく資金を一元で管理しているような場合は、識別が難しくなります。IFRSではこのような直接的な関係がない場合であっても、適格資産の取得に使用した範囲を算定することを求めています。具体的には、当期の借入金残高に対する借入費用の加重平均を適格資産の取得に要した支出に乗じて算定します。

ここでは主要な論点を取り上げましたが、IFRSが建設業にあたえる影響は、本業のビジネスの業務に直結しており、非常に大きいものです。システム面での対応を含め、いかに効率的な業務を構築できるかが重要な課題になると思います。


 


野口由美子



2011年8月9日火曜日

米国のIFRS導入に関するSECスタッフ・ペーパーの解説

イージフの松岡です。


2011年5月26日、SECのスタッフは、「米国の発行企業の財務報告制度への国際財務報告基準の組み込みに関する検討のためのワーク・プラン-考えられる組み込み方法の探求」(以下、スタッフ・ペーパー)を公表しました。この組み込み方法はコンドースメント・アプローチと呼ばれています。コンドースメントとは、コンバージェンス(convergence)とエンドースメント(endorsement)を合成した造語です。今回は、このコンドースメント・アプローチについて解説します。


 


1.概要


コンドースメント・アプローチとは、米国の会計基準設定主体であるFASBが5~7年をかけて米国会計基準にIFRSを段階的に組み込むことにより、米国会計基準に準拠した米国企業が、IFRSに準拠していると表明できるようにすることです。スタッフ・ペーパーでは、FASBは米国会計基準の開発や改訂に労力を費やすのではなく、IFRSの開発に深く関与することに軸足を移すべきであるとしています。



2.メリット・デメリット


次にコンドースメント・アプローチの主要なメリットとデメリットについてみていきます。


・IFRSを段階的に導入することができ、米国企業が一度にIFRSをすべて組み込む場合の「ビック・バン」アプローチのコストを回避することができます。また、特定の期間において、米国企業が導入する会計基準の数を減らし、投資家が適応しなければならない会計基準の数を減らします。これにより企業、投資家を含めた市場関係者に新しい会計基準についての学習と準備の時間が十分に与えられます。


・米国会計基準が維持されることで、米国会計基準を参照している文書(法律、契約書類、規制および指針など)を変更する煩雑さが回避されます。


・FASBが米国会計基準に組み込むIFRSの規定を修正したり、追加したりすることによって米国版IFRSが開発されるリスクがあります。


 


3.まとめ


コンドースメント・アプローチは、一歩踏み込んだコンバージェンスといえるでしょう。現在でも米国はコンバージェンスを進めていますが、米国会計基準をIFRSに近づけるのではなく、IFRSそのものをFASBによる承認手続きを経て米国会計基準に組み込んでいきます。ただ、段階的に個別のIFRSを自国基準に組み込んでいくコンドースメント・アプローチと「ビック・バン」アプローチを念頭においているIFRS1号「初度適用」の関係はどうなるのでしょうか。コンドースメント・アプローチが完了して作成された財務諸表に「すべてのIFRSに準拠している」という明示的かつ無限定の記述ができるのか現時点では疑問となります。


 


Work Plan for the Consideration of Incorporating International Financial Reporting Standards into the Financial Reporting System for U.S. Issuers


 


松岡 佑三



2011年8月2日火曜日

IASB、7月26日にワークプランを更新

イージフの松岡です。


IASBは、前回6月30日に更新してからまだ1ヶ月も経っていませんが、7月26日にワークプランを更新しました。今回は、その主要な内容と周辺のニュースについてお知らせします。


まずは金融危機関連プロジェクトの目玉である金融商品についてです。IFRS第9号「金融商品」の強制適用時期を2013年1月1日以降開始事業年度から2015年1月1日以降開始事業年度に遅らせる暫定決定が行われました。


その他、多くのプロジェクトについて後ろ倒しになっています。公開草案(再公開草案を含む)またはレビュー・ドラフトの公表が遅れたものとしてヘッジ会計のうちマクロヘッジ、リース、保険契約の3つがあります。最終基準の公表が遅れたものとして金融資産と負債の相殺と収益認識の2つがあります。これらはいずれも前回の公表よりも3ヶ月から半年ほど公表が遅れることとなりました。


プロジェクトの遅延は、日本でのIFRS強制適用延期の影響も遠因となっているのでしょうか。IASBとしても拙速に事を進めるよりも、今はペースを落として時間をかけてでも利害関係者の合意を取りながら進めていく方が得策と判断しているのでしょう。


また、7月1日からIASBの議長がデイビッド・トゥイーディー卿からハンス・フーヘルフォルスト氏に交代し、公開協議に関する意見募集も開始されました。IFRS採用国増加により新たな課題が浮上してきたことで、IASBの今後の活動について優先的に取り組むべき課題について幅広く意見を募集するとしています。議長をはじめIASB理事の顔ぶれも変わったことから仕切り直しといったところでしょう。フーヘルフォルスト議長は、就任挨拶の中で米国がIFRSを完全に組み込むことに楽観的な見解を持っているようですが、どうなることでしょうか。引き続き見守っていきたいと思います。


IASB work plan - projected timetable as of 26 July 2011


ハンス・フーヘルフォルスト氏がIASBの議長に就任される


松岡 佑三



2011年7月26日火曜日

IFRSプロジェクト中断か継続か

イージフの松岡です。


強制適用の延期発表を受けて、各企業はIFRSへの取り組み方を再考する必要が生じました。端的にはIFRSプロジェクトを中断するのか、そのまま継続するのかという問題になります。中断、継続、それぞれの判断の違いはどこから生じるのか、その決定の根拠をみていきます。


 


IFRSプロジェクトを中断


今回の発表を受けてIFRSプロジェクトを中断した企業は、プロジェクトの目的をIFRSへの制度対応としてのみ捉えています。2015年3月期を最初のIFRS報告日として、比較年度の期首である2013年3月末までにIFRSベースの財務諸表を作成できる体制にすることを目標としていました。


強制適用の延期が確実となったことで準備期間が長くなり、また強制適用の発表から5-7年の準備期間が設けられることから強制適用の発表を待ってプロジェクトに着手しても手遅れにならないという見通しが立ちました。したがって、急いでプロジェクトを進める必要はなくなり、IFRS導入の正式発表があってから再度プロジェクトをスタートさせればよいという判断になりました。


 


IFRSプロジェクトを継続


プロジェクトを継続している企業のパターンとしては大きく2種類に分けられます。


1つ目が、IFRSの早期適用を予定している企業です。ここには早期適用を予定している企業を親会社にもつ子会社や関連会社も含まれます。今回の強制適用の延期発表には関係なく、目標としている年度に向けての準備を継続して進めることになります。


2つ目が、プロジェクトの目的を制度対応だけでなく、管理会計や業務標準化という観点を取り入れている企業です。IFRSを契機として全世界の子会社のシステムを統一し、業務プロセスを標準化し、グローバル展開を効率化していくという目的を持っています。


早期適用は予定していないが、グループ全社での共通システム導入や、業務の標準化や効率化といった課題から優先して取組んでいくためプロジェクトを継続するという判断になります。強制適用までには時間があり、その間にIFRS自体も変化していくため強制適用の発表があるまでは会計上の論点や、グループ会計処理基準の作成は後回しにして、決算期の統一やグローバル業績管理システムの構築などに注力しています。


 


日本国内だけでビジネスが完結している企業ならば、プロジェクトを中断という決定が合理的かもしれません。一方、グローバル展開をしている企業にとっては、IFRS適用を抜きにしてもグローバルベースの管理会計やシステムの統一、業務の標準化といった課題があり、IFRS導入も見据えた上でこれらの課題に取り組んでいくことが企業の競争力を高めることに繋がるのではないでしょうか。


 


松岡 佑三



2011年7月11日月曜日

業種別IFRSの解説-製造業-

イージフの野口です。IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回は製造業を取り上げます。

固定資産
製造業の多くの企業では生産設備等多くの固定資産を保有しているため、固定資産の影響は非常に大きくなります。固定資産についての検討項目としては以下のものがあります。
・固定資産原価の範囲
・償却単位
・償却方法
・耐用年数
この中で、実務上、多くの会社で問題となってくるのは償却方法と耐用年数です。固定資産の原価の範囲としては、借入費用が問題となる場合ありますが、固定資産の完成までに長期間要するような大規模なものに限られますので、借入費用についても影響を受ける資産は、それほどないのではないでしょうか。

固定資産の減価償却については、特に一定の方法を採用しなければならないわけではありません。資産の使用状況に適したものを採用するべきであり、
これまでの使用状況
陳腐化などによる価値の減少の状況
将来の使用計画
といった、社内社外の経済環境を考慮すべきです。

原価計算関係
製造工程にはさまざまな形態があります。社内ですべての工程を行なう場合もありますし、OEMなど外部に委託する場合もあります。製造工程が複雑な場合は、どのタイミングで費用を認識するのか、改めて検討する必要があります。具体的には、契約内容の確認から必要となりますが、契約の形態によっては、製造に直接関係するものだけでなく、開発活動の一部であったり、第三者からの材料等の調達に関するものであったり、内容が多岐にわたっている場合もあり、判断が難しい場合も考えられます。

その他にも、原価計算に含める原価項目には固定資産や従業員給付等、IFRSベースの金額が異なってきます。IFRSベースの原価計算と日本基準(税法基準)の原価計算は結果が異なる場合も想定されますので、システム上の対応を行なうか、スプレッドシートでの計算を行なうのか、何らかの対応策が必要となります。

無形資産
製造業で重要な活動に研究開発があります。IFRSでは、開発費の一部は資産として計上することになります。最近は研究開発活動の一部を外部委託するケースもありますが、そのような場合であっても、開発費の資産計上は避けられるわけではありません。

資産計上が必要となる開発費とは、将来の経済的便益に結びつくかというところが重要なポイントとなります。判断には、各会社でのビジネスモデルに密接に関わってきます。実際に開発費の処理については、各社でかなりの違いがあり、自動車製造などでは資産計上する割合が高い反面、部品製造や、精密機器製造ではかなりばらつきがあり、一定の傾向がないようです。

資産の減損
資産の減損については、すでに日本基準にも固定資産の減損会計が導入されているものの、慎重な検討が必要となります。日本基準での減損は減損の兆候がある程度具体的、限定的なケースを想定し、数値基準などの要件も定められています。一方、IFRSでは、減損の兆候をもっと幅広いものと捉えています。

例えば、以下のような状況に合った場合、減損の兆候があると、判定される可能性があります。
・営業利益やキャッシュ・フローの減少(2期連続とは限らないので注意が必要です)
・技術的陳腐化
・他社との競争環境の変化
・規制等の変化
・資産の物理的滅失
・資産の使用計画の大幅な変更

すでに触れましたが、日本基準のように数値基準といった具体的なものがない中で、どのように減損の兆候を検討していくかという問題は重要な課題となります。

収益認識
収益認識は多くの業種にとって重要な問題となりますが、製造業においても慎重な検討が必要となります。よく問題として取り上げられるのが、製造業で幅広く採用されている出荷基準が認められないのではないか、ということですが、海外の製造業では出荷基準が全く使われていないというわけではありませんし、一律に認められないというわけではありません。

考え方としては、いつ支配が顧客に移転したのか、ということにまず着目することがポイントになります。契約書の内容を確認することも必要ですし、これまでの取引の状況から取引の実態を検討することも必要です。たとえば、契約上は支払いが完了するまで所有権の移転が留保されているというケースはよくあると思いますが、所有権の移転が必ずしも支配の移転のタイミングとなるわけではありません。実際にそのような所有権移転条項がどれだけ機能しているのか、ということも過去の実績等から検証する必要があります。


野口由美子



2011年7月5日火曜日

IFRS適用延期を受けた企業会計審議会の議論

イージフの松岡です。


6月30日に開催された企業会計審議会総会での配布資料が公開されました。その中からいくつか気になった点をご紹介したいと思います。
まずは、日本を代表する企業が名を連ねて5月25日付けで提出した「我が国のIFRS対応に関する要望」です。冒頭に次のように述べています。



”我々は国際社会との接点なしには活動はできず、資金調達もグローバルに行われており、会計基準の国際化の必要性については疑う余地は無い。”



当然、この要望書に名を連ねている企業はグローバル展開をしているわけですから、IFRS導入という取り組みそのものを否定しているわけではないのですね。
続いて、最終段落に大臣発言の根拠となった文言がありました。



”具体的手続きとしては、IFRSの適用範囲について、少なくとも、2015年に上場企業一斉の強制適用がないということを早急にアナウンスした上で、金融庁企業会計審議会中間報告を修正するという明確な対応をお願いしたい。”



大臣発言は、まさにここに書かれた要望を完全に応えた形で表明されたわけですね。

次は、経団連が6月29日付けで提出した「IFRSの適用に関する早期検討を求める」です。最後から2段落目に強制適用の範囲について述べられています。



”企業が上場する市場は様々であり、企業の実態も大きく異なることから、強制適用の是非の判断をする上で、その対象範囲を絞り込むための議論を行うことが現実的である。”



現在、外国人投資家の売買比率が6割を超える東証1部については議論の余地がないと思いますが、その他の市場については果たしてIFRS適用がどれだけベネフィットがあるのか検討する必要がありそうです。


いずれにせよ2012年を待たずして本格的な議論が再開しました。結果はどうなるにせよきちんと議論を重ねていく中で、日本にあった日本の国益に資するIFRSへの取り組み方が見出されていくことを願っています。


準備期間が伸びたことは、強制適用での対応を考えていた企業にとって朗報です。しかし、プロジェクトをストップしたり、スタートを遅らせたりして動向を静観するだけでは、せっかく与えられた時間がもったいないです。この時間を利用して、IFRS導入を単なる制度対応ではなく、自社グループのグローバルベースの管理会計インフラとして、またグローバルで業務プロセスの標準化と効率化を実現するきっかけとして取り組むにはどうすればよいかを考えることが望ましいと思います。


 


企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議 議事次第


 


松岡 佑三



2011年6月27日月曜日

IFRS強制適用の延期について

イージフの松岡です。


すでに新聞報道等でご存知の方も多いと思いますが、6月21日に自見金融担当大臣からIFRS強制適用に関して発言がありました。発言の要旨を確認すると以下の2点になります。



”IFRS適用については、「中間報告」以降の変化を踏まえつつ、企業会計審議会における議論を6月中に開始する。”


”少なくとも2015年3月期についての強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であってもその決定から5-7年程度の十分な準備期間の設定を行うこと、2016年3月期で使用終了とされている米国基準での開示は使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とする。”



2009年6月に企業会計審議会から公表された「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」では、IFRSの強制適用について以下のように述べられていました。



”IFRSの強制適用については、2012年を目処に判断すること(2012年に強制適用を判断する場合には、2015年または2016年に適用開始)。”



この文言からIFRSの強制適用は、早ければ2015年3月期から開始すると解釈されていたわけですが、今回の大臣発言によりその可能性は否定されました。ただ、企業会計審議会での議論は、今月から開始されて年内いっぱいまでかかるとのことなので、最終的にどういう結論が出るのかはまだ不透明です。今回の発言の背景には、5月に産業界からの「要望書」や、SECのIFRS適用に関する作業計画案の公表があったことが挙げられています。


私たちのようなIFRSコンサルを手がけている立場からすれば、企業のIFRSへの取り組みが中断したり、進行が遅くなったりと決して歓迎できるニュースではありません。しかし、あくまでもIFRS適用を延期するという話であって、中止するわけではないので、今まで培ってきたノウハウや経験は無駄にはなりません。またそれは、既に準備を進めてきた企業にとっても同様です。


いずれにせよ今年のSECの決定がますます気になります。もしSECが、先月のスタッフペーパーで提案されたようなコンドースメントという名のコンバージェンスを採用するならば、2012年の日本の判断はさらに先送りされる可能性が高いでしょう。


松岡 佑三


“IFRS 適用に関する検討について”2011年6月21日 金融担当大臣 自見庄三郎



2011年6月20日月曜日

IFRS対応を前向きに取り組もう

イージフの松岡です。


IFRS対応で作業負荷が高い項目として減価償却方法および耐用年数の変更と連結グループの決算期の統一と会計方針の統一がよく取り上げられます。減価償却については、全ての固定資産について使用実態に即した減価償却方法と耐用年数を洗いだしていく作業に大きな負荷がかかります。連結については、全ての子会社・関連会社について決算期と会計方針を統一するために、抜本的な連結決算体制の変更が求められます。


これらはたしかに大変な作業ですが、その作業量に見合った成果は得られないのでしょうか。単にIFRSという制度対応だけの成果しか得られないのでしょうか。IFRS対応のコストベネフィットについて考えてみたいと思います。


減価償却費


日本の会計実務では、長らく税法規定に沿った減価償却費の計算が行われてきました。企業が固定資産の減価償却を考えるにあたっては、税務メリットと事務負担の軽減が念頭にあり、その固定資産の使用実態を反映させるということは考慮されてきませんでした。しかし、財務諸表の目的は企業実態を忠実に表現することであり、その観点からすれば日本基準であっても減価償却費は、資産の使用実態を表して然るべきです。


決算期と会計方針の統一


また、連結グループの決算期の統一、会計方針の統一についても同様に、連結財務諸表の目的は連結グループの経済的実態を忠実に表現することであり、その観点からすれば日本基準であっても決算期と会計方針を統一した財務諸表を連結すべきです。決算期がずれていて会計基準が不統一な財務諸表を連結したところで意味のある数字は出てきません。


実態を表さない数字からは、投資家は投資判断を誤り、経営者は経営判断を誤ります。IFRSへの対応を機に、連結財務諸表はより実態を忠実に表すようになり、その品質が高まります。IFRSへの準備は制度対応という受け身の発想ではモチベーションも高まりませんが、品質を向上させると思えば前向きに取り組めます。


松岡 佑三



2011年6月13日月曜日

「東京合意」の達成状況を公表

イージフの松岡です。


6月10日に企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)は、2007年8月の両者間の覚書である「東京合意」の達成状況について発表しました。


ここで、東京合意とはどういった内容のものであったか、簡単に確認しておきます。


東京合意とは、ASBJとIASBとの間で日本基準とIFRSのコンバージェンスを加速化するために以下の内容について合意したものです。


(1)2008年までの短期コンバージェンスの終了


2005年7月に公表された欧州証券規制当局委員会(CESR)による同等性評価の過程で特定された日本基準とIFRSの間の主要な差異について2008年までに解消すること


 


(2)残りの差異については 2011 年 6 月 30 日までに解消を図ること


 


(3)2011年より後に新たな会計基準が適用となる際に日本において国際的なアプローチが受け入れられるように、緊密に作業を行うこと


 


このうち、(1)については期日までにすべての短期コンバージェンスが完了し、2008年12月に欧州委員会(EC)が、「日本の会計基準は欧州で利用されているIFRSと同等である」とする認定を下したことで目標は達成されました。


今回の報告の主眼は、(2)残りの差異について6月末までに解消が図られたのかどうかという点になります。(2)に含まれる項目は全部で5つあり、セグメント情報に関するマネジメント・アプローチの導入、過年度遡及修正、包括利益の表示の3つについては期日までに完了しましたが、企業結合(ステップ2)と無形資産については、2011年第3四半期に公開草案を公表予定というステータスになっており、遅延しています。


ただ、この2つが遅延したとはいえ、日本基準がIFRSへ歩み寄っていく姿勢は変わりません。以下、ASBJがIASBへの関与を深めている状況を本報告から引用します。



“ASBJは、IASBが日本で開催するラウンドテーブルやアウトリーチへの積極的な協力や、アジア・オセアニア会計基準設定主体グループ(AOSSG)の議長国として、アジア・オセアニア地域における開発中のIFRSに対する意見集約等の活動を通じて、IASBの基準開発に積極的に参画してきた。これらの結果、国際的な会計基準の設定プロセスへの ASBJ の貢献は効果的であり、IASBはASBJの意見も十分に検討した上で基準開発を行ってきている。”



 


また、2011年2月にはIASB初の海外拠点となるアジア・オセアニア地域の支部が東京に置かれることが決定しました。日本としてもIASBに対する影響力を強めていきたいという思いがあるのでしょう。今後も日本の会計基準開発は、IASBの動向を抜きにしては語れません。2012年を目途としたIFRSの強制適用に関する意思決定に向けては、その協力関係を深めていく意向としています。


IASBとしては、早く日本にも強制適用を決定して欲しいが、ASBJとしてはIFRS適用後も日本の影響力をいかに保持していくかが課題です。今後も、両者の協力関係と駆け引きに注目していきたいと思います。


[ASBJ]企業会計基準委員会と国際会計基準審議会が、東京合意における達成状況とより緊密な協力のための計画を発表(第13回会合)


 


松岡 佑三


 



2011年6月6日月曜日

日本のIFRSに対する姿勢

イージフの野口です。


日本がIFRSを適用すべきか否か、という議論はいろいろなところでなされるようになりました。多くの方が感じられているかもしれませんが、IFRS反対派の意見も根強いように思います。確かに、始めからIFRS適用ありきで話が進められるべきではなく、いろいろな角度から議論がなされるべきだと思います。あまりにも、いろいろな意見が出てきてしまって、今の日本の方向性がよく分からなくなってしまうこともあり、ここで、金融庁が示している日本のIFRSに対する姿勢を再度確認しておくことが必要ではないでしょうか。

まず、平成21年6月に公表された「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」で日本がIFRS に移行すべきという基本的な考え方が示されました。ここで、2012年頃に上場企業の連結財務諸表に強制適用することの是非を決定するということが明示されています。2012年の判断後、十分な準備期間をとった後に強制適用となるとしており、それが2015年または2016年ということになっているわけです。
2012年の判断にあたっては、以下の課題の達成状況を見極める必要があるとされています。
・IFRSが日本の企業の実態を適切に反映したものになっているか
・日本の会計関係者がIASBに積極的、効果的に意見発信を行なっているか
・IFRSが迅速に日本語に翻訳されるようになったか
・IFRSの教育・研修が十分に行なわれているか

これらの課題のうち、1点目はIFRS側の問題でもあると思います。実際IASBでもその問題については認識されているようです。実際にIFRS9では日本の企業実態を反映するために、持ち合い株式について公正価値による評価差額をその他の包括利益で認識するというオプションを用意しています。これは日本のため(日本以外の国にとってはあまり問題にならないのではないでしょうか)の改訂といえます。

2点目以降は、日本国内での取り組みが重要となってきます。特に教育の問題は非常に重要かつ深刻な問題だと思います。企業でも監査法人でもIFRSに対応できる人材はまだ十分ではないのではないでしょうか。日本基準とIFRSでは、全く考え方が異なるのですが、その異なる考え方をベースに話ができていると感じられることは私自身あまりありません。人材の育成というのは、時間がかかるもので、継続した取り組みによりようやく身を結ぶことになりますが、手間を惜しんではいけないと思います。

2010年3月期末からIFRSの任意適用もすでに認められていますが、IFRSの法的位置付けは、連結財務諸表規則に定められています。連結財務諸表規則では、「金融庁長官が指定する国際会計基準に従うことができる」とされ、金融庁長官による指定の要件というのは、以下の4点です。
・内容が明確な基準案が予め広く周知されている
・関係者間で適切な議論が行なわれている
・多数の関係者が経済的実態に適合した合理的な内容と評価されている
・公正妥当な手続を経て作成および公表されている

このような要件を満たしていないIFRSというのは基本的にはないわけで(IAS39の一部の改訂内容については、満たしていない可能性があると思いますが)、IFRSがそのまま日本で適用されることになります。実際、現在日本では全くカーブアウトはされていません。

このように金融庁の説明をみている限り、日本はすでに後戻りもできない状況にあるという印象を受けます。現在認識されている課題のうち、教育は最も重要だと思いますが、合わせていかに日本に根付かせるせるのか、というところはもっと多く議論がなされるべきではないでしょうか。


 


野口由美子



2011年5月30日月曜日

IFRS第10号 連結財務諸表

イージフの松岡です。


IASBは、5月12日に連結財務諸表を中心とした新基準を3点公表するとともに、旧基準2点を改定しました。今回はこのうち新たに公表されたIFRS第10号 連結財務諸表についての概要とポイントを紹介します。なお、これらの基準書は2013年1月1日以降開始事業年度より適用されます。


 


基準改定の背景


従前の基準では、連結範囲の判定にあたって、事業会社についてはIAS第27号「連結及び個別財務諸表」が適用され、特別目的会社についてはSIC第12号「連結-特別目的事業体」が適用されており、支配の定義が一律に定められていませんでした。また、金融危機の影響を受け、一部の事業体が連結から除外されていたことに対して多くの批判がありました。


そこで、IFRS第10号は、被投資企業の事業体の性質に関わらず、支配に基づく単一の連結モデルをすべての企業に導入しています。


なお、IFRS第10号では、支配の定義を改訂することで、連結範囲についての判断を変更するにとどまっており、連結手続きに関する部分については変更されていません。


 


単一の支配モデル


投資企業は、以下の要件を両方とも満たす場合、被投資企業を支配しているとしています。


 


・被投資企業への関与から生じるリターンの変動性にさらされている


・被投資企業に対するパワーを通じてそのリターンに影響を与える能力を有している


 


ここで、リターンとは、配当や被投資企業に対する投資の価値といった経済的便益のみならず、規模の経済を達成することや、シナジーを得る、といった他の持分保有者には与えられない効果も含まれます。


またパワーとは、被投資企業の活動を左右する現在の能力です。パワーをもたらすものとして、議決権、経営幹部の選任権、契約に定められた意思決定権があります。


 


支配の有無の判断において、被投資企業に対するパワーとリターンは、連動している必要があります。


投資企業が、被投資企業に対するパワーを有しているものの、そのパワーから便益を享受することができない場合は、被投資企業を支配していることにはなりません。また、被投資企業からリターンを受け取るものの、被投資企業のリターンを生み出す活動を左右するよう、パワーを行使できない投資企業は、その被投資企業を支配していることになりません。


 


特定資産(サイロ)に対するパワー


IAS第27号やSIC第12号では定められていなかった新しい概念として、法的事業体ではなく特定資産(サイロ:silo)を支配の対象とするガイダンスが導入されました。


IFRS第10号の下では、法的事業体よりも細分化したレベルに対する支配が存在することが想定されており、法的事業体そのものではなく、これらの特定資産が連結対象となることがあります。


 


まとめ


IFRS第10号は従前のIAS第27号に比べ、親会社がどの事業体を支配し、連結すべきかを決定するに当たり、すべての事実および状況を分析し、支配の有無を評価することを要求され、より多くの判断が必要とされます。


また、単一の支配モデルに統一されることやサイロが支配対象となることで、特に特別目的事業体と関わりの多い金融業や不動産業は、影響を受ける可能性があります。


 


松岡 佑三



2011年5月23日月曜日

米国のIFRS強制適用の判断はいつになるか?

イージフの松岡です。


米国は、米国上場企業に対しIFRSを強制適用するか否かの決定を今年(2011年)中に行うとしています。強制適用が決定された場合、2015年以降の適用が有力視されています。


日本での強制適用は来年(2012年)を目処に判断するとされていることから、米国が今年どういう結論を下すかは、日本の決定に大きく影響を及ぼすでしょう。


 


既に今年も5月後半にさしかかり、半年が過ぎようとしていますが、米国の判断はまだ発表されていません。いったい、いつ発表されるのでしょうか。


 


先月、SECが米国におけるIFRS導入について7月7日に円卓会議を開催するとのプレスリリースがありました。投資家、小規模公開企業、規制当局者のパネルディスカッションが展開され、投資家のIFRS理解度、財務諸表作成者に対するIFRS導入による影響、IFRSの下での規制環境について焦点をあてて議論されるそうです。


 


7月に関係者を交えてのIFRS採否の検討会議を実施するということは、その後、議論のまとめやフィードバックを受ける期間が2~3ヶ月くらいは必要とすると、結論が出るのは早くても9月くらいになるでしょうか。


 


日本企業の実務担当者や関係者は、導入スケジュールや対応方法を計画するにも、早く決めて欲しいというのが本音ではないでしょうか。先のみえない状態はしばらく続きそうです。


 


 


松岡 佑三


 


☆SECのプレスリリースは、武田雄治さんのブログから辿りました。


■CFOのための最新情報■


 



2011年5月18日水曜日

IFRSセミナーのお知らせ

イージフの野口です。


aegif主催のIFRSセミナーのお知らせです。


今回のセミナーでは連結管理と内部統制に焦点を当てます。


第1部では、連結グループの決算体制をいかに構築すべきか、あるべき管理方法について論点を整理し、どのような対応策をとるべきであるか解説していきます。


また、内部統制については議論があまりなされていない状況ですが、実際の現場では必ず対応が必要となります。そこでセミナー第2部では 内部統制上の対応を考える上で必要な知識を整理します。また、現在の日本の内部統制の制度動向も解説し、今後の方向性を説明します。


IFRSについてはいろいろな切り口がありますが、今回のセミナーでは今後必ず必要となってくる視点を提供し、自社の取り組みへの参考としていただきたいと思います。


なお、このセミナーは3月に開催を予定していましたが、東日本大震災の影響で延期となっていたものです。前回は定員を超える申し込みをいただきました。今回は会場の席を増やしており、まだ空きがあります。ご興味のある方は是非ご参加ください。


お申し込みは弊社HPよりお願いいたします。


日程  2011年06月01日(水)


時間  13:30〜16:15(13:15開場)


会場  ITS市ヶ谷健保会館(東京都新宿区市谷仲之町4-39)


参加費 無料(事前登録制)



2011年5月16日月曜日

業種別IFRSの解説-小売業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、FRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回は小売業を取り上げます。

小売業では収益認識が大きな問題になることが多いです。小売業と一口に言っても業態によってさまざまな取引慣行があります。日本基準においては、売上の計上について特に会計基準がなかったこともあり、それまでの慣行で処理されている場合が非常に多いです。しかし、IFRSでは収益認識について基準が定められていますので、これまでの慣行がIFRSに照らして適切か、検討する必要があります。検討のポイントを紹介します。

収益
履行義務アプローチに基づく取引内容の確認
従来のIFRSで、リスクと経済的便益の移転を収益認識のタイミングとする考え方でしたが、2011年公表予定の新しい基準書では履行義務アプローチという新しい考え方が適用されることにになります。この考え方では、企業が顧客に対して代金を受領するために行なうことを履行義務として識別し、履行義務を果たしたタイミングで収益を認識することになります。
例えば、顧客への物の引渡しと、代金の受領が同時に行なわれるような単純な取引については特に問題がありません。従来と同じように、代金を受領した時点で売上となります。しかし、顧客が購入した商品を、指定された日に配送して届ける場合は、商品を配送する義務、顧客に物を引き渡す義務が発生し、それぞれの義務が履行した時点で収益を認識します。つまり、顧客が物を購入した時に代金を受領していたとしても、物の引渡しが完了していなければ、売上とはできないことになります。
総額表示と純額表示
その他にも、百貨店などで行なわれている消化仕入(顧客に販売された時に仕入先からの仕入も同時に行なわれるという商慣行)については、 百貨店では商品の販売を代行しているものと考えられ、販売代金と仕入代金の純額が売上金額となります。販売代金の総額ではなくなるわけです。
ポイントサービス
さまざまな小売業で顧客の囲い込みのためにポイントサービスが行なわれています。日本の会計基準では特に規定はないのですが、現状では多くの企業でポイント引当金として処理されています。IFRSではポイントサービスは、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムと呼んで、処理を定めています。ポイントは当初の販売取引とは別個のものと考え、引当金処理ではなく、ポイントに見合う金額を売上から控除します。その金額はポイントが使用されるまで負債として計上されます。
リベート
リベートなどについての扱いも重要です。リベートなどは実質的な値引きなのですが、長年の取引慣行に依存する部分も多く、その会計処理についてはばらつきがあります。しかし、IFRSでは、実際に受領する金額が収益の額とされることになるので、リベートなどは控除しなければなりません。リベートによっては、販売後になって金額が確定する場合もありますが、そのような場合は見積りが必要です。合理的な見積もりができないと、そもそも収益を認識すべきではないということになってしまいます。

固定資産
減価償却
減価償却方法、耐用年数は日本基準のもとでは税法の規定を採用している場合が多いのですが、IFRSでは実態に即した方法、耐用年数を適用しなければなりません。定期的な店舗のリニューアルが行なわれる場合は、そのことを織り込まなければなりませんし、資産の利用に関わる計画が変われば随時反映しなければならず、毎期見直しが必要とされています。
減損
減損について、日本基準では2期連続の営業赤字といった指標で減損の兆候を把握している場合が多いと思います。しかし、IFRSでは減損の兆候を幅広く考えており、2期連続の営業赤字といった具体的な指標はありません。どういった状況を兆候とするのかは、業態や企業の考え方によって変わってくることとなるので、対応が難しいところです。
また、一度認識された減損は、減損しているという事実がなくなれば、戻入されることになります。その判定や、処理は日本基準にはないもので、管理負担も増えると考えられます。
その他
その他にも、借入費用は大規模なショッピングセンターなどで問題になる場合があります。固定資産の取得をその取得に紐付いている借入金によってまかなっている場合、利息などの借入費用は固定資産の取得原価に含める必要があります。この規定は日本基準にないものです。
また資産除去債務に関しては、日本基準にも導入されましたが、完全に日本基準と同一ではありません。資産除去債務についても慎重な検討が必要だと考えられます。

収益と固定資産を取り上げましたが、小売業ではこの2つの項目が非常に重要で影響が大きいと思います。特に収益認識については、処理を大きく変える場合が多いので、契約形態や取引慣行を慎重に検討することが必要です。


 


野口由美子



2011年5月10日火曜日

IFRSの導入とは何を指すのか

イージフの野口です。今回は、海外でのIFRSの適用方法についてご紹介したいと思います。

IFRSはすでに100カ国を越える国で導入されている、という話を聞いたことある方は多いと思います。現実にそれだけ多くの国で使われているIFRSは、正に世界共通のグローバルな会計基準としての役割を果たしているわけです。

ただ、意外と知られていないのがその導入の仕方です。IFRSを導入している国がこれだけたくさんあるわけですが、すべての国がIFRSをそのまま受け入れているわけではありません。確かに、多くの国では、完全なIFRSをそのまま自国で適用することを目指しています。それは、IFRSが「世界共通言語」として機能するために、必要なことです。しかし、各国それぞれが固有の問題や事情を抱えていることも事実で、そのような問題に対処するには、IFRSだけでは不十分ということもあります。そのため、以下のようなアプローチを採用している国があります。

コンバージェンスによるIFRS導入
これは、IFRSをそのまま受け入れるのではなく、自国の会計基準の中にIFRSを取り込んで行くということです。この方法を採用している国に中国などがあります。中国では新企業会計準則として、IFRSとほぼ同等な会計基準を設定しています。ただし、あくまでも中国の会計基準であり、一部についてはIFRSと相違があると考えられています。

エンドースメントによるIFRS導入
この方法は各国の規制当局がIFRSの各基準のうち、承認したものだけを自国で適用するというものです。IASB(国際会計基準審議会)が公表したIFRSをそのまま承認するケースもありますが、自国の言葉に翻訳したものが承認されるケースもあります。また、基準書の内容自体を各国の事情に合わせて修正して承認している場合もあります。
この方法を採用している国の例としては、EU各国があります。EUでは各国が承認手続の各段階で、承認しない(カーブアウトと言われます)という結果になる前に、IASBに基準書の方を変えるよう働きかけを行なうこともあります。
またオーストラリアの場合は、また違ったエンドースメントの方法をとっています。オーストラリアではIFRSをそのままの形で承認するというのではなく、オーストラリアの制度に合わせた規定をさらに追加して承認手続を行なっています。

ここでは2つの方法を紹介しましたが、一口にIFRSを導入していると言っても、IFRSに対する姿勢は国によって違うことが分かると思います。
それでは日本におけるIFRSの導入はどういう方法になるのか、ということが問題ですが、金融庁の説明によると、日本において承認を行なうものの、IFRSを完全にそのまま導入することになるようです。日本では金融庁長官が指定を行なうわけですが、その指定の要件は、EUの手続よりかなり迅速な対応が可能な形になっています。本当に日本でもIFRSが採用されることになったら、EUなどの国よりもIFRSの適用が「進んでいる」状況になると思います。

このような導入方法の違いは、各国の規制当局がどのような役割を担うことで、自国の利益を守るかという根本的な問題への取り組み方の違いによると思います。日本はIFRSを完全に自国に適用していくことで、日本のIFRSに対する発言力を強化しようと考えているのかもしれません。日本は、IFRS適用を決定すれば、一気にIFRSに対して「進んだ」国になろうとしているのです。


 


野口由美子



2011年4月25日月曜日

IFRSにおけるリベートの会計処理

イージフの松岡です。


食品メーカーや家電メーカーなどの一般消費者向け製造業では、自社製品の販売促進策として卸売業者や小売業者、量販店にリベートを実施することが多々あります。このリベートには、対象製品の購買金額に応じて算定され、得意先に支払われるボリュームインセンティブと呼ばれる事後値引きや、得意先が保有する在庫に対して直近の卸売価格に基づくマージンを補償する在庫補償など多用な形態があります。


これら業界毎の商慣習から様々な形態をもつリベートについて、IFRSではどう取り扱われるのかについて解説します。


 


リベートは売上金額の減少


日本基準では、これらのリベートを販売促進費として販管費に計上している事例が少なくありません。これはIFRSでもそのまま認められるのでしょうか。


 

結論から述べると、販売済み製品に対する販売価格の修正あるいは売上代金の一部返金としての性格を有するリベートは、売上高の減額として処理することが求められます。


IFRSにおいて収益とは、企業が自己の計算により受領したか、または、受領しうる経済的便益の総流入だけを含むものとされています。収益は受領した、または、受領可能な対価の公正価値(企業が許容した値引きおよび割戻しの額を考慮後)により測定されなければならないと規定しています。


つまり、収益は企業が実際に受領できる金額によって測定しなければならないということになります。そのため、販売価格の一部減額あるいは売上代金の一部返金という性格を有するリベートは、売上高から控除する必要があります。


また、リベートを受取る側である卸売業者側では、リベートが製品仕入価格の修正としての性格を有するものであれば、収益としての計上ではなく、売上原価の減額として処理することになります。


ただし、リベートは一切費用計上が認められなくなるかというと、そうではありません。得意先での販売キャンペーン活動の経費の補填として支出された事が明確であるならば、費用計上する余地はあります。


   

リベートを合理的に見積もることが出来ない場合


では、リベートの計算要素が確定しない等、リベートを合理的に見積もる事が困難な場合には、どのように会計処理すべきでしょうか?


 

この場合、販売済み製品に対する将来の値引額を合理的に見積もることができるまで、当該製品の売上高を認識することはできません。


IFRSでは、収益の額を信頼性をもって測定できることを収益認識要件の一つとして求めています。リベートを合理的に見積もることが出来ないということは、売上金額を信頼性をもって測定できないということになり、売上を計上することは認められません。合理的に見積もることが可能になった段階で認識されることになります。


リベートの種類によっては、得意先の累計販売実績に応じてリベート金額が算定される等、メーカーから得意先への売上時点でリベートが確定しないものがあります。この場合、売上を認識するには、過去の実績や売上予測に基づいてリベートを合理的に見積もることが求められます。


また、特に在庫に関連して算定されるリベートは、金額を合理的に見積もるために、リベートの対象となる在庫残高を製品毎に把握する体制、ならびに得意先での購買・販売予測を可能とする過去の実績等の存在が、売上計上の必要条件になるでしょう。


 

とかく、リベートについては過去からの慣習ということで、明確な取り決めがないまま行われている事例も少なくありません。その場合、今一度、顧客とリベートの内容について確認し、エビデンスを揃えておくことが重要です。


   

松岡 佑三



2011年4月18日月曜日

IFRS適用前に対応したい決算期の統一

イージフの野口です。


IFRS適用で連結グループの決算体制をどうするか、という問題を抱えている企業は多いようです。まず最初に問題になってくるのが、決算期です。IFRSではグループ会社の会計方針、決算期の統一は重視されています。日本基準においても、基本的には会計方針や決算期はグループで同じにしなければならないわけですが、企業の実情に配慮して、ある程度緩和した運用が認められています。IFRSではそのような企業への配慮についてわざわざ規定をおくことはないので、各社が対応していかなくてはなりません。

決算期について、日本基準では3ヶ月以内の決算期のずれは許容されています。日本の多くの企業は3月決算であり、海外では12月を決算としているケースが多いため、このような実情に配慮した規定であるといえます。

海外に子会社等がある企業の多くはこのずれを利用して、海外の子会社では1月以降余裕を持った決算作業を行い、4月以降の親会社の連結決算作業に間に合わせられればよい、というスタンスでいられたと思います。

IFRSでは基本的に決算期は統一されていることが必要です(ただ絶対統一しなければならないかというのではなく、実務上不可能な場合は3ヶ月以内のずれは認められています)。多くの場合、決算期が違っていても、仮決算を組む等の対応ができると考えられるので、実務上不可能とはならないのではないかと考えられます。

実際にグループ会社の管理を考えると、決算期を統一することは、業績評価上も望ましいことです。また、決算期がずれていると、連結決算上も取引の差異調整などの手続に時間がかかることも多く、かえって手間がかかる面もあります。そのようなメリットも考えると、グループの決算期統一は、積極的に取り組むべき課題として捉えられるのではないでしょうか。

とはいえ、親会社でなく、特に海外の子会社で決算体制を変えることになるので、簡単に達成できることではありません。本番の決算で失敗して、決算発表が遅れてしまうということは絶対避けたいところです。確実に対応していくには、他の課題より優先して取り組むことが一番です。

IFRSを実際に適用することになる前に、決算期の統一は先にクリアするという方針をとる企業は実際に増えてきています。そのような対応は非常に有効だと思います。


 


野口由美子



2011年4月11日月曜日

デュー・プロセスについて

イージフの松岡です。


2011年は、SECが米国企業へのIFRS導入の判断をすることから、米国会計基準とIFRSのコンバージェンスが急ピッチで進められており、IFRSから公開草案等の公表が相次いでいます。ここで、IFRSはどのような手続きを経て作成されるのでしょうか。IFRSを作成し公表する手続きをデュー・プロセス(due process)といいます。所定の手続きを経て基準が開発されることは、IFRSの透明性を確保するために重要であり、世界各国でIFRSが信用され導入されるためにも必須の要件になります。


今回は、このデュー・プロセスについて解説します。


 

デュー・プロセスの過程と公表される資料


デュー・プロセスは、大きく以下のような手続きから構成されます。


1.論点の識別・協議と審議事項の決定


IASBに寄せられた意見や助言を考慮してIASBスタッフは、ある議題に関する論点を収集します。その中で、どの議題を優先するのかIFRS財団評議員会や各国の会計基準設定主体等、利害関係者と意見交換を行い、審議事項を決定します。




2.コメント募集のための討議資料(Discussion Paper:DP)の作成・公表


審議事項に関して論点の包括的な概要、論点に対するアプローチ、IASBの予備的見解をまとめたDPを公表し、広く利害関係者からコメントを募集します。受領したコメントはIASBのサイトで公開されます。コメント募集期間は4~6ヶ月程度です。




3.コメント募集のための公開草案(Exposure Draft:ED)の作成・公表


DPに対して寄せられたコメントを踏まえて、IASBで論点を審議し解決した後、EDを作成、公表しコメントを募集します。コメント募集期間は2~4ヶ月程度です。




4.基準書および結論の背景の公表


EDから派生した論点についてIASBで審議し、基準書を作成します。IASBで可決後に基準書が公表されます。基準の開発にあたっての審議の過程や、重要な論点についての決定の根拠について結論の背景が基準書とともに公表されます。基準書の公表後、適用されるまでには通常1~2年の期間が設けられます。




5.適用後レビュー


IASBは、新たな基準書が適用されてから2年後に、適用後レビューを実施します。これは、その基準が当初の意図通りに機能しているかを検証するために行われます。


 

デュー・プロセスを省略した事例


このようにIASBは、デュー・プロセスを厳格に定めていますが、そこには過去の苦い教訓があります。それは、2008年の金融危機下に、デュー・プロセスを省略して金融商品に係る基準の改訂を行ったことです。


この時IASBは、市場の状況からこの問題を緊急に対応すべきとのEUからの要請を受けて、IASC財団(現:IFRS財団)の支持を得て公開草案を発行せずに、改訂基準を発行しました。新基準の発行はEUからの要請があってからわずか1週間ほどでなされました。


 

100年に一度の危機における動揺から引き起こされた事象ですが、IFRSが信頼され世界各国で受け入れられるためには、その基準の作成・公表過程が公明正大に行われなければなりません。


   

松岡 佑三



2011年4月4日月曜日

今立ち返るべきIFRSの基本

イージフの野口です。今回はIFRSの総論的なトピック、IFRSの基本について解説していきます。IFRSについて書籍や雑誌、セミナー等いろいろな機会を利用して勉強されている方にとって、今さらIFRSの基本、といっても知っているようなことばかりだと思います。しかし、最近特にこのような基本について誤解があると感じることが多いので、あえて取り上げてみます。

原則主義
IFRSは原則主義の基準です。日本やアメリカの会計基準等は細則主義という立場を取っているのと対照的です。原則主義の基準ということは、あくまでも基準で示しているのは原理原則だけであり、その個別的な適用や具体的な方法については企業がそれぞれ判断することになります。

ということを多くの方がご存知なのですが、その一方で、日本でのIFRS適用にして指針のようなものが公表されるのではないか、同業他社と足並みを揃えた形で適用したい、という声もよく聞きます。IFRSを初めて適用する企業の本音だろう、と気持ちは分かりますが、このようなことを求めること自体が、細則主義によるものではないでしょうか。

日本が独自にIFRSの日本での適用指針を作ったら、そのことはIFRSの原則主義に反することになり、日本版IFRSができてしまいます。現在の日本の立場は、IFRSそのものを適用することなので、このようなことはできないのです。


また、同業他社のやり方も気になるところだと思いますが、他社のやり方というのはあくまでも参考で、自社の適用は独自に決めなくてはなりません。これまでの日本基準の適用においては、同業の企業は足並みを揃えて会計基準の適用ができていましたが、 そのような状況は多少変わってくる場合もあると思います。このような統一感はやはり細則主義だからこそできるものです。原則主義の基準では、企業がどう判断するのか、ということが重要なのであって、他社と同じであるかということは、それほど重視されるものではないと思います。

比較可能性
IFRSを適用すると比較可能性が高まる、と説明されますが、日本の方にとっては日本基準の方が比較可能性が確保されているのではないか、と疑問に思われることがあるようです。

その疑問はもっともだと思います。日本基準であれば、細かいルールがあるのでより統一的に会計処理が規定され、IFRSによって各自の判断が行なわれるようになれば会計処理にばらつきが出てくることが考えられます。

IFRSの言っている比較可能性とはレベルが違います。どの国もIFRSを適用すればどこで作成された財務諸表も、各国がそれぞれ独自の会計基準を適用している状態に比べれば、比較しやすくなります。たとえば、日本基準の財務諸表と米国基準の財務諸表を比べるには、いろいろな調整を行なわなくてはなりません。同じIFRSを適用すればそれは不要になるだろう、ということなのです。


日本基準のような細則主義の基準は日本独自の商慣行や制度に配慮してできているため、国際的に適用できるかというと、無理があります。そういう意味での比較可能性なのです。日本国内での比較を考えると、これまでより会計処理の統一感はなくなるはずなので、比較可能性が損なわれる可能性は現実にあると思います。

公正価値重視
IFRSでは、B/Sに計上した資産、負債を公正価値で評価することが重視されます。イメージとして企業買収の時等に行なうデューデリジェンスの企業評価や企業の清算価値の算定を思う方も多いかもしれません。確かにそのように考えると分かりやすく思える点はあるのですが、実際には、IFRSが企業の清算価値、期末に企業を精算した場合の価値を求めようとしているわけではありません。

ファイナンス理論の考え方で、公正価値というのは、端的に言って時価ということですが、将来生み出すキャッシュ・フローを現在の価値に置き換えたものとされています。公正価値による評価を広く採用することで企業の将来キャッシュ・フローをB/S上に表現しようとしているわけです。この将来キャッシュ・フローこそが、投資家の経済的意思決定のために必要な情報なのです。IFRSでは、過去や現在というより、将来どうなるのか、ということを判断するために、必要な情報を提供することを求めているわけです。

IFRSの基本をここで改めて考え直してみると、意外と見落とされている重要なポイントが隠されています。時には基本に立ち返ることも重要ではないでしょうか。


 


野口由美子



2011年3月28日月曜日

会計システムのIFRS対応~複数帳簿と単一帳簿 (その2)

イージフの松岡です。前回からの続きで、会計システムのIFRS対応の2パターンについてさらに掘り下げ、連結決算手続きを親会社と子会社でどのように分担するかについて解説します。


 


複数帳簿方式


最初に、グループ各社がローカル基準とIFRSの元帳を持つ複数帳簿方式の連結決算手続きを説明します。各社は、IFRS元帳から作成したIFRSベースの個別財務諸表を連結パッケージとして親会社に提出します。親会社の連結チームでは、各社のIFRSベースの個別財務諸表を連結会計システムに取り込んでIFRSベースの連結財務諸表を作成します。


この方法は、親会社の連結チームとグループ各社での作業負担を小さくできますが、グループ各社に、新しい会計システムを導入しなければならないため、システムへの投資負担は、大きくなります。


 

単一帳簿組替方式


次に、グループ各社がローカル基準の元帳のみを持ち、連結決算手続きの中でIFRSへ組み替える方式を説明します。この場合、親会社の連結チームで組み替える方法と、グループ各社で組み替える方法の2通りがあります。


まず1つ目、連結チームがIFRSへ組替える方式を説明します。これは、グループ各社で、ローカル基準で個別財務諸表を作成して、それを親会社の連結チームへ提出し、親会社の連結チームでそれをIFRSベースの財務諸表に組み替えを行い、連結会計システムに取り込んでIFRSベースの連結財務諸表を作成するというものです。


この方法は、親会社の連結チームの作業負担が大きくなるというデメリットがありますが、グループ各社は、今まで通りの決算書を作成するだけなので、グループ各社の作業負担を小さくできる、というメリットがあります。


 

次に、グループ各社がIFRSへ組替える方式を説明します。これは、グループ各社が、ローカル基準の個別財務諸表をIFRSベースに組替えて、それを親会社の連結チームへ提出し、親会社の連結チームは、連結会計システムに取り込んでIFRSベースの連結財務諸表を作成するというものです。


この方法は、親会社の連結チームの作業負担を小さくできますが、逆に、グループ各社で組み替え作業が発生するため、グループ各社の作業負担が大きくなります。


 

EUの傾向を踏まえての検討ポイント


この中で、EUの企業が多く採用している方式はどれでしょうか?


単一帳簿組替方式の2パターンが主流だそうです。親会社の連結チームで組み替える方式か、グループ各社で組み替える方式です。日本企業においても、EU同様にこの2つが主流になると思います。


複数帳簿方式が採用されない要因として、グループ全社の会計システムを更新するのは、コストと時間がかかることがネックになることがあげられます。連結会社数が多く手作業での組み替えでは不可能な大企業は別として、中堅上場企業では、コストベネフィットの観点から導入に至っていないようです。


 

連結子会社が10社以下であれば、単一帳簿方式の親会社で組み替える方法が、ベストでしょう。親会社の連結チームは、いずれにせよIFRS導入に向けて人的リソースを拡充することになるので、追加的な負荷も吸収できます。また、組み替え作業を連結チームに一元化することで、連結調整の品質を一定に保つことができ、さらに、その組み替えの過程で子会社の決算書を詳細に検討することで子会社管理にも資するというメリットがあります。


 

いずれにせよ、各社の企業規模や子会社管理のあり方によってベストな選択肢は異なります。それぞれのメリット・デメリットを勘案して、グループ全体でもっとも適した方法を採用することが必要になります。


 

松岡 佑三



2011年3月22日火曜日

会計システムのIFRS対応~複数帳簿と単一帳簿 (その1)

イージフの松岡です。


今回から2回にわたり会計システムのIFRS対応について解説します。


ローカルの個別、IFRSの連結


IFRSが適用されるのはあくまでも連結財務諸表であり、グループ各社の個別財務諸表については会社法や税法の関係から、当面IFRSは適用されず、日本基準により作成されます。また在外子会社についても、日本と同様に個別財務諸表は現地ローカル基準しか認められていないことが少なくありません。


よって、IFRS適用後は、個別財務諸表は日本基準および現地ローカル基準(以下、ローカル基準)により作成し、連結財務諸表は、IFRSにより作成することになります。


会計システムのIFRS対応とは、単にIFRSに対応できるシステムを導入することのみならず、ローカル基準にも対応できるようにすることをいいます。IFRSとローカル基準への対応に関しては、複数帳簿方式と単一帳簿組替方式という2つのパターンに大別することができます。


 

複数帳簿方式


複数帳簿方式は、各社で取引の原始記録を元帳に転記する段階からローカル基準とIFRSの両方で記帳する方式です。ひとつの取引について、ローカル基準での仕訳とIFRSでの仕訳を生成し、それぞれの元帳に転記します。各社は、ローカル基準とIFRSの2つの元帳をもつことになります。


ローカル基準の個別財務諸表を作成する際にはローカル元帳から作成し、IFRSベースの連結財務諸表を作成する際にはIFRS元帳から作成します。元帳の段階から両者が分けられているので、ローカル基準とIFRSで組替えを行う必要がなく、決算時の作業負荷が抑えられ財務諸表を迅速に作成できる点がメリットです。一方、複数元帳に対応した会計システムを導入するには、時間とコストがかかる点がデメリットです。


  


単一帳簿組替方式


単一帳簿組替方式は、各社で従来通りローカル基準で取引の原始記録を元帳に記帳し、連結財務諸表作成に際しては、連結決算手続の中でローカル基準からIFRSへ組み替える方式です。


これは、単体会計システムの改修を必要としないため、システム投資負担と業務プロセスの変更を回避ができる点がメリットです。一方、IFRSベースの連結財務諸表を作成するのにローカル基準からの組み替え作業を必要とするので、連結決算手続きに工数と時間がかかる点がデメリットです。




理想は複数帳簿、現実的には単一帳簿 


今後も毎期継続していくものなので、可能ならばシステム対応してスピーディーに処理できる複数帳簿方式を採用することが理想的ですが、導入のハードルが高いことから、多くの企業にとっては単一帳簿組替方式が現実的な対応方法になると思います。


次回は、上記の2パターンについてさらに掘り下げ、連結決算手続きを親会社と子会社でどのように分担するかについて解説します。


 

松岡 佑三



2011年3月14日月曜日

結果だけを知りたい投資家、プロセスを管理する管理会計

イージフの松岡です。


 2月14日のエントリーより、IFRS時代の管理会計の続きです。


 これまでの日本基準では財務会計をそのまま管理会計に用いても大きな問題は生じませんでしたが、IFRS導入後はそうはいきません。以下、IFRSの特徴である資産・負債アプローチと時価主義に焦点を当てて、財務諸表の性質(意味するところ)の変化が管理会計に与える影響を解説します。


 


資産・負債アプローチ


資産・負債アプローチでは、まず資産・負債の定義を明確に定め、その差額として純資産を定義します。そして、純資産の前期からの増加額を利益とします。BSが主でPLが従です。BSで算出される純資産から従属的にPLの利益は算出されます。


株価に関心がある投資家からは、財務諸表はその会社の株価の参考情報として有用であることを望みます。資産・負債アプローチは、株価の参考情報として最も基本となる純資産を正確に算定することに主眼を置いています。


このアプローチは、管理会計としてはどうでしょうか?管理会計で使われる資料といえば、部門別PLや製品別PLが頭に浮かびます。これらに象徴されるように管理会計では、プロセスであるフロー(利益)に着目しています。ストック(純資産)はフローの結果であって、フローこそが管理の対象であるためです。


 


時価主義


 IFRSでは、広範囲にわたって時価会計を求めています。例えば、固定資産の時価評価も可能であり、ブランド価値を時価評価する考えもあり、金融商品は基本的にすべて時価評価であり、負債についても時価評価対象となっています。これは、先の資産・負債アプローチとも整合する考え方です。その時々の時価(公正価値)を重視して、ある時点の資産・負債を正確に算定することで、ある時点の純資産を正確に算定できるようにしています。


こうして作られる財務諸表は、企業の瞬間的な公正価値を示すものとなります。もし、これを管理会計にも用いたとすると、決算日の純資産が最大化されるように短期的な利益の追求が目標となってしまいます。


日本基準では、時価会計が強制されているのは有価証券くらいであり、固定資産も負債も取得原価で評価されています。結果、毎期の利益が比較的安定し、長期的視点にたった経営が自然と志向されてきました。


 


フロー志向の管理会計はストック志向のIFRSには馴染まない


日本基準は、期間損益計算と取得原価主義をキーワードとしており、各期の予算、損益管理を重視する内部管理目的の管理会計と親和性が高かったといえます。


一方、IFRSは資産・負債アプローチと時価主義をキーワードとしており、投資家の目線から投資価値評価のために純資産が重視されており、利益は純資産の差額として算定されるにすぎず、利益獲得のプロセスが見えづらくなっています。


以上の観点から、資産・負債アプローチと時価主義をとっているIFRSでは、フローを管理する管理会計とは馴染まないということができます。経営者がマネジメントできるのは株主価値という結果に至るプロセスであるところ、IFRSではプロセスとしての収益・費用及び利益情報が見えにくくなっており、必ずしも経営管理に有用な情報とはなっていません。そこで、IFRS時代には各社がそれぞれ自社にあった管理会計をもつ必要があるのです。


松岡 佑三



2011年3月7日月曜日

過年度遡及修正についての日本基準とIFRSの違い

イージフの野口です。
日本基準のコンバージェンスはIFRSとの差異を解消するために進められています。いろいろな基準が次から次へと公表されていますが、最近の会計基準は財務諸表の表示に関連したものが多くなっています。「包括利益の表示に関する会計基準」や「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」がそれに該当します。

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」については、過年度遡及修正が導入されるところが非常に影響が大きいところだと思います。この会計基準により、会計方針の変更と表示方法の変更については遡及修正が必要になります。会計上の見積りの変更については、遡及修正が不要です。

そこで、何が会計方針の変更で何が会計上の見積りの変更であるかは、実務上非常に重要な問題になってきますが(表示方法の変更については分類が難しいことはないと思います)、この分類は意外と明確に判断できるものではなく、難しいのです。

実は、IFRSともこの考え方には違いがあります。コンバージェンスの目的で作られた会計基準といっても、日本基準はこれまでの日本での考え方を踏襲しているため、このような差異が残っています。会計基準の中で紹介されていますが、減価償却方法がこの違いを端的に表しています。

減価償却方法の変更は、IFRSでは会計上の見積りの変更としていますが、日本基準ではこれまでの日本基準の考え方を踏襲し、会計方針の変更に分類されます。ということは、日本基準では減価償却方法の変更を行った場合、会計方針の変更となるので遡及修正が必要となると考えられますが、会計基準では、会計方針の変更と会計上の見積りの変更の区別が困難な場合として、遡及修正を求めない、という説明をしています。従来の考え方を変えないが、取り扱いはIFRSとの整合を優先するということになります。いいところ取りをしているような格好になっているのですが、非常に難しい話です。実際これまでの実務でも、何を会計方針として、何を見積りとするのかは、非常に解釈が難しかったのですが、これまで以上に判断に迷うことになります。

このように日本で進められているコンバージェンスというものは和魂洋才というのか、日本基準独自の考え方を維持しつつ、IFRSと整合した取り扱いになるように規定する、しかも、日本の実務に配慮した指針や具体的基準等も設けるという非常に(ある意味ではよくできている)複雑なものとなっているように思います。

このような複雑になった日本の会計基準に対応し、さらにはIFRSへの適用を見据え準備を進めていくための実務書を紹介します。

武田雄治さんの「包括利益・過年度遡及の決算対応—財務諸表の表示が変わる!」(中央経済社)です。武田さんは開示という観点で決算早期化、IFRSに至るまで、いろいろな問題を論じています。実務では、決算作業が順調に進んでも最後の開示作業でミスが生じて短信や有報で間違えてしまうということがよくあります。理論的な問題をおさえるだけでなく、そのような実務の課題へも配慮されている本だと思います。実務に携わる方には非常に参考になるのではないでしょうか。


野口由美子


 



2011年2月28日月曜日

IFRS導入のロードマップ

イージフの野口です。
このブログでは、IFRSについて個別の基準書や公開草案などの解説が中心に情報発信をしていますが、最近はいかに対応するかという方法論も紹介しています。というのも、知識を得ることは必須なのですが、どうやって進めるか、というところはまだまだ手探りな状態である場合が多いように感じます。

そこで、「IFRS導入のロードマップ」というタイトルの記事を、ITmediaエンタープライズで連載させていただいています。この連載では、IFRS導入のステップとしてよく紹介される調査計画、計画実行、運用監視の各段階において、具体的に何をすればよいかということを解説しています。ただ単に基準書の内容に焦点を当てるのではなく、システム面や内部統制の観点からも、必要な備え、対応のポイントを説明します。

IFRS導入においても、適切な判断を行なえるように、いかに情報を収集、整理できるか、実行のためのリソースを確保できるか、適時振り返りを行ない改善できるか、ということが大切になります。このことは他のプロジェクトでも変わらないと思います。闇雲に対応を進めて、実務が混乱することは避けなければなりません。それには具体的に何をするべきかということを理解した上で、着実に準備を進めていくことが不可欠なのです。

そうはいっても、改訂を控えている基準書がある、まだまだ動向が不透明、といったなかなか動き出しにくい要因もあります。そのような不確定な要因についても、何が確定していることとしていないことを明確にして、スタンスを決めておくことが必要です。そうすることで、不確定な状況でも、手戻りすることなく、対処できるのです。

現在は第1回の記事が掲載されていますが、連載は全部で8回の予定です。
ITmediaでは、当ブログの記事も掲載していただいています。ブログ共々よろしくお願いします。

野口由美子



2011年2月21日月曜日

IFRSとITシステム

イージフの野口です。今回はシステム対応について考えてみたいと思います。
IFRSを企業で導入するにあたって、システムでの対応は非常に重要な問題です。現在の会社業務というのは、ITへの依存度が高くなっているので、当然のことだと思います。

しかし、システムの問題となると、全面的にシステムを刷新する場合や一部の改修に留める場合などいろいろな選択肢があります。業務の効率化を狙って積極的にシステムに手を入れていく場合もありますが、コスト負担を避けるためにできるだけシステムは現状に留めるという場合もあります。最低限の対応だとどれくらいのことが必要で、さらに上を目指そうとするとどういうことができるのか、いずれの選択肢を選ぶにしても知っておく必要があると思います。

まず、IFRS適用により複数会計基準への対応をどのように行なっていくか、考え方としては、大きく分けて以下の2つがあります。
1. 記帳は日本基準もしくはIFRSベースのどちらかで行ない、まとめて組替
2. 記帳を日本基準とIFRSベースの両方で行なう

さらに細かくパターンを分けることもありますが、いずれにしても取引ごとの記帳を1つの基準でやるのか、複数基準でやるのか、というところが一番大きな違いとなります。よくシステム対応で話題になるのが複数帳簿です。複数帳簿は必要なのか、不要なのか。

複数帳簿というのは上記の2のやり方にあたるわけですが、実は今までそれほど一般的な方法ではなかったのではないかという印象を受けます。海外のベンダーは日本より先にIFRSを適用している国々でシステムを提供していたわけですが、かれらにとっても複数帳簿で全面的に対応しているバージョンを早くから提供していたわけではないようです。しかし、最近の動向としてはグローバル展開している企業がグループの経営管理を高度化していくために、複数帳簿を導入する事例が出てきているようです。

複数帳簿を導入すると随時IFRSベースの数値が確認できるわけですから、タイムリーな管理が可能となりますし、統一したシステムとしてグループに導入すれば業務の標準化、効率化も図れるメリットがあります。しかし、導入の負担が大きくなるので、そのコスト負担をどのように考えるかは企業によって異なってくると思います。

複数帳簿ではなく、記帳はあくまで1つの基準で行なう場合は、決算の組替処理などの手続を行なうことでもう1つの会計基準による数値を出すことになります。日々の記帳を日本基準で行なうか、IFRSで行なうか、という選択肢があります。
IFRSで記帳を行なうとすれば、日本以外の国にあるグループ会社とも業務の標準化ができ、管理上は望ましいといえますが、税法などのことを考えると日本基準での記帳を選択する企業の方が多いのではないでしょうか。

多くの国内外のベンダーがこれら両方の選択肢をユーザーに提供できるような態勢を整えるようです。とはいえ、データの持ち方やグループ会社間のデータのやり取りの仕方など、各社いろいろな特色を持って取り組んでいます。システムの対応については時間がかかる場合が多いため、早い段階からの情報収集が大切です。

(今回の記事は下記の書籍を参考にしました。さらに詳しい情報も載っていますので興味のある方は、参考にしてください。)
IFRSシステム対応の実務(日本実業出版社)日本オラクルIFRS研究会


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野口由美子



2011年2月16日水曜日

aegif主催セミナー IFRSを見据えた連結管理と内部統制

イージフの野口です。セミナーのお知らせです。


IFRSの導入に向けての準備を始めている企業は非常に多く なってきました。取り組みを始めた企業の中で重要視されているテーマの1つに連結グループの決算体制をどうするか、という問題があります。今回のセミナー 第1部では、この問題について論点を整理し、どのような対応策をとるべきであるか解説していきます。


また、重要ながらも意外と議論が進んで いないテーマもあります。内部統制については議論があまりなされていない状況ですが、実際の現場では必ず対応が必要となります。そこでセミナー第2部では 内部統制上の対応を考える上で必要な知識を整理します。また、現在の日本の内部統制の制度動向も解説し、今後の方向性を説明します。


IFRSについてはいろいろな切り口がありますが、今回のセミナーでは今後必ず必要となってくる視点を提供し、自社の取り組みへの参考としていただきたいと思います。


 


日程:2011年03月16日(水)


時間:13:30〜16:15(13:15開場)


会場:ITS市ヶ谷健保会館(東京都新宿区市谷仲之町4-39)


参加費:無料 事前登録制


定員:30名


ご興味のある方は弊社HPにてお申し込みください。よろしくお願いいたします。


野口由美子



2011年2月14日月曜日

IFRS時代の管理会計

IFRSを一言で表すならば、投資家のための世界共通の財務報告基準です。IFRSの目的は、ルールを統一することによって、グローバルな資本市場において企業間の比較可能性を向上させることにあります。制度はそこに参加する者すべてが、同じルールに従うところに意義があります。上場企業は、株式市場に参加するために好むと好まざるとに関わらず、世界共通ルールのもとで財務諸表を作成し、開示しなければなりません。


上場し続ける限り資本市場が要請する制度会計への対応は必須ですが、それだけで十分でしょうか?財務諸表には、経営者の説明責任を果たす機能だけでなく、経営の羅針盤としての機能もあります。IFRSベースで作成された財務諸表は、そのまま管理会計に使えるのでしょうか? 


 


現行の日本基準では、財務諸表の利用者として、経営者、債権者、税務当局、投資家と様々な利害関係者を想定しています。利害関係者は、異なる情報ニーズを持っています。経営者は、経営管理に役立つ情報を、債権者は、企業の債務弁済能力を、税務当局は、企業の租税負担能力を、投資家は、将来の企業価値の予測に役立つ情報を、それぞれ求めています。したがって、日本基準は、多種多様な利害関係者の要請に応え、納得が得られるように基準の設定をしてきました。


このように従来の日本基準では、財務諸表の利用者として経営者も想定されていたがために、制度会計で作成された財務諸表をそのまま管理会計に用いたとしてもそれほど不都合は生じませんでした。


 


一方、IFRSでは、財務諸表の利用者を「第一義的には投資家を対象としている」と明示しています。また、「IFRSの目的は、世界の一体化している資本市場に財務報告に関する共通の言語を提供することであり、それによって取引が世界中のどこで起ころうとも関係なく、最善の方法で処理することが可能になる」とディビット・トゥイーディーIASB議長が述べているように、IFRSが念頭におくのは資本市場の共通言語です。基本的に投資家以外の利害関係者については、考慮しません。


つまり、IFRSは投資家が必要とする情報ニーズを満たすため、外部報告目的に特化したルールといえます。よって、純粋な制度会計の基準であるIFRSをそのまま企業内部の管理会計に用いることには無理が生じ、経営に混乱をきたすでしょう。


 


IFRS時代にあっては投資家のための制度会計と経営者のための管理会計は別物と認識する必要があります。IFRS対応というと、IFRSに準拠した財務諸表を作成する体制を整備すること、と捉えられがちですが、管理会計についての対応も考えておかなければなりません。IFRSを契機に、各企業は自社の実情にあった管理会計の手法を今一度見直すことになるでしょう。


次回は、制度会計がIFRSに変更となることで生じる管理会計上の問題点についてさらに考察していきたいと思います。


松岡 佑三



2011年2月7日月曜日

IFRSに着手するのはまだ早いと考えるなら

イージフの野口です。

IFRSが日本でも注目され、いろいろな取り上げ方をされるようになっていますが、そもそもまだ日本で適用することが確定していない現時点で、適用に向けて取り組むのはまだ早い、とお考えの方は多いと思います。しかし、そう考えてはいるものの、全く無視するわけにもいかず、どのようなスタンスで臨むべきか実際は決めかねているという状況にある方もおおいのではないかと思います。

実際、私たち株式会社イージフでは、企業のIFRS診断を行なってきていますが、すべての企業が先を急いで対応しなければならない、という結論に至るわけでもありませんでした。そもそもIFRS以前に社内の他の問題に取り組まなければならない、周りの対応状況をみて考えたい、などと各企業いろいろな事情があって、着手ができないこともあるようです。

しかし、そのような段階でも書籍や雑誌などでIFRSの知識を深めていこうとすると、意外とそこには勘違いや説明の不十分なところがあり、IFRSを実務で適用できるところまで理解していくというのは難しい場合が多いと思います。解説本はたくさん出ていますが、それらは参考までにしかならず、結局基準書の原文にあたり考えていくしかないようです。

非常にIFRSは取っ付きにくい問題、と思われている方が多いのではないでしょうか。そこで、弊社では、その「取っ付きにくさ」を打ち消してIFRSに取り組むきっかけとなるようなワークショップを開催することにいたしました。このワークショップでは、弊社の公認会計士が個別に支援して、希望の分野について自社の会計処理とIFRSの差異を洗い出し、その影響を特定していきます。2時間のワークショップで、1つのトピックについてはIFRSの正確な理解と、自社が対応した時に影響把握ができます。IFRS対応の一部を体験する入り口としてやってみると、IFRSの実務がどのようなものであるか、肌で感じることができると思います。

プログラムは4つ用意してあり、
初度適用
有形固定資産
収益認識
無形資産(開発費)
のうちからご希望の者を選んでいただきます。
開催は2月中のご希望の日程で行ないます。

詳しい内容、お申し込みは弊社HPよりお願いいたします。

野口由美子



2011年1月31日月曜日

日本でのIFRS任意適用会社

イージフの野口です。


日本におけるIFRS適用については、2012年の金融庁の判断まで最終的な結論はでません。しかし、日本国内も確実にIFRSへ動いていると思います。

現在、日本でもIFRSの任意適用は認められており、第1号事例は、ご存知の方も多いと思いますが、日本電波工業です。日本電波工業は日本初の適用ということで非常に注目されました。しかし、以前から独自に作成しているアニュアルレポートをIFRSで作成していたため、初度適用の事例としては参考にならないということもあります。より多くの企業が適用を行ない、日本の実務での定着が望まれていますが、最近、任意適用を発表する企業が増えてきました。以下のような企業があります。

住友商事  2011年3月期から
HOYA  2011年3月期から
日本板硝子  2012年3月期から
SBIホールディングス  2013年3月期から

上記の企業のうち、HOYAは2010年3月期のアニュアルレポートをIFRSベースで作成し、公表しています。また、日本市場ではありませんが、三井住友フィナンシャルグループはすでに2010年10月にニューヨーク証券取引所への上場準備資料をIFRSベースで作成し、公表しています。

東証の調査では97社が任意適用を検討しているということなので、今後このような動きはグローバル企業を中心に活発になるのではないかと思います。特に米国基準を適用している企業の場合、日本では米国基準を使い続けることはできなくなってしまうので、対応は必須になります。

会計基準は実際に企業で適用されて、洗練されていくものだと思います。このような動きが活発になれば、日本でもIFRSは定着すると思います。


 


野口由美子



2011年1月24日月曜日

強制適用の方法について

イージフの松岡佑三と申します。今回は松岡のエントリーとなります。


昨年は、2009年6月の金融庁の中間報告を機にはじまった監査法人や情報システムベンダのIFRS熱に疲れが見えてきた年であったと思います。業界を上げてIFRSを盛り上げようとする側へのアンチテーゼとして学者やシンクタンクがIFRSに批判的な見解を述べることが増えました。


IFRSを無批判に受け入れることも、IFRSの本質を理解せずに反対することも、どちらも生産的なことではないので、我が国におけるIFRS導入について賛否様々な意見が交わされることが有益です。今議論すべきは、どう導入するかの方法論ではなくて、IFRSがどういうもので日本はどうあるべきか、ということでしょう。


今回は、その中で強制適用の方法について考えてみたいと思います。


1.一斉適用ではなく段階適用


我が国のIFRS導入に際して全上場企業への一斉適用ではなく、例えば東証1部のみ先行適用し、その他の市場には段階適用していくことは選択肢としてありうるのではないでしょうか。先行適用企業の事例を参考とすることによって、これに続く企業は、対応方法や対応コストについて予測を得ることができ、余裕をもって取り組むことができます。


(1)投資家と企業のニーズ


東証1部の株式売買高に占める外国人比率は53%です(2009年度)。一方、ジャスダックの株式売買高に占める外国人比率は23%です(2009年度)。IFRSの目的は世界共通ルールによる投資家への情報提供であるので、相対的に海外の投資家からの情報ニーズが少ない市場への適用は優先度が下がると考えられます。


また、企業側にとっても国際的な資金調達ニーズがありIFRSを導入するメリットのあるグローバル企業は全上場企業の一部であり、国内で間接金融中心に資金調達を行っている企業にとっては、IFRSを積極的に導入する理由はありません。


(2)日本市場の地盤沈下を防ぐ


最近、MBO等で非上場化する企業が増えています。それらの多くは上場維持コストの上昇を理由に挙げています。中堅・中小の上場企業にとって、IFRS対応は上場維持コストを大幅に上昇させるでしょう。IFRS強制適用を機に上場維持を断念する企業が続出する可能性を否定できません。上場企業数が減少していく日本市場は、投資家にとって魅力が薄いものとなり、見放されてしまう懸念があります。


2.株式公開企業は任意適用


ただ、新興市場は段階適用にするといってもこれから新規上場をする企業にはIFRSの任意適用を認めることが必要でしょう。株式公開時にこそ資金需要は一気に高まるのであり、その時にこそ日本だけでなく世界中からリスクマネーを集めた方が効果的です。


また、株式公開時は日本基準で、数年後にIFRS強制適用ということになれば、両基準の対応コストが発生することになり、株式公開に水を差すことになりかねません。ただでさえ株式公開企業数が低迷している日本市場にとって、これ以上株式公開を抑制する施策を実施すべきではありません。




いずれにせよ、日本にとっては外に向かってグローバル経済での流れに乗り遅れることなく、内に対して日本企業の負担を抑えつつ日本市場の活性化を促すという難しい舵取りが続きます。今年もIFRSに関して、世界及び日本で様々な動きがあると思いますが、表面的な事象に惑わされることなく本質を考えて意見発信をしていきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。


松岡 佑三



2011年1月17日月曜日

第5回CGSAセミナー2010 IFRSの適用に向けたITシステムの対応はどうあるべきか 

イージフの野口です。今回はセミナーのご案内です。


中央大学会計大学院でIFRSセミナーが開催されます。今回はITシステムがテーマです。IFRS導入に際しては、システムの問題は避けて通れません。しかし、システム面の問題の検討はまだまだ議論が進んでおらず、どう考えたらいいものか、対応に困っている方も多くいます。今回のセミナーでは、国内外のERPベンダーの方がIFRSに対する取り組みについて講演される予定です。多くの方にとって参考となる興味深いお話が聞けるのではないでしょうか。


【第5回CGSAセミナー2010詳細】

日  時:2011年2月5日(土)
時  間:13:30~15:00
場  所:中央大学市ケ谷田町キャンパス
参加費:無料
定  員:70名 (先着順)
テーマ:「IFRSの適用に向けたITシステムの対応はどうあるべきか
~ 国内外のリーディングERPベンダーの対応方針と実践」


お申し込みは、CGSAのHPからお願いいたします。


 


野口由美子


 


 


 



IFRSヘッジ会計はどう変わったか ②

2010年12月、IASB(国際会計基準審議会)はヘッジ会計についての公開草案を公表しました。

この公開草案の中でも特に注目すべき点について説明していきたいと思います。前回の記事では、ヘッジ会計のモデルと公正価値ヘッジの扱いについて紹介しました。今回はその他にも実務上特に影響があると考えられるところを取り上げたいと思います。

ヘッジ対象
従来のIFRSではデリバティブはヘッジ手段には指定できるものの、ヘッジ対象にすることはできませんでした。また、ヘッジするリスクは非金融項目全体を指定しなければなりません。
しかし、今回の改訂では、デリバティブもヘッジ対象とすることができます。デリバティブとデリバティブでない商品の組み合わせや、一部分や一定割合といった部分的な適用も可能となります。また、リスク構成要素については、金融項目または非金融項目のどちらでもよく、契約で特定されている必要もありません。
この点について、外貨建てで変動金利の借入金を例に考えてみます。この借入金には、為替リスクと金利リスクがあります。企業によっては、為替と金利のリスクを一緒に借入期間全部についてヘッジしようとするかもしれませんが、為替については全期間レートを固定して、金利については全期間を固定するのではなく、短期で見直しを行なう(利息を固定するのは借入期間より短くする)ということを行なう場合も考えられます。公開草案の提案では、このような場合も、それぞれのリスクに対してヘッジ会計を適用できるようになります。

ヘッジの有効性テスト
ヘッジの有効性テストというのは、ヘッジ対象とヘッジ手段がきちんとヘッジ関係にあること(ヘッジ対象の価値などの変動がヘッジ手段によって相殺されている関係にあること)を検証することです。ヘッジ会計を適用する時と、その後ヘッジ会計を中止するまで継続して行なわなくてはなりません。
このテストについては、従来は将来に向かうものと遡及的なものと両方の評価が必要でしたが、公開草案では将来に向けて行なえばよいものとされています。また、これまでの80%から125%という数値基準は廃止され、このような数値や方法は定めないことになります。
特に80%から125%という基準は現在の日本基準でも採用されていますが、近年経済環境の急激な変化が突然起きる影響もあって、この基準から外れてしまうヘッジは意外に多かったのではないかと思います。この数値基準自体には理論的な裏付けはなく、廃止されることになりました。

このように、ヘッジ会計は簡素化され、より柔軟な対応ができるようになりました。銀行等の金融機関においては特に恩恵を得ることができると考えられますが、一般事業会社においても、ヘッジ活動を行っているケースは意外と多く、影響があるのではないでしょうか。


野口由美子


 



2011年1月11日火曜日

2011年、IFRSに何が起きるか

あけましておめでとうございます。昨年は非常に多くの方に当ブログを見ていただけるようになり、うれしく思っています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。今年2011年は、IFRSにとっては非常に重要な年です。今年IFRSを巡って、以下のような重要なイベントがあるのです。

FASB(米国財務会計基準審議会)とのコンバージェンスが6月に完了予定
2002年のノーウォーク合意後、IASB(国際会計基準審議会)とFASBは、高品質な世界共通の会計基準の作成を目指してきました。その作業が今年の6月に完了となります。IFRSと米国基準とのコンバージェンスは、作業は難航し、金融危機等の世界情勢の影響も受けるなど、紆余曲折がありました。
これまで世界的に優れた会計基準というと米国基準を考えられることが多く、日本においても米国基準に対する認知度は高く、IFRS自体も米国基準に近い規定も多いことから、米国基準とIFRSの違いをあまり感じていない方も多いと思います。
しかし、IFRSと米国基準の考え方には隔たりもあり、その溝を埋めていくのは非常に難しいのです。例えば、公正価値評価という点に関して、金融商品の適用と考えると、米国基準では広くすべての金融商品を公正価値評価することを指向しますが、IFRSでは評価に一定の要件を満たすものについては公正価値による評価をしません。その上、IFRSでは公正価値で評価する金融商品であっても評価差額をその他包括利益とすることもできます。このような違いは、会計の理論的な背景の違いもありますが、アメリカ一国内で取り決めているのと世界中の国々との利害調整の結果では、会計基準が求める内容は異なってきます。
コンバージェンスは容易に達成できるものではなく、多くのプロジェクトでスケジュールの遅れも発生しましたが、プロジェクト間で優先順位をつけることで今年6月の完了期日は遅らせることなく進められています。特に、収益認識、リース、金融商品は抜本的な改正になる上に、IFRSを適用する企業のほぼすべてに、何らかの影響があると考えられます。これらの基準書の改訂も、今年の6月までに行なわれることになります。

アメリカのIFRS採用についてSECが意思決定
アメリカのIFRS採用の可否については、世界中から注目されているところです。アメリカがIFRSを採用することになれば、IFRSの発展に大きく寄与することになるでしょうし、その一方で今後のIFRSのあり方が変わってくることも考えられます。IFRSの採用にはコンバージェンスの完了が条件となっており、現在のIFRSにも影響を与えているとも言えます。
SECの姿勢としては当初よりIFRSに対して後ろ向きになったのではないかという、見解がありますが、必ずしもそういうことではないと思います。確かに、当初より導入のタイミングを後ろに伸ばそうとする印象を受けます。しかし、国際的な市場においてアメリカの地位をいかに維持、向上させるかということについて、IFRSを採用するという戦略は基本的に維持されていると思います。
また、日本は2012年にIFRS適用について最終的な決定を行なう予定ですが、それもこのアメリカの動向を見極めてから判断する、ということを考えてのことです。

IASBの議長を始めとするボードメンバーが任期終了
IASBは、デービッド・トゥイーディー議長など一部のメンバーは、今年の6月で任期が満了となります。再選はないので、後任の議長のもと新しい体制が構築されることになります。基本的には新しい体制においてもこれまでの姿勢が引き継がれることになると思いますが、議長が変わることは少なからず影響が出てきます。
現在のデービッド・トゥイーディー議長の在任期間にIFRSが急速に広まっており、これは議長の手腕によるところが大きかったのではないかと私は思います。多くの国にとって受け入れられる会計基準であるために、妥協できるところは妥協して、取り込んでいこう、という姿勢が感じられます。そのために、一方ではIFRSが本来採用している理論を歪めてしまっている部分もあるようにも思えます。しかし、このような柔軟性があったから、ここまでの急速な普及が実現したのではないでしょうか。このような状況を考えると現在のIFRSは少し本来(理論的に)あるべきIFRSとは違うものなのかもしれません。今後IFRSがどのような方向に進んでいくかは、新しいメンバーに託されていると思います。

このように2011年はIFRSにとってとても重要な年となります。当ブログでも今年もしっかり動向を追っていきたいと思います。
ところで、当ブログは私㈱イージフの野口が担当してきましたが、今後は弊社の会計士松岡も執筆陣に加え体制を強化していきます。というのも、私が今年は産休をいただくことになり、執筆者を増やすことでより幅広い情報発信を進めていくためです。私も休暇中、時々ブログを更新させていただきますし、松岡もすでに去年からブログの構想を練っています。さらに充実したブログを目指していきます。今後ともIFRS of the dayをよろしくお願いいたします。



野口由美子