2011年1月31日月曜日

日本でのIFRS任意適用会社

イージフの野口です。


日本におけるIFRS適用については、2012年の金融庁の判断まで最終的な結論はでません。しかし、日本国内も確実にIFRSへ動いていると思います。

現在、日本でもIFRSの任意適用は認められており、第1号事例は、ご存知の方も多いと思いますが、日本電波工業です。日本電波工業は日本初の適用ということで非常に注目されました。しかし、以前から独自に作成しているアニュアルレポートをIFRSで作成していたため、初度適用の事例としては参考にならないということもあります。より多くの企業が適用を行ない、日本の実務での定着が望まれていますが、最近、任意適用を発表する企業が増えてきました。以下のような企業があります。

住友商事  2011年3月期から
HOYA  2011年3月期から
日本板硝子  2012年3月期から
SBIホールディングス  2013年3月期から

上記の企業のうち、HOYAは2010年3月期のアニュアルレポートをIFRSベースで作成し、公表しています。また、日本市場ではありませんが、三井住友フィナンシャルグループはすでに2010年10月にニューヨーク証券取引所への上場準備資料をIFRSベースで作成し、公表しています。

東証の調査では97社が任意適用を検討しているということなので、今後このような動きはグローバル企業を中心に活発になるのではないかと思います。特に米国基準を適用している企業の場合、日本では米国基準を使い続けることはできなくなってしまうので、対応は必須になります。

会計基準は実際に企業で適用されて、洗練されていくものだと思います。このような動きが活発になれば、日本でもIFRSは定着すると思います。


 


野口由美子



2011年1月24日月曜日

強制適用の方法について

イージフの松岡佑三と申します。今回は松岡のエントリーとなります。


昨年は、2009年6月の金融庁の中間報告を機にはじまった監査法人や情報システムベンダのIFRS熱に疲れが見えてきた年であったと思います。業界を上げてIFRSを盛り上げようとする側へのアンチテーゼとして学者やシンクタンクがIFRSに批判的な見解を述べることが増えました。


IFRSを無批判に受け入れることも、IFRSの本質を理解せずに反対することも、どちらも生産的なことではないので、我が国におけるIFRS導入について賛否様々な意見が交わされることが有益です。今議論すべきは、どう導入するかの方法論ではなくて、IFRSがどういうもので日本はどうあるべきか、ということでしょう。


今回は、その中で強制適用の方法について考えてみたいと思います。


1.一斉適用ではなく段階適用


我が国のIFRS導入に際して全上場企業への一斉適用ではなく、例えば東証1部のみ先行適用し、その他の市場には段階適用していくことは選択肢としてありうるのではないでしょうか。先行適用企業の事例を参考とすることによって、これに続く企業は、対応方法や対応コストについて予測を得ることができ、余裕をもって取り組むことができます。


(1)投資家と企業のニーズ


東証1部の株式売買高に占める外国人比率は53%です(2009年度)。一方、ジャスダックの株式売買高に占める外国人比率は23%です(2009年度)。IFRSの目的は世界共通ルールによる投資家への情報提供であるので、相対的に海外の投資家からの情報ニーズが少ない市場への適用は優先度が下がると考えられます。


また、企業側にとっても国際的な資金調達ニーズがありIFRSを導入するメリットのあるグローバル企業は全上場企業の一部であり、国内で間接金融中心に資金調達を行っている企業にとっては、IFRSを積極的に導入する理由はありません。


(2)日本市場の地盤沈下を防ぐ


最近、MBO等で非上場化する企業が増えています。それらの多くは上場維持コストの上昇を理由に挙げています。中堅・中小の上場企業にとって、IFRS対応は上場維持コストを大幅に上昇させるでしょう。IFRS強制適用を機に上場維持を断念する企業が続出する可能性を否定できません。上場企業数が減少していく日本市場は、投資家にとって魅力が薄いものとなり、見放されてしまう懸念があります。


2.株式公開企業は任意適用


ただ、新興市場は段階適用にするといってもこれから新規上場をする企業にはIFRSの任意適用を認めることが必要でしょう。株式公開時にこそ資金需要は一気に高まるのであり、その時にこそ日本だけでなく世界中からリスクマネーを集めた方が効果的です。


また、株式公開時は日本基準で、数年後にIFRS強制適用ということになれば、両基準の対応コストが発生することになり、株式公開に水を差すことになりかねません。ただでさえ株式公開企業数が低迷している日本市場にとって、これ以上株式公開を抑制する施策を実施すべきではありません。




いずれにせよ、日本にとっては外に向かってグローバル経済での流れに乗り遅れることなく、内に対して日本企業の負担を抑えつつ日本市場の活性化を促すという難しい舵取りが続きます。今年もIFRSに関して、世界及び日本で様々な動きがあると思いますが、表面的な事象に惑わされることなく本質を考えて意見発信をしていきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。


松岡 佑三



2011年1月17日月曜日

第5回CGSAセミナー2010 IFRSの適用に向けたITシステムの対応はどうあるべきか 

イージフの野口です。今回はセミナーのご案内です。


中央大学会計大学院でIFRSセミナーが開催されます。今回はITシステムがテーマです。IFRS導入に際しては、システムの問題は避けて通れません。しかし、システム面の問題の検討はまだまだ議論が進んでおらず、どう考えたらいいものか、対応に困っている方も多くいます。今回のセミナーでは、国内外のERPベンダーの方がIFRSに対する取り組みについて講演される予定です。多くの方にとって参考となる興味深いお話が聞けるのではないでしょうか。


【第5回CGSAセミナー2010詳細】

日  時:2011年2月5日(土)
時  間:13:30~15:00
場  所:中央大学市ケ谷田町キャンパス
参加費:無料
定  員:70名 (先着順)
テーマ:「IFRSの適用に向けたITシステムの対応はどうあるべきか
~ 国内外のリーディングERPベンダーの対応方針と実践」


お申し込みは、CGSAのHPからお願いいたします。


 


野口由美子


 


 


 



IFRSヘッジ会計はどう変わったか ②

2010年12月、IASB(国際会計基準審議会)はヘッジ会計についての公開草案を公表しました。

この公開草案の中でも特に注目すべき点について説明していきたいと思います。前回の記事では、ヘッジ会計のモデルと公正価値ヘッジの扱いについて紹介しました。今回はその他にも実務上特に影響があると考えられるところを取り上げたいと思います。

ヘッジ対象
従来のIFRSではデリバティブはヘッジ手段には指定できるものの、ヘッジ対象にすることはできませんでした。また、ヘッジするリスクは非金融項目全体を指定しなければなりません。
しかし、今回の改訂では、デリバティブもヘッジ対象とすることができます。デリバティブとデリバティブでない商品の組み合わせや、一部分や一定割合といった部分的な適用も可能となります。また、リスク構成要素については、金融項目または非金融項目のどちらでもよく、契約で特定されている必要もありません。
この点について、外貨建てで変動金利の借入金を例に考えてみます。この借入金には、為替リスクと金利リスクがあります。企業によっては、為替と金利のリスクを一緒に借入期間全部についてヘッジしようとするかもしれませんが、為替については全期間レートを固定して、金利については全期間を固定するのではなく、短期で見直しを行なう(利息を固定するのは借入期間より短くする)ということを行なう場合も考えられます。公開草案の提案では、このような場合も、それぞれのリスクに対してヘッジ会計を適用できるようになります。

ヘッジの有効性テスト
ヘッジの有効性テストというのは、ヘッジ対象とヘッジ手段がきちんとヘッジ関係にあること(ヘッジ対象の価値などの変動がヘッジ手段によって相殺されている関係にあること)を検証することです。ヘッジ会計を適用する時と、その後ヘッジ会計を中止するまで継続して行なわなくてはなりません。
このテストについては、従来は将来に向かうものと遡及的なものと両方の評価が必要でしたが、公開草案では将来に向けて行なえばよいものとされています。また、これまでの80%から125%という数値基準は廃止され、このような数値や方法は定めないことになります。
特に80%から125%という基準は現在の日本基準でも採用されていますが、近年経済環境の急激な変化が突然起きる影響もあって、この基準から外れてしまうヘッジは意外に多かったのではないかと思います。この数値基準自体には理論的な裏付けはなく、廃止されることになりました。

このように、ヘッジ会計は簡素化され、より柔軟な対応ができるようになりました。銀行等の金融機関においては特に恩恵を得ることができると考えられますが、一般事業会社においても、ヘッジ活動を行っているケースは意外と多く、影響があるのではないでしょうか。


野口由美子


 



2011年1月11日火曜日

2011年、IFRSに何が起きるか

あけましておめでとうございます。昨年は非常に多くの方に当ブログを見ていただけるようになり、うれしく思っています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。今年2011年は、IFRSにとっては非常に重要な年です。今年IFRSを巡って、以下のような重要なイベントがあるのです。

FASB(米国財務会計基準審議会)とのコンバージェンスが6月に完了予定
2002年のノーウォーク合意後、IASB(国際会計基準審議会)とFASBは、高品質な世界共通の会計基準の作成を目指してきました。その作業が今年の6月に完了となります。IFRSと米国基準とのコンバージェンスは、作業は難航し、金融危機等の世界情勢の影響も受けるなど、紆余曲折がありました。
これまで世界的に優れた会計基準というと米国基準を考えられることが多く、日本においても米国基準に対する認知度は高く、IFRS自体も米国基準に近い規定も多いことから、米国基準とIFRSの違いをあまり感じていない方も多いと思います。
しかし、IFRSと米国基準の考え方には隔たりもあり、その溝を埋めていくのは非常に難しいのです。例えば、公正価値評価という点に関して、金融商品の適用と考えると、米国基準では広くすべての金融商品を公正価値評価することを指向しますが、IFRSでは評価に一定の要件を満たすものについては公正価値による評価をしません。その上、IFRSでは公正価値で評価する金融商品であっても評価差額をその他包括利益とすることもできます。このような違いは、会計の理論的な背景の違いもありますが、アメリカ一国内で取り決めているのと世界中の国々との利害調整の結果では、会計基準が求める内容は異なってきます。
コンバージェンスは容易に達成できるものではなく、多くのプロジェクトでスケジュールの遅れも発生しましたが、プロジェクト間で優先順位をつけることで今年6月の完了期日は遅らせることなく進められています。特に、収益認識、リース、金融商品は抜本的な改正になる上に、IFRSを適用する企業のほぼすべてに、何らかの影響があると考えられます。これらの基準書の改訂も、今年の6月までに行なわれることになります。

アメリカのIFRS採用についてSECが意思決定
アメリカのIFRS採用の可否については、世界中から注目されているところです。アメリカがIFRSを採用することになれば、IFRSの発展に大きく寄与することになるでしょうし、その一方で今後のIFRSのあり方が変わってくることも考えられます。IFRSの採用にはコンバージェンスの完了が条件となっており、現在のIFRSにも影響を与えているとも言えます。
SECの姿勢としては当初よりIFRSに対して後ろ向きになったのではないかという、見解がありますが、必ずしもそういうことではないと思います。確かに、当初より導入のタイミングを後ろに伸ばそうとする印象を受けます。しかし、国際的な市場においてアメリカの地位をいかに維持、向上させるかということについて、IFRSを採用するという戦略は基本的に維持されていると思います。
また、日本は2012年にIFRS適用について最終的な決定を行なう予定ですが、それもこのアメリカの動向を見極めてから判断する、ということを考えてのことです。

IASBの議長を始めとするボードメンバーが任期終了
IASBは、デービッド・トゥイーディー議長など一部のメンバーは、今年の6月で任期が満了となります。再選はないので、後任の議長のもと新しい体制が構築されることになります。基本的には新しい体制においてもこれまでの姿勢が引き継がれることになると思いますが、議長が変わることは少なからず影響が出てきます。
現在のデービッド・トゥイーディー議長の在任期間にIFRSが急速に広まっており、これは議長の手腕によるところが大きかったのではないかと私は思います。多くの国にとって受け入れられる会計基準であるために、妥協できるところは妥協して、取り込んでいこう、という姿勢が感じられます。そのために、一方ではIFRSが本来採用している理論を歪めてしまっている部分もあるようにも思えます。しかし、このような柔軟性があったから、ここまでの急速な普及が実現したのではないでしょうか。このような状況を考えると現在のIFRSは少し本来(理論的に)あるべきIFRSとは違うものなのかもしれません。今後IFRSがどのような方向に進んでいくかは、新しいメンバーに託されていると思います。

このように2011年はIFRSにとってとても重要な年となります。当ブログでも今年もしっかり動向を追っていきたいと思います。
ところで、当ブログは私㈱イージフの野口が担当してきましたが、今後は弊社の会計士松岡も執筆陣に加え体制を強化していきます。というのも、私が今年は産休をいただくことになり、執筆者を増やすことでより幅広い情報発信を進めていくためです。私も休暇中、時々ブログを更新させていただきますし、松岡もすでに去年からブログの構想を練っています。さらに充実したブログを目指していきます。今後ともIFRS of the dayをよろしくお願いいたします。



野口由美子