2011年5月30日月曜日

IFRS第10号 連結財務諸表

イージフの松岡です。


IASBは、5月12日に連結財務諸表を中心とした新基準を3点公表するとともに、旧基準2点を改定しました。今回はこのうち新たに公表されたIFRS第10号 連結財務諸表についての概要とポイントを紹介します。なお、これらの基準書は2013年1月1日以降開始事業年度より適用されます。


 


基準改定の背景


従前の基準では、連結範囲の判定にあたって、事業会社についてはIAS第27号「連結及び個別財務諸表」が適用され、特別目的会社についてはSIC第12号「連結-特別目的事業体」が適用されており、支配の定義が一律に定められていませんでした。また、金融危機の影響を受け、一部の事業体が連結から除外されていたことに対して多くの批判がありました。


そこで、IFRS第10号は、被投資企業の事業体の性質に関わらず、支配に基づく単一の連結モデルをすべての企業に導入しています。


なお、IFRS第10号では、支配の定義を改訂することで、連結範囲についての判断を変更するにとどまっており、連結手続きに関する部分については変更されていません。


 


単一の支配モデル


投資企業は、以下の要件を両方とも満たす場合、被投資企業を支配しているとしています。


 


・被投資企業への関与から生じるリターンの変動性にさらされている


・被投資企業に対するパワーを通じてそのリターンに影響を与える能力を有している


 


ここで、リターンとは、配当や被投資企業に対する投資の価値といった経済的便益のみならず、規模の経済を達成することや、シナジーを得る、といった他の持分保有者には与えられない効果も含まれます。


またパワーとは、被投資企業の活動を左右する現在の能力です。パワーをもたらすものとして、議決権、経営幹部の選任権、契約に定められた意思決定権があります。


 


支配の有無の判断において、被投資企業に対するパワーとリターンは、連動している必要があります。


投資企業が、被投資企業に対するパワーを有しているものの、そのパワーから便益を享受することができない場合は、被投資企業を支配していることにはなりません。また、被投資企業からリターンを受け取るものの、被投資企業のリターンを生み出す活動を左右するよう、パワーを行使できない投資企業は、その被投資企業を支配していることになりません。


 


特定資産(サイロ)に対するパワー


IAS第27号やSIC第12号では定められていなかった新しい概念として、法的事業体ではなく特定資産(サイロ:silo)を支配の対象とするガイダンスが導入されました。


IFRS第10号の下では、法的事業体よりも細分化したレベルに対する支配が存在することが想定されており、法的事業体そのものではなく、これらの特定資産が連結対象となることがあります。


 


まとめ


IFRS第10号は従前のIAS第27号に比べ、親会社がどの事業体を支配し、連結すべきかを決定するに当たり、すべての事実および状況を分析し、支配の有無を評価することを要求され、より多くの判断が必要とされます。


また、単一の支配モデルに統一されることやサイロが支配対象となることで、特に特別目的事業体と関わりの多い金融業や不動産業は、影響を受ける可能性があります。


 


松岡 佑三



2011年5月23日月曜日

米国のIFRS強制適用の判断はいつになるか?

イージフの松岡です。


米国は、米国上場企業に対しIFRSを強制適用するか否かの決定を今年(2011年)中に行うとしています。強制適用が決定された場合、2015年以降の適用が有力視されています。


日本での強制適用は来年(2012年)を目処に判断するとされていることから、米国が今年どういう結論を下すかは、日本の決定に大きく影響を及ぼすでしょう。


 


既に今年も5月後半にさしかかり、半年が過ぎようとしていますが、米国の判断はまだ発表されていません。いったい、いつ発表されるのでしょうか。


 


先月、SECが米国におけるIFRS導入について7月7日に円卓会議を開催するとのプレスリリースがありました。投資家、小規模公開企業、規制当局者のパネルディスカッションが展開され、投資家のIFRS理解度、財務諸表作成者に対するIFRS導入による影響、IFRSの下での規制環境について焦点をあてて議論されるそうです。


 


7月に関係者を交えてのIFRS採否の検討会議を実施するということは、その後、議論のまとめやフィードバックを受ける期間が2~3ヶ月くらいは必要とすると、結論が出るのは早くても9月くらいになるでしょうか。


 


日本企業の実務担当者や関係者は、導入スケジュールや対応方法を計画するにも、早く決めて欲しいというのが本音ではないでしょうか。先のみえない状態はしばらく続きそうです。


 


 


松岡 佑三


 


☆SECのプレスリリースは、武田雄治さんのブログから辿りました。


■CFOのための最新情報■


 



2011年5月18日水曜日

IFRSセミナーのお知らせ

イージフの野口です。


aegif主催のIFRSセミナーのお知らせです。


今回のセミナーでは連結管理と内部統制に焦点を当てます。


第1部では、連結グループの決算体制をいかに構築すべきか、あるべき管理方法について論点を整理し、どのような対応策をとるべきであるか解説していきます。


また、内部統制については議論があまりなされていない状況ですが、実際の現場では必ず対応が必要となります。そこでセミナー第2部では 内部統制上の対応を考える上で必要な知識を整理します。また、現在の日本の内部統制の制度動向も解説し、今後の方向性を説明します。


IFRSについてはいろいろな切り口がありますが、今回のセミナーでは今後必ず必要となってくる視点を提供し、自社の取り組みへの参考としていただきたいと思います。


なお、このセミナーは3月に開催を予定していましたが、東日本大震災の影響で延期となっていたものです。前回は定員を超える申し込みをいただきました。今回は会場の席を増やしており、まだ空きがあります。ご興味のある方は是非ご参加ください。


お申し込みは弊社HPよりお願いいたします。


日程  2011年06月01日(水)


時間  13:30〜16:15(13:15開場)


会場  ITS市ヶ谷健保会館(東京都新宿区市谷仲之町4-39)


参加費 無料(事前登録制)



2011年5月16日月曜日

業種別IFRSの解説-小売業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、FRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回は小売業を取り上げます。

小売業では収益認識が大きな問題になることが多いです。小売業と一口に言っても業態によってさまざまな取引慣行があります。日本基準においては、売上の計上について特に会計基準がなかったこともあり、それまでの慣行で処理されている場合が非常に多いです。しかし、IFRSでは収益認識について基準が定められていますので、これまでの慣行がIFRSに照らして適切か、検討する必要があります。検討のポイントを紹介します。

収益
履行義務アプローチに基づく取引内容の確認
従来のIFRSで、リスクと経済的便益の移転を収益認識のタイミングとする考え方でしたが、2011年公表予定の新しい基準書では履行義務アプローチという新しい考え方が適用されることにになります。この考え方では、企業が顧客に対して代金を受領するために行なうことを履行義務として識別し、履行義務を果たしたタイミングで収益を認識することになります。
例えば、顧客への物の引渡しと、代金の受領が同時に行なわれるような単純な取引については特に問題がありません。従来と同じように、代金を受領した時点で売上となります。しかし、顧客が購入した商品を、指定された日に配送して届ける場合は、商品を配送する義務、顧客に物を引き渡す義務が発生し、それぞれの義務が履行した時点で収益を認識します。つまり、顧客が物を購入した時に代金を受領していたとしても、物の引渡しが完了していなければ、売上とはできないことになります。
総額表示と純額表示
その他にも、百貨店などで行なわれている消化仕入(顧客に販売された時に仕入先からの仕入も同時に行なわれるという商慣行)については、 百貨店では商品の販売を代行しているものと考えられ、販売代金と仕入代金の純額が売上金額となります。販売代金の総額ではなくなるわけです。
ポイントサービス
さまざまな小売業で顧客の囲い込みのためにポイントサービスが行なわれています。日本の会計基準では特に規定はないのですが、現状では多くの企業でポイント引当金として処理されています。IFRSではポイントサービスは、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムと呼んで、処理を定めています。ポイントは当初の販売取引とは別個のものと考え、引当金処理ではなく、ポイントに見合う金額を売上から控除します。その金額はポイントが使用されるまで負債として計上されます。
リベート
リベートなどについての扱いも重要です。リベートなどは実質的な値引きなのですが、長年の取引慣行に依存する部分も多く、その会計処理についてはばらつきがあります。しかし、IFRSでは、実際に受領する金額が収益の額とされることになるので、リベートなどは控除しなければなりません。リベートによっては、販売後になって金額が確定する場合もありますが、そのような場合は見積りが必要です。合理的な見積もりができないと、そもそも収益を認識すべきではないということになってしまいます。

固定資産
減価償却
減価償却方法、耐用年数は日本基準のもとでは税法の規定を採用している場合が多いのですが、IFRSでは実態に即した方法、耐用年数を適用しなければなりません。定期的な店舗のリニューアルが行なわれる場合は、そのことを織り込まなければなりませんし、資産の利用に関わる計画が変われば随時反映しなければならず、毎期見直しが必要とされています。
減損
減損について、日本基準では2期連続の営業赤字といった指標で減損の兆候を把握している場合が多いと思います。しかし、IFRSでは減損の兆候を幅広く考えており、2期連続の営業赤字といった具体的な指標はありません。どういった状況を兆候とするのかは、業態や企業の考え方によって変わってくることとなるので、対応が難しいところです。
また、一度認識された減損は、減損しているという事実がなくなれば、戻入されることになります。その判定や、処理は日本基準にはないもので、管理負担も増えると考えられます。
その他
その他にも、借入費用は大規模なショッピングセンターなどで問題になる場合があります。固定資産の取得をその取得に紐付いている借入金によってまかなっている場合、利息などの借入費用は固定資産の取得原価に含める必要があります。この規定は日本基準にないものです。
また資産除去債務に関しては、日本基準にも導入されましたが、完全に日本基準と同一ではありません。資産除去債務についても慎重な検討が必要だと考えられます。

収益と固定資産を取り上げましたが、小売業ではこの2つの項目が非常に重要で影響が大きいと思います。特に収益認識については、処理を大きく変える場合が多いので、契約形態や取引慣行を慎重に検討することが必要です。


 


野口由美子



2011年5月10日火曜日

IFRSの導入とは何を指すのか

イージフの野口です。今回は、海外でのIFRSの適用方法についてご紹介したいと思います。

IFRSはすでに100カ国を越える国で導入されている、という話を聞いたことある方は多いと思います。現実にそれだけ多くの国で使われているIFRSは、正に世界共通のグローバルな会計基準としての役割を果たしているわけです。

ただ、意外と知られていないのがその導入の仕方です。IFRSを導入している国がこれだけたくさんあるわけですが、すべての国がIFRSをそのまま受け入れているわけではありません。確かに、多くの国では、完全なIFRSをそのまま自国で適用することを目指しています。それは、IFRSが「世界共通言語」として機能するために、必要なことです。しかし、各国それぞれが固有の問題や事情を抱えていることも事実で、そのような問題に対処するには、IFRSだけでは不十分ということもあります。そのため、以下のようなアプローチを採用している国があります。

コンバージェンスによるIFRS導入
これは、IFRSをそのまま受け入れるのではなく、自国の会計基準の中にIFRSを取り込んで行くということです。この方法を採用している国に中国などがあります。中国では新企業会計準則として、IFRSとほぼ同等な会計基準を設定しています。ただし、あくまでも中国の会計基準であり、一部についてはIFRSと相違があると考えられています。

エンドースメントによるIFRS導入
この方法は各国の規制当局がIFRSの各基準のうち、承認したものだけを自国で適用するというものです。IASB(国際会計基準審議会)が公表したIFRSをそのまま承認するケースもありますが、自国の言葉に翻訳したものが承認されるケースもあります。また、基準書の内容自体を各国の事情に合わせて修正して承認している場合もあります。
この方法を採用している国の例としては、EU各国があります。EUでは各国が承認手続の各段階で、承認しない(カーブアウトと言われます)という結果になる前に、IASBに基準書の方を変えるよう働きかけを行なうこともあります。
またオーストラリアの場合は、また違ったエンドースメントの方法をとっています。オーストラリアではIFRSをそのままの形で承認するというのではなく、オーストラリアの制度に合わせた規定をさらに追加して承認手続を行なっています。

ここでは2つの方法を紹介しましたが、一口にIFRSを導入していると言っても、IFRSに対する姿勢は国によって違うことが分かると思います。
それでは日本におけるIFRSの導入はどういう方法になるのか、ということが問題ですが、金融庁の説明によると、日本において承認を行なうものの、IFRSを完全にそのまま導入することになるようです。日本では金融庁長官が指定を行なうわけですが、その指定の要件は、EUの手続よりかなり迅速な対応が可能な形になっています。本当に日本でもIFRSが採用されることになったら、EUなどの国よりもIFRSの適用が「進んでいる」状況になると思います。

このような導入方法の違いは、各国の規制当局がどのような役割を担うことで、自国の利益を守るかという根本的な問題への取り組み方の違いによると思います。日本はIFRSを完全に自国に適用していくことで、日本のIFRSに対する発言力を強化しようと考えているのかもしれません。日本は、IFRS適用を決定すれば、一気にIFRSに対して「進んだ」国になろうとしているのです。


 


野口由美子