2011年9月27日火曜日

業種別IFRSの解説-コンテンツ産業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回はコンテンツ産業を取り上げます。

コンテンツ産業といっても、出版、音楽、映像、ゲームなどいろいろな情報内容を扱う業態があります。ここでは映画を取り上げ、IFRS導入の課題を考えてみたいと思います。

コンテンツ産業は、これまでの日本基準での取り扱いがあまり明確となっていない分野で、主に税法の基準に従った処理が行なわれている場合が多いようです。
映画というコンテンツの場合、映画の製作は1つのプロジェクトとして一定期間内に収益を上げなくてはならないビジネスですが、映画作品としてはその期間を越えて収益が発生します。そして、映画は著作権でもあります。このような特徴からいかに収益や費用を認識すべきかということが問題になります。

費用認識
費用認識をどのように行なうかということは、映画製作をどのような形態で行なっているのか契約を検討する必要があります。

配給会社などが映画を買い取る場合等は、収益認識の基準書に照らして考えることになります。製作中の映画の支配が配給会社に継続的に移転していると考えられる場合、製作の進行に応じた費用の認識が必要となります。

一方、社内で映画製作を行ない配給まで行なうような形態の場合は、映画製作のコストは無形資産として認識すべきかが問題となります。この場合、製作費用が将来の収益獲得が可能であれば無形資産となります。多様な費用が無形資産となり得ると考えられます。

借入費用
映画製作には膨大なコストがかかることもあり、借入費用の資産化が必要となるケースがあると考えられます。借入費用については、日本基準では特に規定はありませんが、IFRSでは適格資産の取得にかかる借入費用を資産計上する必要があります。

適格資産とは、その資産が想定する販売、使用が可能な状態になるまで相当の期間を要する資産のことで、映画製作を無形資産計上する場合、適格資産に該当する場合が多いと考えられます。

無形資産の償却、減損
映画製作費を無形資産計上した場合、償却や減損の手続を経て費用となります。
償却については、法律上の権利期間だけでなく、将来にわたって経済的な便益の発生を加味しなければなりません。また、償却方法や償却期間については毎期の見直しが必要となります。

減損については、IFRSでは減損の兆候が幅広く捉えられています。たとえば、以下のような状況が減損の兆候に該当すると考えられます。
・製作スケジュールの大幅な遅れ
・上映館数が予定よりも減少
・制作費の不足が発生
・実績の収益が当初の計画に達成しない
映画製作段階から配給に至るまで収益管理をしっかり行い、それを減損の検討にも整合させるように体制を整えておく必要があると思います。

収益認識
映画の製作形態にはさまざまなものがあります。映画の配給だけを行ない、収入の一定割合を収入とするような形態である場合は、純額の収入を収益認識する場合が多くなると思います。
また、近年は特に映画会社1社だけではなく、複数の企業が関わる形で製作が進められる場合が非常に多くなっています。法的主体も製作委員会(組合)やファンドなどいろいろあります。

どのような支配を行なっているかによってIFRS上の取り扱いが変わってくることになります。たとえば、製作委員会の場合は、特定の企業等が意思決定することができないケースが多いと考えられ、ジョイントベンチャーとして検討する必要があります。ジョイントベンチャーである場合、「共同支配の営業活動」「共同支配の資産」「共同支配企業」の3つの形態に分類して処理することになります。共同支配企業と判定される場合は基本的に持分法の適用が必要となります。

ここでは映画会社を例に挙げて考えてみましたが、コンテンツ産業については従来の日本の会計慣行とIFRSの考え方がかなり違う部分があります。収益や費用の認識等ビジネスに直結した課題も多いので、社内の管理体制と合わせて対応することが必要だと考えられます。


 


野口由美子



2011年9月13日火曜日

業種別IFRSの解説-ソフトウェア業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回はソフトウェア業を取り上げます。

収益認識
ソフトウェア業においても大きな検討課題となるのが、収益認識です。ソフトウェアの取引はさまざまな形態があり、取引形態ごとに慎重な検討が必要となります。

IFRSでは、収益認識について履行義務アプローチという考え方を新たに採用しています。企業が顧客に対して義務を履行した時点に収益認識を行なうという考え方です。そこで、契約としては1つの取引であっても、複数の履行義務が識別された場合、その履行義務が果たされた時点でそれぞれの義務に見合った収益を認識することになります。

たとえば、ハードウェアの販売取引で一定期間の保守サービスが含まれている場合、ハードの引渡しとその後の保守は別々の履行義務と捉えられます。ハードの販売は基本的に顧客に引き渡した時点での収益認識となる場合が多いと考えら得ますが、保守の部分については、その期間に応じて時間基準で収益認識を行なうことになります。

また、受託開発の取引においては、単一のプロジェクトの契約形態が複数のフェーズ等にわかれている場合があります。このような場合は、契約単位で検討するのでは不十分です。契約が別であっても、価格の決定が相互依存している関係であれば(事実上、プロジェクト全体の価格が決まっていたり、利益管理がプロジェクト全体を1つの単位として行なっていたりする場合など)、1つの契約とみなされることになります。

無形資産(開発費)
受託開発のソフトウェアについては先に触れましたが、市場販売目的のソフトウェアの開発費については、IFRSでは一部を資産として計上する必要があります。

日本基準では自社開発の市場販売目的のソフトウェアは、最初に製品化された製品マスターの完成時点までに発生した制作費は研究開発費として費用処理され、その後に発生する政策費用は無形資産として計上されます。

一方、IFRSにおいて計上が必要となる無形資産は、一定の要件を満たす開発費になるわけですが、中でも、技術的に無形資産を完成させることのできる可能性という要件が重要なポイントとなります。技術的に完成できるということが判明するタイミングは、現在の日本基準と同じ製品マスターの完成時点と捉える場合も多いと考えられます。

リース
最近注目されるようになったクラウドに関する取引が、IFRSのリースの考え方に照らしてどのように解釈すべきか問題になることがよくあります。ソフトウェア業においては、クラウドでは顧客のバランスシートにオンバランスになるのか、というところに注目している場合も多いようで、その点について説明します。

IFRSが新しく採用するリースの考え方では、リースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースという分類は行ないません。使用権を資産計上するという考え方をとるため、基本的に従来オペレーティング・リースに分類されていたオフバランスの取引も資産計上する場合がほとんどとなります。

クラウドを活用する場合、ハードウェアやソフトウェアを自ら保有することなく利用することができるため、従来のリースの考え方に従えば、そのサービスを利用する企業側ではオフバランスとなる場合が多いと考えられます。

しかし、新しいリースの考え方によると、オフバランスできる場合は限的的ではないかと考えられます。一言でクラウドと言っても、さまざまな形態があるので、一概に結論付けることはできないのですが、例えば、特定の企業向けに設置されているサーバーやカスタマイズされているソフトウェアを利用するような契約については、資産計上が必要となる可能性が高いと考えられます。逆に、特定の顧客の利用を想定しない一般向けサービスであれば、オフバランスになると考えられます。ちなみに、リースの会計処理は貸し手と借り手が対称となる処理がなされることが基本と考えられていますので、借り手である顧客側で、資産計上される場合は、貸し手側では資産として計上されません。

このように、ソフトウェア業の行なう取引はさまざまな形態のものがあり、また複雑なものも多いため、慎重な検討が必要となる場合が多くなります。契約内容を確認することも重要なのですが、本当に重要なのは形式面ではなく実態面になりますので、営業部門など実際に取引を行なっている部署の関与が不可欠です。


 


野口由美子