2011年10月31日月曜日

IFRSにおける固定資産の減価償却の傾向

イージフの野口です。
IFRSについてよく質問で聞かれるトピックは固定資産です。特に減価償却については、製造業を中心に大きな影響がある可能性もあることから気になる方が多いようです。

国内もしくは業界の傾向等が聞かれることが多く、例えば定額法が主流になるといったような、多くの企業が同じ処理を適用することになることを想定しているのだと思います。ある程度、同じ業種の企業間では会計処理の傾向が似てきて一定の傾向が出てくることがありますが、それほど画一的にはならないと思います。

確かにEUの企業を見てみると、減価償却については定額法を採用している場合が多いように感じます。しかし、そういう一定の傾向があったとしても、それをそのまま採用するわけではなく、実際に固定資産の減価がどのように起きているのか、検討することが必要なのです。同じ業種の企業であっても、固定資産の使用計画や環境が同じとは限りません。そのような実態を踏まえて各社でルールを取り決めておくことが必要なのです。実際にEUでの話を聞くと、他社事例より、各社がどのように捉えるかということを重視するということでした。

日本の会計基準は細則主義であるので、実際の適用においてある程度画一的であると考えられますが、最近導入された会計基準については適用に各社でばらつきがあるという指摘も聞きます。例えば、資産除去債務に関する会計基準は比較的最近適用になりましたが、金額的な影響にかなり差があったようです。これは、実際に資産除去債務として企業が負担する義務の大小というだけでなく、資産除去債務を合理的に見積もれるか、見積もれないとするかの判断に違いがあったのではないかという指摘もあります。判断の違いにより会計処理が変わってくる、という状況はすでに、日本基準の範疇でも起きています。

最初に紹介した、日本国内の減価償却の傾向についての質問に対する答えとしては、「特定の傾向はない」といっておきたいのですが、日本では、「できるだけ税法の処理と同じにしたい」という意識が強く働いて、定率法等、税法基準と同じ処理が多くなる可能性はあると思います。固定資産の減価償却方法の決定は、重要な事項なので、慎重な検討は不可欠なのですが、これまでの日本基準においても、経済的実態と大きな乖離がないものとして認められてきたわけですから、一律に否定されるものでもないと考えられます。実際に、今後増えてくるであろうIFRS任意適用会社の中には、定率法の適用といった税法基準を踏襲した処理を採用している事例も出てくるのではないかと思います。

どのように考えたらいいか、いろいろ同業他社の傾向など参考にしたいところですが、あくまでそのような情報は参考に過ぎないということなのです。最終的には各社で判断するというところが、IFRSの難しいところであり、また、柔軟なところでもあると思います。


 


野口由美子



2011年10月18日火曜日

流れには逆らえない‐IFRSの時代

イージフの松岡です。


前回に引き続きIFRSの識者のインタビュー記事を紹介したいと思います。


今回は、IFRS財団の評議員を務めている島崎憲明氏です。IFRS導入のアプローチについて以下のように述べられています。


 



“「強制適用=何でも受け入れる」ということではありません。そのようなことはどの国もやっていません。EU(欧州連合)はIFRSをアドプションしましたが、IFRS第9号はいまだにエンドースしていません。強制適用してもフリーハンドなのです。個々の基準については使い勝手がいいように直してほしいと交渉をすればいいのです。しかも日本はそのような交渉ができる立場を確かなものにしつつあります。”


 



大臣発言以前は、日本でのIFRS適用について0か1かという思い込みがありました。IFRSがアドプションされ日本基準にとってかわりIFRSが強制適用される、と理解されていました。


しかし、島崎氏の発言にもある通り強制適用といってもIFRSのすべてをそのまま受け入れる必要はないのです。どの基準を承認して適用させるかは、各国に任されているのです。国際的に単一の基準に統一するというIFRSの目的には反しますが、各国が主権を維持できることもIFRSが多くの国で受け入れられることとなった要因のひとつでしょう。


 


さらに重要なのは、日本がIFRSの改定について意見を言える立場にあるということです。日本はIFRS財団やIASB等の主要ポストを持ち、IASB初の海外サテライトオフィスが東京に設置されるなど、IFRSに対する影響力は決して小さくありません。他のアジア諸国がこの地位を狙っています。


日本は、これまで築き上げてきた立場を無駄にせず真の国益は何かを考えて行動しなければなりません。IFRSが世界標準になるというのは時代の流れなのですから。


 


松岡 佑三


 


IFRS財団 島崎氏「2012年中にIFRSにコミットを」



2011年10月5日水曜日

IFRS反対派の論拠に反論

イージフの松岡です。


今回は日本の会計基準の国際化に尽力されてきた山田氏の記事を紹介したいと思います。元IASB理事の山田辰巳氏は、IFRS反対派が主張する2つの論点について反論しています。




「そもそも会計制度は、国における歴史、経済文化、風土を踏まえた企業の在り方と深いかかわりがある。」


という主張に対して、山田氏は日本のビジネス慣習とのミスマッチを指摘する声は多いが、IFRSが考えている取引形態と違う取引形態が(国内に)あるというケースはまれであると反論しています。



仮に、日本とアメリカではまったくビジネスのやり方が異なるというのであれば、会計制度も文化の違いがあって然るべきですが、そういう時代ではないでしょう。


アメリカ発祥の新しいビジネスモデルもすぐに日本に持ち込まれるし、逆もまた然りです。日本企業もグローバル市場に打って出ないことには成長ができない時代となったことを認識すべきです。



「IFRSは金融業に適切で、製造業には向かない」


という主張に対して、山田氏はIFRSが製造業に向いていないという話は世界で聞いたことがないとし、有形固定資産や無形資産を公正価値で測定するという議論は、これまでIASBで1度も行われていないと反論しています。




IASB理事を10年間務めた人の言葉だけに重みがあります。世界で聞いたことがないと言われればぐうの音も出ませんね。IFRSは製造業に向かないという意見は、一見もっともらしく聞こえますが、実態は空虚だということですね。



松岡 佑三

「IFRSは製造業に向かない」を元IASB理事が検証