2012年4月19日木曜日

IFRSとアメリカ これから何が起きるか 2

前回の記事では、2011年完了予定だった米国基準とIFRSのコンバージェンス作業が、結局達成されなかったところまで解説しました。今回はその続きになります。2011年になにがあったか。


当初の想定では、2011年にコンバージェンスが完了したのを受けて、アメリカ国内企業へのIFRS強制適用を行うという判断がなされるはずだったわけですが、コンバージェンスは一部、それも非常に重要な項目が未了となってしまったわけです。しかも、いまだに世界経済の状況も悪く、非常に不安定です。そのような中で、IFRSを適用すること自体への疑問が強くなっていきました。しかし、一方で、IFRSにこれだけ深く関与してきてしまっている以上、ここで急にIFRSを切り放してしまうことも難しくなっています。



そこで、2011年5月に発表されたSECのスタッフペーパーで、新しいIFRSとの付き合い方が提案されました。「コンドースメント・アプローチ」というものです。これは新しく提唱された造語です。コンバージェンスとエンドースメントを合わせた言葉であり、両方を折衷した方法という意味合いが込められています。コンバージェンスは先ほども触れたように、会計基準を変えてIFRSに近づけていくことであり、エンドースメントというのは、EUなどの国々で採用している方法で、IFRSを無条件に適用するのではなく、各国で承認したもののみを適用することです。

では、コンドースメントとはどのようなものかというと、スタッフペーパーでは1つの方法として以下のような内容を挙げています。

・IFRSを5年から7年ほど一定期間をかけて米国基準に取り込んでいく
・コンバージェンスを実施している項目はコンバージェンスによって取り込む
・その他は個別に検討し、エンドースメント手続を経るような形で取り込む
・最終的には、米国基準に準拠していれば、IFRSに準拠していると企業が主張できるということを目指す

このコンドースメントについても、アメリカ国内でさまざまな意見が寄せられています。支持をする意見が多いようですが、折衷というスタイルなので曖昧さが批判されているようです。具体的な取り組み方は今後の議論で明らかにしていくのだろうと思います。

この方法の最大の特徴は、アメリカは米国基準を維持するということだと思います。アドプションでは自国の会計基準の適用をやめてしまうわけですから、ここは大きな違いになります。アメリカはIFRSのアドプションをしない、というのがコンドースメントの一番のメッセージなのではないでしょうか。

しかし、アドプションをしないとしても、会計基準の国際的な統一、という大きな目標からアメリカも背を向けられません。そのための努力は、IFRSを米国基準に取り込むという形で続いていくことになるわけです。

私は、アメリカはアドプションをしないという方向を示した以上(明示的に示したわけではありませんが)、IFRSに対して消極的になったと考えています。しかし、IFRSを中心とした会計基準の国際的統一化の流れを止めることはできなくなっています。米国基準がひとりでその会計基準の品質を保持できる状況ではないのです。なので、米国基準にIFRSを「取り込む」という作業は、これまでのコンバージェンス以上にスピード感を持って進められるのではないかと思います。


イージフ


野口由美子



2012年4月11日水曜日

IFRSとアメリカ これから何が起きるか 1

イージフの野口です。
去年2011年アメリカではIFRS適用の是非についての判断が延期されました。日本においても適用時期を延期するという発表があり、驚かれた方も多かったと思います。

アメリカの判断は日本に大きな影響を与えることになります。判断を延期したということは、アメリカはIFRSに対して消極的になったようにも思えますが、アメリカが本当に消極的になったのかという点については見解が分かれています。アメリカはIFRSとどのように付き合っていくつもりなのでしょうか。今回は、これまでのアメリカの動きを確認し、アメリカのIFRSに対する姿勢を解説します。

そもそも、アメリカがIFRSに深く関わるようになったのは、2002年のノーウォーク合意からになります。ノーウォーク合意というのは、IFRSと米国基準との差異を共同で解消して調和を図り、コンバージェンスを進めるというFASBとIASBとの合意です。その後、2006年にMoU(Memorandum of Understanding)が公表され、継続的なコンバージェンスのスケジュールが示されました。ここで示された項目は11項目ありました。2008年には、そのうちの9項目について、2011年半ばで完了させることが合意されました。

同じ2008年にはSECからも重要な発表がありました。国内企業に対するIFRS の適用、アドプションに関する検討についてロードマップが公表されたのです。そのロードマップではアメリカ国内企業へのIFRSの強制適用の是非を2011年に決定するということになっており、強制適用の意思決定がなされた場合、2014年から段階的に強制適用する方針でした。

2011年は、MoUのコンバージェンスの完了とそれを受けてIFRSの強制適用の是非を判断する重要な年でした。


結局、2011年には何があったか。MoUの9項目すべてのコンバージェンスを完了することができませんでした。FASBとIASB双方の考え方の隔たりは大きく、その調整を行うことに困難が多い上に、会計基準をめぐる関係者が納得できるよう議論を尽くすだけの時間がなかったのだと思います。
未了となった項目は以下のとおりです。
・収益認識
・リース
・負債と資本の区分
・業績報告のうち包括利益以外

収益認識やリースは、多くの企業が影響を受ける特に重要性が高い項目で、しかもこれまでの基準書の考え方を変える抜本的な改訂が予定されていました。ちなみに、これらの項目は現在も改訂作業が続いていおり、今後の動向が注目されています。残りの2項目、負債と資本の区分や業績報告については、緊急性が低い項目として現在のところは審議がストップしています。


FASBとIASBのコンバージェンス作業が目標達成されなかった状況を受けて、アメリカのおこなった判断とは、ただIFRS適用を延期したわけではありません。次回に続きます。


イージフ


野口由美子


 



2012年4月4日水曜日

復職のご挨拶


イージフの野口です。
1年の育児休暇が明けて、この4月から職場復帰しました。
休暇中はブログの更新が減ってしまいましたが、これからは更新回数を増やし、内容をさらに充実したものにしていきます。どうぞよろしくお願いします。

このブログでは、これまで以上にタイムリーに、IFRSの基準書改訂の最新動向をお伝えし、IFRSの考え方をわかりやすく解説していくとともに、現在の会計基準の大きな潮流を感じていきたいと思います。

IFRSの日本での適用については、現在のところ任意適用のみで、強制適用がなされるかは未だ不透明です。日本での制度適用がどうなるのかということも、非常に気になります。

しかし、会計基準というものは日本だけの閉じた環境で完結するものではありません。会計基準がどうあるべきかという議論は、IFRSや米国基準を巡ってどんどん進んでいます。これまで、日本の会計基準も海外の考え方を数多く受け入れてきたことを考えると、日本がIFRSを強制適用するしないかに関わらず、IFRSは私たちにも大きな影響を与えることになるでしょう。どうしてIFRSはそのように考えるのか、ということを追っていくことは、IFRSそのものだけでなく日本基準への理解にもつながると思います。皆さんの理解の助けになるよう、がんばってがんばって書いていきますので、よろしくお願いします。

野口由美子