2012年5月16日水曜日

IFRSと日本 これから何が起きるか 2

イージフの野口です。今回は前回記事の続きになります。


2011年の東日本大震災後は状況が一変しました。2011年6月に金融庁大臣からIFRS適用延期の発言がなされました。震災のダメージでIFRS適用どころではない、というムードになってきて、大臣自ら、「さまざまな立場からの意見に広く耳を傾け、会計基準がこれらにもたらす影響を十分に検討し、同時に国内外の動向、特に米国をはじめとする諸外国の状況等を十分に見極めながら、総合的に成熟された議論が展開されることを望む」という発言がありました。



そして、金融庁でIFRS適用を検討してきた企業会計審議会ではIFRSに否定的なスタンスをとっているメンバーが増えました。

その後、金融庁の企業会計審議会ではIFRS強制適用について議論の進め方を検討し直していますが、メンバーが増え、議論が分散し、なかなか検討が進まない状況が続いています。

これから、日本はどちらに進んでいくのか。そもそもの発端はIFRSをアメリカが適用するという話を受けて日本もそれに追随していたわけですが、日本がこのような後追いの姿勢を続けることは難しいと思います。前に紹介したとおり、アメリカでは「コンドースメント」という新たな方法を模索しています。アメリカくらいIFRS設定に影響力があれば、コンドースメントも1つの手段になり得ると思います。しかし、日本にはアメリカのようにIFRSを自国基準に合わせさせるようなコンバージェンスの進め方ができていません。日本がコンドースメントをやるというのは無理があると思います。

それでは、これまでのコンバージェンスをさらに続けていくのか。これも時間がかかる割に成果が上がりにくく、大変だと思います。では、アドプションにするのか。世界共通の会計ルールを適用することの恩恵を一番手っ取り早く受けられるのはアドプションだと思います。しかし、アドプションによって、会計制度について国のコントロールがきかなくなる部分ができるのですから、そこをどう対処するのか考えなくてはなりません。そこを手当てするには、エンドースメントというのも1つの選択肢になると思います。エンドースメントをする場合は、カーブアウトはできるだけ避けなくてはなりませんので、日本の意向がIFRSに反映されるようIASBへの働きかけが十分できないとならないのではないでしょうか。


どのみち、簡単な方法というのはないと思います。日本は自国の会計制度をどうするのか、根本的な問題について議論されないまま、IFRSがずっと語られてきたように感じます。今議論することは重要です。しかし、議論ばかりで結論を先送りすることはもうすべきではないと思います。今年中に結論がきちんと出るのかしっかり追っていきます。


イージフ


野口由美子



2012年5月9日水曜日

IFRSと日本 これから何が起きるか 1

イージフの野口です。
IFRSを巡るアメリカの動向を紹介したのに続いて、日本の動向を解説していきたいと思います。

日本の動きについては、IFRSの適用を延期した、という去年の報道をご覧になった方が多いと思います。しかし、結局、日本企業のIFRS適用はどうなるのか、ただ延期なのか、それとも取りやめてしまうのか。これまで進められてきたコンバージェンスはどうなるのか、疑問はつきないと思います。

今回は、これまでの経緯を振り返り、今後のどうなっていくのか考えていきたいと思います。

もともと日本ではIFRSを強制適用する方針でした。2009年11月に金融庁から公表された報告(「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」)で日本もIFRSを適用することが明らかにされました。これまで日本では日本基準をIFRSに近づけるコンバージェンスをすすめてきていましたが、ここで一気にアドプションする方針に転換したのです。この裏には、前の記事で紹介しましたアメリカでのIFRS適用への動きがあります。この時の発表では、適用のタイミングについては2012年に判断するとしたものの、早ければ2015年の適用を目指し、連結財務諸表にのみIFRSを適用するという連結先行の適用が想定されていました。

その後、この連結先行の考え方は「ダイナミックアプローチ」という名称で具体的な検討がなされていきました。金融庁が中心となり、日本公認会計士協会も金融庁の考え方を支持している中で、適用時期や範囲にしてはいろいろな意見があったものの、IFRSのアドプション、という方針は既定路線であるかのようでした。

この金融庁の方針についてまず異論を唱えたのが、経済産業省だと思います。経済産業省の立場では、上場企業に限らず中小企業を含めた産業の保護が重要です。連結先行でIFRSを適用した場合に、そこからいずれは単体財務諸表にもIFRSを適用することになるのか、非上場企業にもIFRSを適用することになるのか。中小企業にまでIFRSが適用する必要があるのか、懸念が表明されました。

そこで、金融庁と経済産業省とでIFRSを単体財務諸表にまで広げるべきか、そもそも会計制度はどうあるべきかについて、それぞれ見解を出し合っていたのですが、金融庁としてはダイナミックアプローチを堅持し続けていました。そして、最終的な結論が出る前、2011年の東日本大震災が起きました。


ここから大きく状況は変化します。次回、この続きを紹介します。


 


イージフ


野口由美子