2012年8月29日水曜日

IFRSの収益認識: 2013年に向けての動向

今回は収益認識について、最新の動向をお伝えします。

収益認識については、IASBとFASBのコンバージェンスプロジェクトの一環として取り上げられ、2011年6月に新しい基準書を公表する予定で改訂作業が進められていました。しかし、審議が遅れ、2011年4月に基準書公表の時期を延期する発表がされています。収益認識については影響が大きく、改訂に対してさまざまな意見があったため、それをまとめるには想定していた以上に時間が必要だったようです。2011年11月に2回目の公開草案が公表され、2013年6月末までには新しい基準書が公表される予定となっています。

現在取り上げられている問題点は多岐に渡っていますが、最初の公開草案の考え方を大きく変更するような内容はありません。枠組みとしては問題ないのですが、実際に適用するにあたって具体性に欠けた規定になっているところが問題となっています。現在は、基準の内容をより実務上実行可能なものとなるように明確なものにする検討がなされているのです。

そもそも新しい収益認識の枠組みとはどのようなものでしょうか。改訂されるIFRSの収益認識の基準では、これまでのIFRSや日本基準などとは全く違う発想で収益認識を捉えています。基本的な流れは5つのステップになっています。

1. 顧客との契約を識別する
2. 契約における別個の履行義務を独立して識別する
3. 取引価格を決定する
4. 取引価格を各履行義務の配分する
5. 各履行義務を果たした時点に配分された取引価格を収益認識する

各ステップの内容は難しそうですが、実はこれまでの売上の計上の流れとあまり変わりません。捉え方が違うのでわかりにくいかもしれません。考え方としては、基本は契約単位で収益認識します。しかし、契約の中に別の義務がある場合はそれぞれ別に扱います。たとえば、機械装置の販売で契約の中に据付け工事や修理やメンテナンスのサービスが含まれている場合はそれらが別々の義務となります。それぞれの義務ごとに取引価格を算定し、義務を果たした時点でその取引価格が収益として認識されることになります。

物品の販売であれば、物を顧客に引き渡すのが企業の義務ですので、物を渡した時点で収益が認識されることになります。修理やメンテナンスサービスは契約期間中はずっとサービスを提供する義務を履行し続けているので、契約期間中に渡って収益を認識することになります。

では、工事契約で建設業の場合はどうなるでしょうか。完成した建物を引き渡すのが企業の義務となりますので、物品の販売と同様、建物が完成した時点まで収益を認識できないのでしょうか。実は新しい収益認識では、工事契約についてはこれまでの工事進行基準に似たような形で、工事中も収益を認識するものとしています。もともとそのような考え方をとっているのですが、2010年の公開草案では明確にその考え方が示されておらず、非常にわかりにくいものとなっていました。

2011年に2回目の公開となった公開草案では、このような一定期間に渡って収益を認識する場合の要件が新たに示されています。

(a) 企業の履行により資産が送出されるか、又は増価し、それにつれて顧客が当該資産を支配する
(b) 企業が他に転用できる資産が創出されず、かつ次の要件のうち少なくとも1つ該当する
(i) 企業の履行につれて、顧客が企業の履行による便益を同時に受取り消費する
(ii) 他の企業が顧客に対して残りの義務を履行するとした場合に、当該他の企業は、 企業が現在までに完了した作業を実質的にやり直す必要がない
(iii) 企業が、現在までに完了した履行についての支払を受ける権利を有しており、 契約を約束のとおりに履行すると見込んでいる

先ほどの工事契約を例に考えると、要件(a)を満たさないと考える方がいるかもしれません。しかし、顧客の土地の上に建物を建てているような通常の場合は、建設中の建物の支配は顧客に移転していると考えます。このような考え方の背景には、イギリス等では土地とその上の建物を別個の不動産せず、一体として扱うことがあるようです。

このように現在の収益認識の公開草案では内容の明確化を進めており、他にも要件や定義が新たに提案されているものがたくさんあります。他の提案内容についてはまた改めて取り上げていきたいと思います。

イージフ
野口由美子

2012年8月8日水曜日

ヘッジ会計改訂の最新動向

イージフの野口です。今回はヘッジ会計の最新動向について紹介したいと思います。

ヘッジ会計はすでに紹介した金融商品の減損についての審議と同様に改訂の審議対象となっており、ずっと審議が続いています。改訂の焦点となっていたのは、ヘッジ会計の簡素化です。IAS39号に規定されているヘッジ会計は米国基準がベースとなっており、非常に複雑で細かいものとなっていました。

どのようにヘッジ会計は簡素化されたのか。2010年に公開草案が出ています。公開草案の主な論点は過去の記事を参考にしてください(IFRSヘッジ会計はどう変わったか ①IFRSヘッジ会計はどう変わったか ②)。今回はこの公開草案が基準として公表されるにあたって変更されることになっているポイントについて紹介します。

1. マクロヘッジ(ポートフォリオヘッジ)は別途審議を行う
ヘッジ会計の中でも少し特殊なポートフォリオヘッジヘッジについては、今回の公開草案のヘッジ会計の目的に合いません。しかし、実際にはポートフォリオヘッジは実際に行われているので、その実態に合った会計処理が必要となります。そこでポートフォリオヘッジについては今回の公開草案の内容から除外し、別途見当されることになりました。ポートフォリオヘッジは一般の事業会社ではなじみがあまりないかもしれませんが、金融機関などでは行われているヘッジなので、金融機関には大きな影響があるポイントとなります。

2. ヘッジ会計の有効性評価方法
ヘッジ会計の要件を満たすためには、有効性が確認されていなければなりません。現行のIFRSや日本基準では85%から125%という具体的な数値基準が示されていましたが、それを廃止することを公開草案では提案していました。しかし、代わりの有効性の基準があまりにも曖昧であったため、要件が細分化されるとともにより具体的な内容になりました。

変更された要件について説明します。


要件は以下の3つですべてを満たしている必要があります。
・ヘッジ対象とヘッジ手段との間に経済的関係があること
・ヘッッジ手段とヘッジ対象の数量に基づいて、ヘッジの非有効部分を意図的に生じさせるようなヘッジ対象とヘッジ手段の比率(ヘッジ比率)が生じないこと
・経済的関係から生じる価値の変動が信用リスクによる影響によって大部分を占められていないこと

これらの要件は従来のヘッジ会計の有効性評価から数値基準がなくなったものと捉えられます。従来は数値で一律に判定していましたが、ある程度柔軟な判断が可能となると考えられます(そうはいっても、実務上は、従来と同じ数値基準で判断することになる場合が多くなることも想定されますが)。

3. 為替予約のフォワードポイント(直先差額)の会計処理
公開草案では、オプションの時間的価値についての処理が新しく提案されました。従来は、時間的価値(将来の価格の変動により利益がどれだけ増えるかという期待)については、本源的価値(オプションの権利行使価格と原資産価格の差額)と切り放す場合は、ヘッジ会計を適用することは認められていませんでした。新しい提案では、時間的価値についてもヘッジ会計を適用することができます。この考え方が為替予約の会計処理にも適用されることが決定しています。為替予約の直先差額についても、ヘッジの対象が本源的価値と時間的価値を別々に考えます。本源的価値のみをヘッジしているとする場合は、直先差額を期間按分し損益として認識します。その後の為替予約の公正価値の変動はその他の包括利益に認識します。

変更の内容をみてみると公開草案の内容をより明確に具体化したものが多いと思います。今年中には基準書が公表される予定です。新しいヘッジ会計は一般事業会社にもヘッジ会計が適用しやすいものになっていると思います。マクロヘッジについてはこれから審議が本格的に始まることになっています。こちらは主に金融機関が影響を受けるところですので、金融機関の方は注目しておくべきではないでしょうか。



イージフ

野口由美子



2012年8月2日木曜日

IFRSのリース会計改訂は今どうなっているのか

イージフの野口です。久しぶりのブログ更新となりました。

今回はリース会計について、改訂動向を紹介します。リースについては非常に大きな問題が改訂の焦点となっています。審議が長く続いていますが、今年2012年内には再度公開草案が出ることになっています。

何が問題になっているかというと、現在のリースの会計処理はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2つの会計処理があるところです。この2つの使い分けには要件があるものの、実際には企業の恣意性によって会計処理が選ばれているような状態になっています。そこで、この2つの会計処理を廃止し、処理を統一することが目的となっていました。

基本的な考え方は、リース取引をバランスシート上に表します。端的に言えば、従来のオペレーティング・リースの処理のように損益だけを計上するということはできなくなります。

リースの借り手については、原則、リースの利用権が資産として計上されることになります。一方、貸し手については、これまで2つの処理を条件によって使い分けることが提案されており、従来と同じように企業の恣意性が入る余地がありました。そこで現在は、審議の中でも貸し手についても処理を1つに統一される方向で議論されています。

現在、新たに提案されている貸し手の処理は、「債権・残存資産」アプローチと呼ばれている処理です。このアプローチでは、リース開始日にリースする資産をオフバランスし、リース債権と残存資産を計上します。

リース取引が割賦販売と同じ実態で、収益が獲得が確実な場合は、このオフバランスされる資産と、債権、残存資産の合計額の差額が利益となります。一方、リース取引の収益が確実でない場合は、資産と債権の差額を残存資産として一旦計上します。そして、この残存資産がリース期間に渡って毎期増額して利益を計上することになります。増額の方法は、あたかもリースする資産を減価償却していたかのように、残存資産に一定の利回りをかけて計算します。なので、リース期間が終わった時は、残存資産がリース資産の減価償却後の帳簿価額と同じになります。

この方法は、現在のリースの会計処理とは大きく異なるものです。現在適用している会計基準が日本基準であっても、IFRSであっても、大きな影響を受けることになります。日本企業にとって、特に注意が必要なのは投資不動産です。現在の審議では、公正価値で評価されている投資不動産はリース会計の対象外となっています。しかし、日本では投資不動産を公正価値評価しているケースはあまりありませんので、多くの賃貸不動産がリース会計の対象となってしまいます。

リース会計の改訂のインパクトは非常に大きいです。再度公表される予定の公開草案ではこのあたりの論点がどのように提案されることになるのか、注目したいと思います。

イージフ
野口由美子