2013年11月21日木曜日

新しい収益認識、基準書公表へ最終段階

イージフの野口です。今回はIFRSの改訂の動向を紹介します。


最近になって大きなプロジェクトが完了しようとしています。


最も注目すべきなのが収益認識です。収益認識については2013年10月のIASB会議において審議が終了しました。あとは2014年第1四半期に最終基準書が公表される予定になっています。


そもそも収益認識はFASBと合同で米国基準とのコンバージェンス・プロジェクトとして改訂が進められていました。このコンバージェンス・プロジェクトは2011年に終了を目指していたのですが、収益認識に関してはスケジュールの延期がずっと続いていました。さらには公開草案を修正して、再公開草案を公表する等、審議が難航していたため、今回の審議の終了は、ようやく、というところではないでしょうか。


長い審議をフォローするのも難しい上に問題が多岐に渡る改訂であったため、結局収益認識の新基準がどうなるのか、理解しにくいのではないかと思います。


簡単に結論をいってしまうと、今回の収益認識の改訂は現状の処理を大きく変えるものではありません。これまでの収益認識の方法を変更することが目的だったのではなく、あくまで、原則主義として相応しい収益認識のアプローチに一本化することが改訂の目的でした。なので、物品を販売する等、一般的な取引については改訂で大きな影響を受けることはありません。しかし、これに当てはまらない取引もあり、それらについては会計処理を大幅に変更することが必要となります。この辺りがIFRSのやっかいなところだと思います。


一番実務上注意が必要だと思われるのが、変動対価という考え方です。


新しい基準では、履行義務アプローチという方法が採用されています。これは収益が実現したタイミングではなく、収益を得るために必要な義務を企業が果たしたタイミングで収益を認識します。このアプローチによると、収益の金額が後から決まるタイプの取引の場合、企業が義務を果たした時点で収益金額が決まっていなくても収益認識をしなくてはならないことになります。これまでの実現主義であれば、収益金額が確定した時点で売上の処理をすれば良かったのですが、履行義務アプローチでは確定を待たず、収益金額を見積もって売上としなければなりません。


これまでの収益とは違う、不確かな売上が計上されることになってしまいかねないわけですが、不確実性を排除するために、新基準では、企業が後で取り消されることのない合理的な収益金額を見積もり、その金額を上限として、収益を認識することが求められます。売上計上タイミングの変更と収益金額の見積りが必要です。


また、この変動対価については一部の取引について例外規定が設けられることとなっています。この点も重要なのでまたご紹介したいと思います。


現在毎月IFRS導入の手法を解説する記事を連載しています。第4回の記事が掲載されましたので、この場でご紹介します。是非こちらもご覧ください。


これからのIFRS導入、トライアルは必須 - TechTargetジャパン 経営とIT


野口由美子


 


 


 


 


 


 


 


 



2013年10月19日土曜日

「エンドースメントされたIFRS」の本当の狙い

イージフの野口です。IFRSを適用するにあたって、日本でもエンドースメントという手続きを取り入れるということが提案され、現在ASBJ(企業会会計基準委員会)で「エンドースメントされたIFRS」についての議論が進められています。


エンドースメントとはIFRSをそのまま適用するのではなく、その国での承認手続きを経てからを適用するというものです。実際にこのような手法でIFRSを適用している国はEU各国等、多くあります。これらの国においてはIFRS自体の作成はIASBが行うことになるのに対して、IFRSの承認という権限を持つことで、各国の会計制度への(あるいはIASBへの)統制を維持する機能を果たしています。現実にこの承認を巡る各国とIASBとの駆け引きが基準書の内容にも大きな影響を与えます。


そのようなエンドースメントを日本ではどのようにやろうとしているのか、ここで紹介したいと思います。


日本でエンドースメントを行うのはASBJです。ASBJはもともと日本の会計基準を策定する役割を果たしてきたので、IFRSを日本で使用する会計基準と承認するエンドースメントを行うのもASBJが行うのが妥当と考えられています。


IFRSを承認するにあたって、金融庁から勘案されるべきと提案されている観点は以下の3点です。


1. 会計基準に係る基本的な考え方


2. 実務上の困難さ


3. 周辺制度との関連


実際の問題として、IFRSを適用する企業の立場としては2番目の実務上の困難さ、が一番重要な観点となるでしょう。このことに関連して検討されているのが、IFRSの適用指針となるガイダンスの作成です。実はエンドースメントを導入することの一番の目的はガイダンスの作成ではなかったのではないかと思います。


IFRSというのは本来基準書だけで機能するように作られているので、IFRICが出す最低限のガイダンスに留められています。それ以外のガイダンスは基本的に認めないというスタンスを取っています。そこで、そのままのピュアなIFRSを適用するとなるとそれについてのガイダンスは作れないのですが、エンドースメントされたIFRSであれば、それについてのガイダンスを作成することは問題ないだろう、ということになります。


以前から、このシンプルな基準書だけしかないIFRSを日本の環境に合わせて解釈するのが難しいという指摘がされていました。それはもっともなことだと思います。日本の会計基準はもちろん解釈が必要とされているのですが、IFRSに比べれば、その余地は少なく、また日本の慣習に合わせた注釈や実務指針が適時追加されているので、会計基準を適用するスタイルが全く異なります。そこで、IFRSを日本で適用するならば、日本向けのガイダンスが是非とも欲しい、と多くの企業は願っているのではないでしょうか。エンドースメントを行うことでIFRSが大きく修正されるということはあまり考えられませんが、ガイダンスができることでIFRSの適用はかなりやりやすくなると期待できると思います。


確かに日本にとって使い勝手のいいガイダンスがあったら便利ですが、必ずしもそれがいいというわけではありません。本来のIFRSの目的は「単一で高品質な国際基準」であることなので、それぞれがローカルルールを作ってしまっては、目的を阻害することになります。あくまでこれは日本での適用を促進するための過渡的な手段と位置付けられるべきだと思います。このような手段を使ってでも、日本でのIFRSの任意適用を増やしていきたいという姿勢は、現実的なものであり、実際に日本でももっとIFRSの適用が増えていかなくてはならないと思います。


日本でのIFRSを巡る動向はいろいろな方向に動いていますが、全体としては任意適用企業を増やしていこうとしているのです。そのような状況も踏まえて、IFRS導入実務の連載記事を掲載していただきました。


IFRS導入で見過ごしがちな会計、業務、システム対応の勘所-TechTarget Japan


是非こちらもご覧ください。よろしくお願いします。


 


イージフ


野口


 


 


 



2013年9月19日木曜日

IFRSと日本の「当面の方針」の間で

イージフの野口です。最近は連載記事でIFRSの動向について解説させていただいていますが、このブログでももう少し自分の意見を交えて紹介しようと思います。


今回は日本でのIFRSの扱いについてです。日本でIFRSを適用するということは、今のところ制度的に強制されるはないだろう、という雰囲気です。これも東日本大震災の後、IFRS強制適用への懐疑的な意見が多く出されるようになったことと、何よりも米国が適用を見送ったことが大きいと思います。それまでは、IFRS強制適用が当然のように語られており、その意義についてしっかり議論されることが少なかったように感じられました。日本国内での議論を経てIFRSの適用は決定されるべきであり、今の状況がただの停滞とならず、日本にとって有意義な検討の場となればいいと思います。


正直なところ、米国のIFRS適用がない限り、日本でもIFRSを適用するという決断はできないのだろうなと思います。しかし、米国は適用をしないものの、IFRSへの影響力を行使し続ける立場にありますので、本来であれば、日本も独自にどのように国際的な会計基準の流れに関与していくか、立場を明らかにしなければならないはずです。今は苦肉の策、というか、現実的な策として、IFRS任意適用で適用企業を増やそう、という方針が取られています。


その方針は、金融庁の「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針(案)」としてまとめられています。柱は任意適用要件の緩和、日本版IFRSの適用、単体開示の簡素化です。


任意適用要件の緩和については、他の記事でも紹介しましたし、単体開示の簡素化については特に大きな問題はないと思います。ここでは日本版IFRSについて解説します。


日本版IFRSとここで言っているのは日本でのエンドースメント手続きを経たIFRSを日本で適用することを意味しています。エンドースメントというのは、IFRSの各基準を日本として採用するかしないか、必要に応じて内容を修正するなど、日本が承認した基準の内容を日本版IFRSとして策定することです。例えばEUではこのような手続きが行われています。純粋な(ピュアな)IFRSを採用している国というのは実際には非常に少ないようで、実際IFRSを適用している国では何らかの手続きや内容の一部修正を行ってIFRSを適用しています。これまで、日本ではIFRS適用イコールピュアなIFRSの適用を意味しているように語られていたので、日本でもエンドースメントを行うというのは1つの選択しとして検討すべきだと思います。


実際にIFRSのエンドースメントを行うとなると、日本には、日本基準、米国基準、ピュアなIFRS、日本版IFRSと4つの会計基準が併存することになります。これは「当面の方針」でも触れられていますが、非常にややこしく、混乱します。あくまでも、これは過渡期として複数の会計基準が併存するのであり、すべてが収斂されるのが目標となります。しかし日本が今の立場を継続してしまうと、このややこしい状態が長続きしてしまう可能性があるので、日本企業が自ら方向性を見失わないようにしないとこの混乱に翻弄されることになってしまいます。


エンドースメントの手続きも日本から「あるべき」IFRS、会計基準のあり方を発信する場として位置付けられています。日本には日本の商慣習や経済環境があるわけですし、これまで日本基準という形で実現させてきた会計基準のスタイルがあります。日本にとって不利、日本の経済実態からは受け入れられない基準に対してはIFRS自体を修正してもらうつもりで働きかけていかなくてはならないのです。今までは日本国内で日本のことだけを考えていればよかったわけですが、世界に向けて発信するということになると今までのやり方は通用しません。これからが日本の会計が面白くなるはずで、つまらない内向きな議論に収まってはやっていけません。


実は、これまでも日本の意見によって、IFRSの基準書の内容が変わったという実績はあります。しかし、その時は日本がIFRSを強制適用する予定、という前提がありました。今後、米国や中国といった国に負けないためには、やはり日本のIFRS適用企業の実績を上げるしかないでしょう。任意適用の状態のままで、というのは苦しいところだと思いますが、日本経済の力と共に日本の会計も強くならなくてはならいと思います。


最後に、IFRS適用となったら何をするのか、実務的な問題と解決策を記事にまとめていますので、こちらも参考になさってください。よろしくお願いします。


TechTargetジャパン 経営とIT IFRSプロジェクト、成功と失敗の境目は


野口由美子


 



2013年8月16日金曜日

IFRS任意適用のタイミング

イージフの野口です。


最近になって日本でのIFRSを巡る環境がまた大きく変わろうとしています。IFRSが日本で強制適用される、という可能性はいまだに未知、むしろ、可能性としては低い、と感じている方も多いかもしれませんが、今後は任意適用が広がっていくことになりそうです。


IFRSの任意適用は現在、一定の要件を満たした企業が自らの選択でIFRSを適用していて、一部の企業が採用するに留まっています。しかし、今後この一定の要件が緩和され、多くの企業でIFRSが選択可能となる方針が打ち出されました。さらに、日本取引所等はグローバルに投資適格である企業を選定した新しい株価指数を設定する検討しており、その選定基準にはIFRSの適用が要件となる可能性が示されています。これは海外でもビジネスを展開する企業にとっては大きな関心になっているのではないかと思います。


これまで、一部の企業だけの問題だったIFRSも、多くの企業の関心を呼んでいます。


そのような状況を踏まえて今回はIFRS再入門の記事を掲載していただきました。


是非ご覧ください。


イージフ


野口



2013年6月7日金曜日

すべてのリースはオンバランスするべきか

イージフの野口です。


日本ではIFRSはあくまで任意適用となっています。今後任意適用の要件は緩和される方向なので、任意適用を行う企業が多くなると思いますが、強制されていない現状では、とりあえず様子見、というスタンスの企業が多いと思います。


しかし、会計の分野も日本は鎖国しているわけではなく、国際的な潮流、というものから逃れられるわけではありません。IFRSを適用しなくても、日本基準自体がIFRSからあまりにも外れてしまうと、それはそれで、問題となるわけです。これまでも米国基準等と照らして会計基準があまりにもかい離してしまうとそのことが大きな問題となってきました。IFRS強制適用の是非、とは関係なくIFRSを知るということは日本の企業にとっても重要なことです。今後の日本基準、会計制度の方向性を確認できるからです。


IFRSについて最近の大きなトピックにリース会計の改訂があります。新しい公開草案が2013年5月に公表されました。基本的にすべてのリースをオンバランスするという新しい考え方が導入されることになります。この最新情報をTechTargetの経営とITというサイトで解説しました。


リースはすべての企業に関わるもので現在の国際的な考え方を知り、日本基準の方向性を考えるためにも是非ご覧ください。


ノーマークだった日本企業も要注意なIFRS「リース会計」


 


 


 



2013年4月29日月曜日

減価償却は定額法か、定率法か、改めて考える

イージフの野口です。


IFRSの固定資産をめぐる問題は、償却単位、耐用年数、残存価額、減価償却方法など、さまざまです。さらにその影響は対応するコスト、会計処理の変更による財務的インパクト、どちらも非常に大きく日本企業がIFRSを適用する際には大きな問題になると考えられています。


その中でも減価償却方法については、特に注目されてきましたので、定率法についての論議はご存知の方も多いと思います。日本では税法上の償却方法が会計上も認められてきたため、多くの固定資産について定率法を使っていますが、IFRSでは定額法が一般的であるため定率法が使えなくなるのではないか、という問題です。


今回IFRSフォーラムでこの問題について、改めて解説しました。というのも、IASBでは固定資産の基準書を改訂する方向で現在審議がなされているからです。その最新の情報についても触れていますので、是非ご覧ください。よろしくお願いします。


日本が翻弄されたIFRS「減価償却」の現在


 


野口由美子