2013年9月19日木曜日

IFRSと日本の「当面の方針」の間で

イージフの野口です。最近は連載記事でIFRSの動向について解説させていただいていますが、このブログでももう少し自分の意見を交えて紹介しようと思います。


今回は日本でのIFRSの扱いについてです。日本でIFRSを適用するということは、今のところ制度的に強制されるはないだろう、という雰囲気です。これも東日本大震災の後、IFRS強制適用への懐疑的な意見が多く出されるようになったことと、何よりも米国が適用を見送ったことが大きいと思います。それまでは、IFRS強制適用が当然のように語られており、その意義についてしっかり議論されることが少なかったように感じられました。日本国内での議論を経てIFRSの適用は決定されるべきであり、今の状況がただの停滞とならず、日本にとって有意義な検討の場となればいいと思います。


正直なところ、米国のIFRS適用がない限り、日本でもIFRSを適用するという決断はできないのだろうなと思います。しかし、米国は適用をしないものの、IFRSへの影響力を行使し続ける立場にありますので、本来であれば、日本も独自にどのように国際的な会計基準の流れに関与していくか、立場を明らかにしなければならないはずです。今は苦肉の策、というか、現実的な策として、IFRS任意適用で適用企業を増やそう、という方針が取られています。


その方針は、金融庁の「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針(案)」としてまとめられています。柱は任意適用要件の緩和、日本版IFRSの適用、単体開示の簡素化です。


任意適用要件の緩和については、他の記事でも紹介しましたし、単体開示の簡素化については特に大きな問題はないと思います。ここでは日本版IFRSについて解説します。


日本版IFRSとここで言っているのは日本でのエンドースメント手続きを経たIFRSを日本で適用することを意味しています。エンドースメントというのは、IFRSの各基準を日本として採用するかしないか、必要に応じて内容を修正するなど、日本が承認した基準の内容を日本版IFRSとして策定することです。例えばEUではこのような手続きが行われています。純粋な(ピュアな)IFRSを採用している国というのは実際には非常に少ないようで、実際IFRSを適用している国では何らかの手続きや内容の一部修正を行ってIFRSを適用しています。これまで、日本ではIFRS適用イコールピュアなIFRSの適用を意味しているように語られていたので、日本でもエンドースメントを行うというのは1つの選択しとして検討すべきだと思います。


実際にIFRSのエンドースメントを行うとなると、日本には、日本基準、米国基準、ピュアなIFRS、日本版IFRSと4つの会計基準が併存することになります。これは「当面の方針」でも触れられていますが、非常にややこしく、混乱します。あくまでも、これは過渡期として複数の会計基準が併存するのであり、すべてが収斂されるのが目標となります。しかし日本が今の立場を継続してしまうと、このややこしい状態が長続きしてしまう可能性があるので、日本企業が自ら方向性を見失わないようにしないとこの混乱に翻弄されることになってしまいます。


エンドースメントの手続きも日本から「あるべき」IFRS、会計基準のあり方を発信する場として位置付けられています。日本には日本の商慣習や経済環境があるわけですし、これまで日本基準という形で実現させてきた会計基準のスタイルがあります。日本にとって不利、日本の経済実態からは受け入れられない基準に対してはIFRS自体を修正してもらうつもりで働きかけていかなくてはならないのです。今までは日本国内で日本のことだけを考えていればよかったわけですが、世界に向けて発信するということになると今までのやり方は通用しません。これからが日本の会計が面白くなるはずで、つまらない内向きな議論に収まってはやっていけません。


実は、これまでも日本の意見によって、IFRSの基準書の内容が変わったという実績はあります。しかし、その時は日本がIFRSを強制適用する予定、という前提がありました。今後、米国や中国といった国に負けないためには、やはり日本のIFRS適用企業の実績を上げるしかないでしょう。任意適用の状態のままで、というのは苦しいところだと思いますが、日本経済の力と共に日本の会計も強くならなくてはならいと思います。


最後に、IFRS適用となったら何をするのか、実務的な問題と解決策を記事にまとめていますので、こちらも参考になさってください。よろしくお願いします。


TechTargetジャパン 経営とIT IFRSプロジェクト、成功と失敗の境目は


野口由美子