2013年10月19日土曜日

「エンドースメントされたIFRS」の本当の狙い

イージフの野口です。IFRSを適用するにあたって、日本でもエンドースメントという手続きを取り入れるということが提案され、現在ASBJ(企業会会計基準委員会)で「エンドースメントされたIFRS」についての議論が進められています。


エンドースメントとはIFRSをそのまま適用するのではなく、その国での承認手続きを経てからを適用するというものです。実際にこのような手法でIFRSを適用している国はEU各国等、多くあります。これらの国においてはIFRS自体の作成はIASBが行うことになるのに対して、IFRSの承認という権限を持つことで、各国の会計制度への(あるいはIASBへの)統制を維持する機能を果たしています。現実にこの承認を巡る各国とIASBとの駆け引きが基準書の内容にも大きな影響を与えます。


そのようなエンドースメントを日本ではどのようにやろうとしているのか、ここで紹介したいと思います。


日本でエンドースメントを行うのはASBJです。ASBJはもともと日本の会計基準を策定する役割を果たしてきたので、IFRSを日本で使用する会計基準と承認するエンドースメントを行うのもASBJが行うのが妥当と考えられています。


IFRSを承認するにあたって、金融庁から勘案されるべきと提案されている観点は以下の3点です。


1. 会計基準に係る基本的な考え方


2. 実務上の困難さ


3. 周辺制度との関連


実際の問題として、IFRSを適用する企業の立場としては2番目の実務上の困難さ、が一番重要な観点となるでしょう。このことに関連して検討されているのが、IFRSの適用指針となるガイダンスの作成です。実はエンドースメントを導入することの一番の目的はガイダンスの作成ではなかったのではないかと思います。


IFRSというのは本来基準書だけで機能するように作られているので、IFRICが出す最低限のガイダンスに留められています。それ以外のガイダンスは基本的に認めないというスタンスを取っています。そこで、そのままのピュアなIFRSを適用するとなるとそれについてのガイダンスは作れないのですが、エンドースメントされたIFRSであれば、それについてのガイダンスを作成することは問題ないだろう、ということになります。


以前から、このシンプルな基準書だけしかないIFRSを日本の環境に合わせて解釈するのが難しいという指摘がされていました。それはもっともなことだと思います。日本の会計基準はもちろん解釈が必要とされているのですが、IFRSに比べれば、その余地は少なく、また日本の慣習に合わせた注釈や実務指針が適時追加されているので、会計基準を適用するスタイルが全く異なります。そこで、IFRSを日本で適用するならば、日本向けのガイダンスが是非とも欲しい、と多くの企業は願っているのではないでしょうか。エンドースメントを行うことでIFRSが大きく修正されるということはあまり考えられませんが、ガイダンスができることでIFRSの適用はかなりやりやすくなると期待できると思います。


確かに日本にとって使い勝手のいいガイダンスがあったら便利ですが、必ずしもそれがいいというわけではありません。本来のIFRSの目的は「単一で高品質な国際基準」であることなので、それぞれがローカルルールを作ってしまっては、目的を阻害することになります。あくまでこれは日本での適用を促進するための過渡的な手段と位置付けられるべきだと思います。このような手段を使ってでも、日本でのIFRSの任意適用を増やしていきたいという姿勢は、現実的なものであり、実際に日本でももっとIFRSの適用が増えていかなくてはならないと思います。


日本でのIFRSを巡る動向はいろいろな方向に動いていますが、全体としては任意適用企業を増やしていこうとしているのです。そのような状況も踏まえて、IFRS導入実務の連載記事を掲載していただきました。


IFRS導入で見過ごしがちな会計、業務、システム対応の勘所-TechTarget Japan


是非こちらもご覧ください。よろしくお願いします。


 


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