2015年6月8日月曜日

なぜ新収益認識基準は適用が延期されるのか

こんにちは。イージフの野口です。前回の記事では新収益認識基準をめぐる最近のIASBの動向を紹介しました。今回はその続報です。


IASBは新収益認識基準であるIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」の発効日を当初の予定から1年遅らせ、2018年1月1日以後開始する事業年度から強制適用とする提案を行いました。2015年5月19日に公開草案の形で公表され、コメント募集期間を経た上で、7月のIASB会議で正式に決定することになります。


今回の対応は素早く、早く話が進んだ印象を受けました。この決定の背後には米国基準とのコンバージェンスへの配慮があります。FASBは4月の時点で新基準の適用を延期する提案を行う決定をしていました。この時点ではFASBも1年の延期を正式決定したわけでははありません。実際にFASBがこの提案を行う公開草案を公表する直前のIASB会議でIASBとして1年延期を提案することを決めたのです。


FASBは2015年4月29日に新基準の発効日を延期する提案を公開草案として公表しました。その中では、1年の延期を提案しており、その他の選択肢として開示するすべての財務諸表へ遡及適用を行うことを条件に2年の延期を行う提案もなされています。もともとFASBの中では2年の延期を支持する意見もあったようでしたが、今回の公開草案では、遡及適用する場合に2年延期を行うという形で提案されており、現実的な選択肢にはなりづらくなっていると思います。


IFRSと米国基準での適用時期がずれてしまうと早く適用しなければならない企業は損をする格好になってしまいますし、財務諸表利用者にとっても比較が難しくなってしまいます。それを避けたかったという意図はIASBもFASBも同じでだったのではないかと思います。1年の延期で決着がつきそうな流れになっています。


新しい収益認識基準を巡る最近の動きには、IASBとFASBのスタンスの違いが鮮明に現れていると思います。原則主義と細則主義という会計基準のスタイルの違い、様々な国に適用される基準と1国内で適用される基準であるという利害調整の範囲の違い、同じ英語の基準とはいえ、イギリス(ヨーロッパ)英語とアメリカ英語という言語的、文化的な違い。両者にはいろいろな違いがあります。


米国基準はIFRSとコンバージェンスを目指しているがそれは一言一句同じである必要はない、というのが最近のFASBの姿勢です。同じ言語でも基準書の中身が同じ文章にならないのであれば、言語の違う国においてはどどうなるのでしょうか。日本でどのようにIFRSが定着するのか、という問題にもつながっているように思います。


 


イージフ 野口