2016年1月18日月曜日

企業結合、顧客を獲得すると費用負担増、で正しいのか

こんにちは。イージフの野口です。
最近のIASB会議の大きなトピックは企業結合で、当ブログでも取り上げることが多くなりました。しかし、具体的な決定事項がどんどん決まって、「新しい基準はこうなる」というお話ができるような段階ではなく、まだ現在はいろいろな切り口で問題を考えてみるという、今後の方向性を探る議論が続いています。IASBでの審議を見ていると、そういう議論の初期段階だからこそ、興味深い話題が出てきます。今回はそういった議論を紹介したいと思います。

IFRS3号「企業結合」についてはのれんが大きな問題として取り上げられています。現行基準ではのれんと識別可能な無形資産は別々に認識し、のれんは償却せず減損手続きが適用されるのみ、無形資産は償却処理を行います。のれんと無形資産を別々に認識すべきなのか、のれんは償却しなくていいのか、減損の検討手続きはこのままでいいのか、問題は多岐にわたっている上に相互の関係しています。現在行われている企業結合時の無形資産の評価は、複雑でコストがかかると批判されていますが、その割には評価が結局主観的ではないか、とさらに批判されています。のれんと無形資産を厳密に区分するのはそもそも不可能なのではないか。

では無形資産の一部をのれんに含めてしまえばいいのでは、というのが現在のFASBのスタンスです。IASBもFASBの方向性を無視することはできず、のれんの範囲を広げることを今後検討することにしています。

そもそも無形資産として個別に資産を認識して償却することは正しいのか。企業結合で取得したブランドや顧客リストは無形資産として認識され、その後償却されることになります。投資家から見ると、この償却費が問題と指摘されています。ブランドや顧客リストは取得後も創設や維持のため、企業は通常広告費などの費用を支出しているので、償却費はダブルカウントであり、費用が過大になっているのではないかという懸念があるのです。

このような問題がIASBで取り上げられているということ自体に興味深く感じました。なぜなら、IFRSにおいて、顧客やブランドは、そのままでは時の経過とともに価値が減っていく(B/S上の金額が小さくなっていく)という前提があったと思いますが、その前提に疑問が生じるというのは根本的にIFRSの考え方が変わったことを意味しているからです。

昔はB/S上いくらになるかということが問題の中心であり、B/Sに含めるべきでないものはP/Lにいく(しかない)という、B/S重視の考え方でした。今はP/Lに含めるべきものが何であるか問題となっています。P/Lを重視する考え方が強まっているために、かつてはあまり問題として考えられていなかったことが今は大きな問題となっています。

B/SもP/Lも重要なのは確かですが、どちらをより重視するかということについては、長い時間をかけて振り子のように揺れながら、考え方が移り変わっています。今は再びP/Lを重視する方に傾いています。そのような大きな会計の流れの中で、考えてみると気づくことも多いです。


イージフ 野口由美子