2016年5月9日月曜日

IFRSの包括利益がよく分からない方へ

こんにちは。イージフの野口です。実務で概念フレームワークを考えることは普段少ないかもしれませんが、各基準書だけでは判断できないことがあると概念フレームワークまで立ち返って考えるということがあると思います。その概念フレームワークは現在IASBで根本的に見直しており、その作業は大詰めになってきています。

概念フレームワークはすでに陳腐化しています。1989年に設定された後、2010年にFASBと共同で一部改訂されましたが、大部分は設定当初のままとなっています。現在のIFRSの個別基準はかつてとだいぶ考え方が変わってきており、現在のIFRSの考え方にあった概念フレームワークに改訂する目的で作業が進められてきています。

1989年から考えると、IFRSの会計の基本的考え方は大きく揺れ動いているかのようですが、今のIFRSの考え方を端的に言うと「P/Lもやっぱり大事」ということだと思います。

かつて、IFRSB/S重視で公正価値会計、純資産の増減が重要、というスタンスでしたが、今のIASB会議の発言を見ていると、それほどB/S重視を推し進めているようには見えません。むしろ、よりP/Lとのバランスを取る意見が多いですし、P/Lの純損益を重視する発言が大きく取り上げられているように感じられます。

今回の概念フレームワークの改訂において、純損益は、その期間の企業の財務業績に関する主たる情報源であると説明されることになりました。P/Lの純損益の情報としての有用性が重視されると、包括利益の意味があいまいになってきてしまいます。そこで問題になっているのが、その他の包括利益です。

20155月公表の公開草案では、以下のような形でその他の包括利益の位置づけが提案されました。

すべての収益、費用項目は純損益に含まれるという反証可能な推定を置き、一定の条件のもと、特別な場合にのみ、収益費用項目をその他の包括利益に含める、という形です。一定の条件とは、以下の2つが提案されていました。

・収益または費用項目が現在の価値により推定される資産または負債に関連するものである場合
・収益または費用項目を純損益に含めないことによって、その期間の純損益に関する情報の目的適合性が高められる場合

その他の包括利益に対するこのような位置づには、多くの反対意見が寄せられています。その他の包括利益が概念として明確になっておらず、その他の包括利益に含められる項目が増えすぎてしまうという懸念が多かったようです。

また、リサイクリング(その他の包括利益から純損益への再計上)についても、まだ合意形成が難しいようです。公開草案では、ある期間にその他の包括利益に含めた項目について、その後の将来の期間に純損益に含めることによって、将来の期間の純損益に関する情報の目的適合性が高められる場合にその項目を組み替える、という反証可能な仮定を置くことが提案されていました。

この公開草案の提案に対してほぼ半数が反対している上に、代替案も様々なものがあり、方向性が定まっていません。

IASB会議で示唆されていた解決策は、その他の包括利益を個別基準レベルと取り扱うというもので、概念フレームワークに盛り込まないことも考えられています。現実的な案かもしれません。

IFRSの包括利益やその他の包括利益がわからない、と思ってしまうことは、もっともなことです。日本基準や米国基準にあるような、純損益重視の考え方が自然でしっくりくる、という感覚は今のIFRSに通じていると思います。


イージフ 野口