2016年8月8日月曜日

新概念フレームワークで包括利益はどうなる?

こんにちは。イージフの野口です。以前の記事「IFRSの包括利益がよくわからない方へ」を読んでくださった方に、今度改訂される概念フレームワークで純損益や包括利益がどのように規定されるか、ご紹介しようと思い、IASB会議2016年6月の審議を取り上げたいと思います。

今回の概念フレームワークの改訂は、抜本的な見直しを行っています。これまでも解説してきたように、今のIFRSは実はB/S重視というよりもP/L重視寄りになっている、という立場の移行を概念フレームワークに反映することが検討されてきました。かつてIASBは純損益を廃止する目標に掲げていたのですから、この転換は大きなものです。


本来であれば、純損益や包括利益といった利益概念を明確にする定義を設定することが理想でしたが、長い審議期間をかけても、多くの賛同が得られる「明確な定義」を設定することはできませんでした。審議も、もどかしい印象がありましたが、この問題ばかりに時間を費やすことはできないので、議論は時間切れでした。利益概念については、概略的な記述がなされることになります。


そこで、別の記載を概念フレームワークに盛り込むことになりました。P/Lを企業の当期の財務業績に係る主要な情報源とする、という記載です。これはP/L、そして純損益を重視する立場を明確にするための記載であって、IASBからそのことを明言しようという姿勢を表しています。何気なく読んでしまいそうな内容ですが、大きな意味があるのです。

また、包括利益は何なのか、という問いに対しても、新概念フレームワークは明確な答えを提示しません。しかし、そこにはまた、1つの仕掛けが用意されています。

6月のIASB会議の決定で、

原則として、すべての収益費用項目が純損益に含まれ、
原則として、その他の包括利益項目はリサイクルされる
(公開草案では「反証可能な推定」として定めることが提案されていましたが変更されました)
こととなりました。

P/Lと純損益を重視するのであれば、その他の包括利益項目はリサイクルされることが必須ですし、B/Sと包括利益重視であれば、純損益自体必要なくなりますし、その他の包括利益項目はリサイクル不要です。


今回の記載は、原則、その他の包括利益項目はリサイクルするけれど、例外も稀にあり得る、という体裁になっています。P/L重視の立場に移行したとはいえ、完全にP/L重視だけで押し通すつもりもない、という微妙なさじ加減が表れているように思います。


その他の包括利益項目はリサイクルするという考え方自体は、もともとある日本の会計基準の考え方に近いと思います。昔は、その他の包括利益項目のリサイクルにこだわっているのは日本だけではないか、と言われていましたが、今はそれが主流となりました。1周回って、IFRSが日本基準に近くなったかのようにも感じられて、面白いところです。新概念フレームワークの利益の考え方は、日本の感覚で理解できるように思います。



イージフ 野口由美子