2016年10月3日月曜日

IFRSの新保険契約基準が意味するものとは

こんにちは。イージフの野口です。保険契約について、ついに2016年中に基準書が公表されることとなりました。これまで幾度となく、基準書公表の時期が延期されてきていましたが、今度こそ公表となるようです。

新保険契約基準公表の前に、ここで新基準の考え方をおさらいします。どのような考え方に基づいて作られたのかということを知っておくと、基準書の理解もしやすいと思います。

新基準は、保健契約の経済的実態を財務諸表上に反映することが目的に作られています。

ここで重要な考え方はIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」です。これは収益認識全般の会計処理を定めており、収益は顧客との契約から生じる義務の「履行」に伴って認識するという原則を定めています。この原則を、保健契約にも整合した形で適用しようとしているのが、新保険契約基準です。

新基準では、保険契約の収益認識についてビルディング・ブロック・アプローチという会計処理が、原則処理として導入されます。

ビルディング・ブロック・アプローチは保険契約の「履行」に基づいて保険負債の現在価値を測定するという考え方です。簡単にいうと、保険契約に関する将来のキャッシュ・イン・フローとキャッシュ・アウト・フローの純額から、貨幣の時間価値、リスク上の調整を考慮した残額を、未稼得の利益として測定します。この未稼得の利益は、契約上のサービス・マージンといい、正の値の場合は、保険契約の履行に基づいた収益認識を行うため、カバー期間にわたり規則的な方法で認識することになります。

保険負債の現在の価値を表すため公正価値を参照しますが、実態をゆがめる大きな価値の変動が財務諸表上に直接影響することを避けるため、見積りによる計算を行う部分も多い会計処理です。

この原則処理以外に、直接連動の有配当契約については変動手数料アプローチが適用されるなど、いくつかの例外処理も認められますが、それらは基本的にビルディング・ブロック・アプローチを一部修正する形で適用されます。

新基準のもとでは、現在の価値を表すために毎期計算を見直す必要がある、というのが、一番実務上のインパクトが大きいと思います。また、財務諸表上の変動性は直接影響しないように配慮されていますが、変動性が従来の日本基準より高まることになります。

新基準は最低限3年の準備期間を設けることが合意されているので、発効は2020年頃になる見通しです。IFRSの新基準公表により、その他の法規制も改訂されていく可能性があり、今後数年のうちに、保険業界をめぐる環境は大きく変化することになると思います。


イージフ 野口