2016年12月12日月曜日

重要性の判断方法を明確にする、重要性プロセスとは

こんにちは。イージフの野口です。IFRSを適用する日本企業が注意すべきこととして、膨大な情報開示への対処がよく挙げられます。確かに、IFRSは日本基準よりも注記等の情報量が多い特徴があります。

しかし、これは必ずしもいいこととは考えられていません。重要でない情報が大量に開示される一方で、本当に重要な情報が見落とされてしまったり、開示から漏れてしまったりしているのではないか、という懸念は根強くあります。企業にとっても、情報開示コストが過大になってしまいます。

そういう「ムダ」な情報開示をなくそうとしているのが、現在のIASBの姿勢です。IASBではコミュニケーションの質の向上を今後5年間で目指すという決定していますが、情報が多ければいいのではなく、情報量を削減する方向でも質の向上を達成しようとしています。

利害関係者が必要とする情報を開示するには、重要性の判断が適切になされることが大切です。しかし、実際のところ、重要性の判断は難しいものです。あくまで、企業の判断なのですが、判断にばらつきが大きいことが指摘されていますし、量的重要性と質的重要性の両方を検討しなければならない、とされていても、現実には量的重要性一辺倒で判断してしまいがちです。

そのような問題に対処するため、財務諸表作成における重要性の適用について実務記述書が作成されることとなり、すでに公開草案が公表されています。現在公開草案のフィードバックをIASB会議で検討しています。

その検討の中で、重要性を判断する手続きを重要性プロセスとして説明することが新たに提案され、合意されています。

重要性プロセスは以下の4ステップからなります。

  1. 重要性の判断が必要な情報の特定
  2. 当該情報が重要であるか否かの評価
  3. 財務諸表内で当該情報を開示するドラフトの作成
  4. ドラフトの情報開示が適切であるかの評価

特に興味深いのはステップ2に関する説明で、実務記述書内では、情報が重要であるかという判断の手続きがより具体的に記載されます。その手続きでは、従来通り、量的側面と質的側面からの判断が必要になります。質的側面の判断がおろそかになってしまうのは、質的重要性の内容が明確でないから、という反省のもと、質的重要性について詳しくその内容が説明されることになりました。

質的重要性は、企業固有のものと外的要因によるものの2種類があるということが明示されます。

企業固有の質的重要性とは、法令違反(その可能性のある場合も含める)、非定型的な取引や事象、想定を超える変動や趨勢の変化を指します。一方、外的な質的重要性とは、その名前の通り企業の外部環境の影響を受けるもので、地理的条件や業界、より大きな経済環境等の要因があります。

実務記述書は基準書ではありませんので、必ず従わなくてはならないものではありませんし、新しいことを提示しようとしているわけでもありません。しかし、適用が難しい重要性の判断について、具体的な説明がなされているので、是非一度読んでみるといいのではないかと思います。

(ちなみに、実務記述書の公表時期はまだ決まっていません。概念フレームワークの改訂等他のプロジェクトとの関係を検討する必要があるためなのですが、2017年中には公表されるのではないかと思います。)

イージフ 野口