2017年6月5日月曜日

IFRSと米国基準、事業の定義に新しい差異

こんにちは。今回は事業の定義に関する改訂の動向をお伝えしたいと思います。あまり審議されずに話がどんどん進んでいる印象でしたが、注意したい決定がありました。

IFRS3号「企業結合」の改訂として取り組まれている事業の定義の見直しについて、当初IASBは、FASBが進めている米国基準の改訂をほぼそのまま合わせる形で改訂を行う方針でした。現行基準での事業の定義は範囲が広く、あいまいであり、より事業の範囲を明確にすべき、という問題意識は共通のものでしたし、FASBの方針についても、IASBの考えと相違はないものとされていました。審議でもあまり多く議論されることもなく、公開草案は米国基準の改訂内容と同等のものが公表されました。

この公開草案では、取引が事業の取得か、資産の取得であるかを判定するためには2ステップの手続きを要求しています。


  • ステップ1 取得した総資産の公正価値が単一資産または資産のグループに集中しているか
  • ステップ2 取得した活動および資産の組み合わせに組み合わせてアウトプットを創出する能力を有するインプットおよび実質的なプロセスが含まれているか


ステップ1に該当する取引は、そのことをもって、資産の取得と判定されます。該当しない取引はステップ2の検討を行い、該当する場合には事業の取得として会計処理を行うことになります。

2017年4月のIASB会議では、公開草案に対するフィードバックが検討され、この手続きを一部変更する決定がなされました。公開草案ではこの2つのステップは強制で、必ず行うものとされていましたが、多くの反対意見が寄せられたからです。

ステップ1の検討は詳細に行わなくても結論が明らかな取引もあり、強制する必要はない、という意見で、ステップ1を企業の任意による選択を認めるべきと要求されていました。IASBではこの要求に応えるため、ステップ1を取引ごとに企業が選択することを認める決定をしました。この決定事項は米国基準との差異となります。

近年のIASB会議ではかつてのように米国基準とのコンバージェンスについて大きく取り扱われることはなくなりました。米国基準との統一(かつては「完全に」同一基準となることが目標とされていましたが)というよりも、米国基準との差異による不都合は減らしておきたい、というくらいの取り組みです。不都合があまりなければ、差異があってもいい、それぞれ違う目的で作られた違う基準なのだから、というスタンスです。

実務上この差異による影響は少ないと思います。この違いにより、事業の範囲が変わってしまう可能性は少ないです。しかし、現実には差異を完全に無視することはできず、面倒なものです。両者ともに、差異が生じることをいとわない、という姿勢を崩すことは現状ではあまり考えられず、私たちは今後も注意していかなくてはならないポイントだと思います。


イージフ 野口