2017年7月3日月曜日

のれんの減損テストはどう変わるか

こんにちは。イージフの野口です。

現在IASBで審議されている、のれんと減損、というプロジェクトは、IFRS3号「企業結合」の適用後レビューを受け、着手されているプロジェクトです。しかし、審議されている問題は、IFRS3号だけに収まりません。のれんそのものの定義や、減損処理全般を再検討します。

その中で注目されているのは、のれんの減損テストだと思います。のれんの減損処理そのものの再検討を行う、ということで、今回の改訂でのれんの償却処理復活を求める意見もあるようです(会議を見ている限りでは、そのような意見は主に日本から、という印象です)。

IASB会議で共有されている問題意識は、以下の2点だと思います。まずは、投資家からの視点。減損テストにより認識される減損損失は「金額が少なすぎる、認識のタイミングが遅すぎる」ということ。もう1点は、企業からの意見で、手続きの簡素化です。このような相反するような要求からどのような解決を導き出せるか。最近の2017年5月のIASB会議では、2つの改訂案が出されています。

第1の提案は、減損テストで必要となる、回収可能価額の算定の方法を一本化するというものです。現行基準では、減損テスト時に必要になる、回収可能価額を算定するために、のれんの公正価値と使用価値の両方が必要となります。現在の提案では、公正価値ベースの金額か使用価値か、どちらか一方のみを使用するものとします。

5月の会議では、この提案に対しては賛成反対が大きく割れていました。公正価値は市場から見たのれんの価値であり、使用価値は経営者から見たのれんの価値であるから、両方を比較することに意味があるという、現行基準を支持する意見は根強い印象がありました。

一方、提案に賛成する意見もありましたが、どちらが回収可能価額として適切なのかという点に対する見解は様々であった。現実には、使用価値の算定には、主に企業内の情報に基づくので、コストがかからない利点がある一方で、恣意的になる余地があります。恣意性を排除しようとすると、追加のコストが必要となり、結局企業の負担を軽減できなくなってしまいます。

第2の提案は減損テストの頻度を減らそうというものです。現行基準では、減損の兆候の有無に関わらず、少なくとも年に1度特定の日に減損テストを行わなくてはなりませんが、この規定を廃止することが提案されています。

年1度の減損テストが不要となる場合、減損を適時に認識するためには、これまで以上に減損の兆候が十分に把握されなくてはなりません。どのような指標で減損の兆候を把握すべきかという点については、あまり具体的な議論に至っておらず、更なる検討が必要となりそうです。また、のれんの償却の要否についても再度検討を行うべきとする意見も述べられており、どのように審議が進められていくのか、まだはっきりしない部分も感じられました。

企業結合に関連する改訂審議は、先に検討が進んでいる米国基準の改訂の動向を追いかけている様相もあるのですが、必ずしも同じ結論に至るとは限らない、というのが最近の傾向です。今後の動向も逐次紹介していきたいと思います。


イージフ 野口