2017年10月9日月曜日

IASBの今後の動向まとめ(2018年までの注目トピックとは)

こんにちは、野口です。最近IASB会議を見ていて、強く感じることは、IASBは徐々に活動内容に変化が見えてきた、ということです。

アジェンダ・コンサルテーションでは、2017年から2021年までのIASBの活動方針が決定されていますが、その内容からは収益認識、金融商品、リースといった長期プロジェクトの完了に伴い、IASBの活動が新しい段階へ移行することが明示されたように思います。今後は、新しい基準書の開発、よりも、これまで公表されてきた基準書のさらなる質の向上とともに、コミュニケーションの改善という大きなテーマに取り組むことが決定しています。

コミュニケーションの改善(Better Communication)とは、一口で言うと、まずは過剰な情報を減らす、機械的、定型的な情報開示を改善する、というのが大きな方向性となりそうです。IFRSは開示する情報量が多いという印象を持っている方は多いと思いますが、IASBはそのこと自体決していいことだとは考えていません。基準書に規定されているからということで、何でも開示することで重要でない情報の中に重要な情報が埋もれてしまい、必要な情報を知ることが難しいというのが投資家からの意見であり、一方、企業からは開示すべき重要な情報の取捨選択を判断する指針に乏しいことが指摘されています。長期的な視点ではIFRSによる情報開示も大きく変わっていくことになりそうです。

一方で、短期的に、当面の動向に目を向けていくと、IFRSがどうなっていくのか、見えてくる流れは少し違ったものに感じられるかもしれません。ここで、2018年までのIASBの活動予定のうち、今後注目すべき重要なプロジェクトを抜粋してまとめました。作業計画は2017年9月現在IASBが公表している計画に基づいています。





これらのプロジェクトの現状を簡単に確認しておくと、今後のフォローが楽だと思います。

IFRS適用後の改善は基準書開発のサイクルとして、開発された基準書は基本的に一定期間後に見直しが行われ、改訂の要否が検討されることになっています。現在はIFRS3号「企業結合」が適用後レビューの結果を受けて、改訂作業が続いています。


のれんと減損に関しては、のれんの減損処理に対する批判が多いことから、償却処理の復活も含めて抜本的な改訂を検討することとなり、非常に注目されていますが、のれんの定期償却を採用するのではなく、減損手続きを簡素化する方向で議論が進められています。

事業の定義については、最終基準書の公表が来年予定されており、基本的には米国基準の改定内容と合わせるものとなっています。一部、IFRS独自の規定が採用されることになっていますが、実務上、両基準の差異として大きな問題にならないとIASBでは考えられています。

すでに完了した長期プロジェクトのうち、金融商品に関しては、一部未了となっており、現在も別プロジェクトとして進行しています。

資本と負債の分類を再定義する、資本の特徴を有する金融商品は、ずっと難航しているプロジェクトです。現在は資本の範囲を狭く定義するアプローチが支持されていますが、他のアプローチも併記する形でのディスカッション・ペーパーが公表される予定です。

動的リスク管理は、マクロヘッジの会計処理を扱うプロジェクトです。マクロヘッジに関しては、現行基準では適切な会計処理が定められていない状態です。すでにディスカッション・ペーパーが公表され、新しいアプローチが提案されていましたが、反対が多かったため、この提案は一旦取り下げられています。これまでの議論が振り出しに戻ったかのようです。IASBの作業計画では2018年中にディスカッション・ペーパーを再公表する予定となっているのですが、その予定で審議が進むかよくわからない、というのが個人的な印象です。

より良いコミュニケーションでは、複数のプロジェクトが着手さえれる予定ですが、現在、開示の原則と基本財務諸表が先行して取り組まれています。開示の原則では、ムダな情報開示を減らすための判断の指針ができることが期待されています。基本財務諸表に関する議論では、財務諸表の表示をより細分化することや、業種別の財務諸表のテンプレートを作成することなどが検討される予定です。個別の基準書単位ではなく、大枠から情報開示の在り方が整理されることになると思います。

IFRSの考え方も時とともに変化してきていますが、今は安定した時期にあるのではないかと思います。

しかし、情報の発信の仕方、受け取り方は大きく様変わりしていることに対して、IFRSは十分対応してはいません。今後IFRSによる開示の「見た目」は大きく変化するのではないかと思います。


イージフ 野口
 

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