2018年3月5日月曜日

IFRS、P/Lに表示する新しい「利益」は企業が決める


こんにちは。イージフの野口です。最近IASBで取り上げられられている財務諸表の表示についてのプロジェクトは、主に損益計算書(P/L)に焦点が当てられており、とても興味深い議論が行われています。

IFRSに基づいて作成されているP/Lを見てみると、「そっけない」という印象を持たれる方も多いと思います。項目もかなりまとめられてしまっているし、純損益といった業績指標もあまり重視されていません。

確かに、かつてIFRSでは、貸借対照表(B/S)がP/Lよりも重要で純損益よりも包括利益の方が重要と考えられていたので、それは当然のことでした。しかし、今は違います。B/S同様にP/Lも重要であり、純損益の重要性が再認識されています。この考え方は米国基準や日本基準に近いということもできると思います。過去の米国基準とのコンバージェンス作業により、IFRS自体米国基準に近くなっていった部分も多いですし、損益を重視する投資家の意見がより強くなってきたことも表れています。

そのような損益「も」重視する立場で財務諸表の表示を再検討しているわけですので、基本的姿勢は損益情報の充実です。

2つの観点から新しい段階損益を導入する方向でIASBの審議が進められています。

1. 企業間比較を容易にする画一的な段階損益の表示を導入する

これは当初、営業利益の表示を導入することが検討されていましたが、却下されています。現在はEBITを採用する方向で審議が進められています。この検討は先行して進められています。(具体的な内容については、以下の記事でも紹介しています。「IFRS、EBITをP/L表示に、営業利益は不採用」「今後大きく変わる、IFRSの損益計算書」)。

2. 企業の業績を理解するために企業独自の段階損益の表示を導入する

企業が業績の説明を行う場合、純損益や包括利益財など財務諸表上の業績指標以外の指標を用いて説明することが多く、それらの指標の信頼性には疑問があるという指摘がなされています。企業の業績を理解するために重要な指標がなぜ財務諸表上にないのか、財務諸表の情報が不十分なのではないか、というのがここでの問題意識です。

これまでの審議からは、以下の方針がとられるのではないかと思います(審議ではまだ考え方の整理が進んでいない部分があり、全体的な方針について合意されているという「雰囲気」があるくらいの段階です。具体的な決定事項は今後紹介できると思います)。

  • 原則として、企業は年次報告書によって伝達される主要な業績指標を財務諸表において特定する
  • 財務諸表上特定できない主要な業績指標について、IFRSにP/Lに適合する場合は、P/L の小計として表示し、適合しない場合は、注記において別個の調整表を開示する

現行のIFRSでもっとも規定の考え方が利害関係者の要求と乖離していた部分のひとつが、このP/Lの表示だったのではないかと思います。今回の改訂は過去の考え方を大幅に刷新するものになるのではないでしょうか。


イージフ 野口由美子