2018年4月10日火曜日

IFRSのマクロヘッジ、新会計モデルの全体像

こんにちは。イージフの野口です。IFRSのマクロヘッジは長く後回しにされてきた分野です。ポートフォリオ単位(ポートフォリオ内の個々の金融商品は入れ替わることが前提となっているので、特に最近は「動的リスク管理」という言葉が使われています)でのリスク管理活動を対象とするので、特殊で複雑な問題として、他のプロジェクトが優先されてきたという経緯があります。

ようやく、2014年にディスカッション・ペーパーが公表され、そこでは、今までにない全く新しい会計モデルが提案されました。しかし、利害関係者から要求を十分に反映できていないという判断のもと、この提案は取り下げられ、白紙の状態から再検討が行われていました。再検討では長期にわたる教育セッションにより進められ、プロジェクトの目的から検討し直すという慎重なものでした。

最近のIASBの審議で、ようやく新しい会計モデルの考え方がまとまってきました。現在支持されている新アプローチは、簡単に言うと以下の2点がポイントとなります。

・金利リスクに対する動的リスク管理が対象
・キャッシュ・フロー・ヘッジが基礎

そもそも、マクロヘッジは、投資家から広範な範囲での企業のリスク管理活動についての情報提供が望まれ、一方、財務諸表作成者から会計上のミスマッチの解消を求める声が強く、意見の食い違いが大きい問題でした。利害関係者からの異なる意見が集約できなかったことが問題だったという認識から、新しい会計モデルでは会計上のミスマッチを解消することを優先し、さらに要望が多い金利リスクに絞った対応を行うことで実現可能な形に目的を再設定しました。

さらに、かつての審議では完全に新しいアプローチの開発を目指していましたが、今回改めて提案される予定の会計モデルは、キャッシュ・フロー・ヘッジという、すでにIFRSの一般的な個別ヘッジにある会計モデルを基礎とします。実際に金融機関で行われている金利リスク管理活動はキャッシュ・フローに着目して行われていることが多いという報告があり、実態に即していると考えられる上に、理解しやすいという利点が挙げられています。

新会計モデルでは動的リスク管理を対象とするため、個別ヘッジのキャッシュ・フロー・ヘッジとは異なる以下の用語を使いますが、それぞれIFRS9号に対応している概念です。

・資産プロファイル(IFRS9号のヘッジ対象に対応)
・目標プロファイル(IFRS9号のリスク管理方針に対応)
・動的リスク管理目的に使用されるデリバティブ(IFRS9号のヘッジ手段に対応)
・評価とリサイクリング(IFRS9号の有効性の評価に対応)

新会計モデルの会計処理は、キャッシュ・フロー・ヘッジに基づき、ヘッジの関係が有効であると評価されることを条件に、動的リスク管理目的に使用されるデリバティブから生じる損益をその他の包括利益として認識し、資産プロファイルから生じるキャッシュ・フローに基づく損益が認識するタイミングに合わせて純損益として再認識(リサイクル)する、という会計処理になると考えられています。

現在の審議では、資産プロファイルなど個別の領域について、マクロヘッジ特有の具体的な問題が取り上げられています。個別の問題については、現在のところ、1度の議論で内容が確定することが少ない印象があります。やはりマクロヘッジは難しいことを実感させる審議になっています。もう少し議論が進んでから、本ブログでもポイントをまとめて紹介していきたいと思います。


イージフ 野口