2018年5月7日月曜日

IFRSの開示原則、プロジェクト変更の意味

こんにちは。イージフの野口です。IFRSは、IAS (International Accounting Standards)という「会計」基準を冠した名称をあえて変更し、IFRS (International Financial Reporting Standards)、財務「報告」基準であることを明確にしてきたという経緯があります。

「報告」基準であるがゆえに、情報提供をいかに行うかという開示の問題にも重点を置いています。しかし、これまでは会計処理の部分の基準作りが優先され、開示への取り組みはあまりされていませんでした。金融商品や収益認識、リースといった主要な会計基準の設定が終わった今だからこそ、本来もっとも重視されるべき開示についての取り組みが始まったといえます。

では、開示に関する取り組みはどのように進められるのか。個別基準にある開示規定の見直しを行うのか、それとも開示に関する一般的な原則を設定するか。IASBの方針は開示に関する原則を設定することでした。原則主義というIFRSの性質上、それはあまり特別なことではなく、驚くことではなかったと思います。2017年3月には開示原則に関するDP(ディスカッション・ペーパー)も公表されました。

しかし、2018年3月にこの開示原則に関する方針を転換する決定がありました。

DPに対しては、プロジェクト自体、焦点が定まっておらず、どのように開示に関する問題に取り組むのかIASBの姿勢が明確でないという批判が寄せられました。IASBでは、そのフィードバックを重く受け止め、プロジェクトの方針を転換させた開示に関する原則を打ち立てるよりも、審議会が開示の基準を設定するときに参照するガイダンスを作成することが必要だという認識になりました。

また、ガイダンスを作成するだけでなく、1つもしくは2つの個別基準を対象に新しいガイダンスに基づくレビューを行い、必要に応じて当該基準の修正を行うことも合意されました。

この決定とともに、当初の計画からプロジェクトの範囲も見直され、以下の問題を扱うことで合意されました。プロジェクトの範囲は他のプロジェクトとの重複を避け、かなり絞られた印象です。

テクノロジーの影響
重要性
情報の記載場所
どの会計方針を開示すべきか

DPのフィードバックから、デジタルによる情報伝達等、テクノロジーが財務情報の伝達に与えている影響を検討すべきという指摘があり、新たな検討課題として追加されています。テクノロジーは、これまでIASBでほとんど扱われてこなかった領域ですので、今後どのような分析結果が報告されるのか興味深いところです。

また、重要性も検討課題として追加されることになりました。しかし、検討の着手は遅くなりそうです。

重要性はすでに他のプロジェクトでも取り上げられていて、「開示に関する取り組み:「重要性がある」の定義」(IAS1号およびIAS8号の修正)プロジェクトの進捗、すでに公表済みの実務記述書2号「重要性の判断行使」及び「財務諸表におけるコミュニケーションの改善: 開示の意味を高める」の実務上の影響に関しての情報収集を行ったうえで、検討されることとなっています。

開示原則について、当初のプロジェクトから方針転換されることになりましたが、個別基準書の開示規定の改訂まで関与することが明らかにされ、より実効性のある(財務諸表作成者にも影響がある、ということでもあります)プロジェクトとして進められていくことになると思います。


イージフ  野口